secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

イーグル・アイ

2008-11-21 23:37:45 | 映画(あ)
評価点:72点/2008年/アメリカ

監督:D・J・カルーソー

もっていきかたが違うだろっ!

双子の弟ジョン(シャイア・ラブーフ)は兄が死んだことを知らされる。
悲嘆に暮れるジョンの元に数多くの荷物が届く。
その荷物は、なんと最新の軍事機器や兵器だった。
驚くジョンのケータイ電話に女の声で「FBIが来るので逃げなさい」と告げられる。
訳もわからないまま捕まってしまったジョンはテロリストとして取り調べを受けることとなる。
だまされたと訴えるジョンに対してFBIは、執拗に問いただすが、身に覚えがない。
しばらくしてまた電話が鳴り、「伏せろ」といわれる。
言われるがままに逃げていくと、同じように女に脅され、息子を人質に取られた女性が車で待っていた。

スピルバーグ総指揮のサスペンスアクションだ。
予告編が秀逸なので、注目作になっている。
この秋では大本命の一本ではないだろうか。

予告編が鮮烈すぎて、中身が隠されている印象がある。
秘蔵っ子のシャイア・ラブーフの影響もあって、期待は高まるばかりだ。
お手軽に楽しめるという意味では、安定感のある作品である。
「レッドクリフ」に対して敷居が高そうだと思っている人にはこちらをお勧めしたい。
ただし、過剰な期待は禁物だ。
及第点を狙った作品だと言うことをお忘れなく。

▼以下はネタバレあり▼

パノプティコンという言葉をご存じだろうか。
ミシェル・フーコーという哲学者が唱えたことばだ。
フーコーといっても振り子の法則のほうではない。
ポスト構造主義のフーコーである。
彼によれば、パノプティコンとは一望監視装置と呼ばれる囚人を管理監視するシステムである。
囚人からは監視されているかどうかを確認できないが、看守からは囚人の様子が丸見え、という監獄だそうだ。
つまり、看守はいつ見ているかわからないので、囚人としては常に監視されているものとして行動しないといけない。
よって自制する意識が囚人側に芽生える、という監視システムのことだ。

現代はデジタル機器によってこのパノプティコンが成立した世界だという。
つまり、ICOCAやケータイ電話、GPSなど、あらゆるデジタル機器によって人々をデジタルの目線で監視することが可能になった。
便利で相手がどこにいるかわかるというのは塾に通う子供たちを持つ母親には便利だが、僕みたいに自由を楽しみたいと思っている人にはちょっとうざったい。
昔「エネミー・オブ・アメリカ」という作品でこの監視システムが実用化段階にあるという事実が暴露されたことは記憶に新しいはずだ。
あるいは「ダイ・ハード4.0」では、デジタル機器を使ったサイバーテロがテーマの話だった。

この映画はそういった情報化社会に対する警句を発する映画といえそうだ。

この映画の肝は、実はオチが明かされるまでにこそある。
オチが明かされてからは、一気に結末まで見えてしまい、色あせてしまう。
誰がその監視システムを悪用して主人公たちを陥れようとしているのか。
その真犯人が明かされるまでの展開はすばらしい。
さすがスピルバーグである。
「ドリームワークス」のロゴを見ると安心するのも頷ける。

だが、オチがいただけない。
結局、人間があまりに愚かだと言うことでAI(アリア)が政府を抹殺する「ギロチン作戦」なるものを発動させる。
それに気づいた兄のイーサン(シャイア・ラブーフ)はトラック事故を装って殺されてしまったのだ。
発動するにはイーサンの認証が必要だったため、双子のジョンを巧みに引き寄せて認証させようとしたのだった。
つまり、映画が警句を発しているのは、「AIに任せるのはよくないよ」というものだったのだ。

まずがっかりなのは、そのオチがあまりにありきたりであるという点だ。
ありきたりがだめだとは言わないまでも、もう少しひねったオチがほしかった。
な~んだまた機械の頭脳かよ、と思ってしまう。
できれば、矛盾を突くようなものであってほしかった。
たとえばその集積された情報を誰がどのように管理するのかわからなくなってしまって、誰が真犯人かもわからずに計画が進められていたというような「CUBE」のようなオチであれば、怖かった。
怖さがまずわかりにくいのだ。
そして、リアリティがない。
さすがにAIがこのような情報処理をして、自律性を持ち、意志まで持っているとは考えにくい。
監視システムのくだりが非常に説得力があるだけに、とても残念な印象を受ける。

もう一つ、これだと本当の意味での警句になっていないからだ。
この映画の主題、つまり本当のメッセージはどこにあるのだろうか。
パノプティコン、監視システムにあるのか、AIにあるのか、という点だ。
おそらく冒頭の引き込み方から言って、監視システムにその疑問とする点があったのだと思う。
それなのに、すべてAIが悪かったというような責任転嫁のような展開に受けてとれてしまうのだ。
これだとAIというリアリティのないものへの警句となり、結局僕たちが身に迫って怖いと思えなくなってしまう。

僕はこのオチがいやな理由、それはすべてAIが仕組んでいたという脱力感だ。
人間が考えたのではなく(シナリオライターは人間だけど)、AIがすべて仕組んで踊らされていたというオチは、どう考えても許せない。
なんや人間がおまえの下かい! と思ってしまう。
その人間がAIの野望を打ち砕くのだが、それにしても、ちょっともって行き方を間違えただろうという印象はぬぐえない。
先に出した「エネミーオブアメリカ」のほうが遙かに怖かったのはそのためだ。
軍までもが「訓練だと思っていた」というオチは、情報をもてあそぶには十分な怖さがある。

とはいえ、及第点の映画ではある。
スピルバーグであることが過剰な期待を生み出してしまうのは、仕方がないことなのかもしれない。
シャイアはそれにしても、おいしい映画に出るよね。
存在感がありすぎです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ファイナル・デッドコースタ... | トップ | ドリーム・キャッチャー(V) »

コメントを投稿

映画(あ)」カテゴリの最新記事