secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

トランスフォーマー

2009-10-18 18:06:18 | 映画(た)
評価点:73点/2007年/アメリカ

監督:マイケル・ベイ

監督「有名な役者がいない? だって主演はコンボイなんだもん」

アメリカの軍のネットワークが何者かに侵入を許した。
しかし、アメリカ軍はその方法も、相手も特定できなかった。
緊急に対策チームが組まれ、敵を特定しようと動き出した。
一方、青春を謳歌しまくりのサムは成績と引き換えにおんぼろの車を手に入れた。
しかし、深夜いきなり車が動き出し、車が変形する様子を見てしまう。
機械は「エイリアンが侵入し地球が危険だ」と話す。
対策チームの一人がこの侵入はコンピューターウイルス型の生命体ではないかと仮説を立てる。

「トランスフォーマー」といえば、僕は垢がつくほど遊んだおもちゃである。
原作はアニメだか、漫画だが思い出せない。
ただ、「トランスフォーマー!」といいながら、車をロボットにして遊んだのを覚えている。
コンボイは僕たちのヒーローだったし、白いコンボイを友達が持っていると聞いて、
嫉妬を感じだものだ。(これ以上書くと僕の年齢がばれてしまうが。)
とにかく、トランスフォーマーが映画のタイトルになっていると知ったとき、「くそ! アメリカめ、日本の伝統的な(?)ヒーローをぱくったな!」と憤ったものだ。
そのあと、日本のアニメをアメリカでハリウッドリメイクしたと、知ったのだけれど。

いずれにしても、僕より上の世代は、きっとタイトルを聞いただけで手に汗握ったはずだ。
それがどのように映画化されたのか。
それはあなた自身が実際に目にするしかない。
この作品は絶対に映画館で見るべきだ。
しかも、スクリーンの近くで見ると後悔する。
できれば後ろ目の席を選択すべきだろう。
 
▼以下はネタバレあり▼

原作との比較は無意味だろう。
アメリカ人向けにリメイクされており、現代風にアレンジされている。
これは時代が隔たっているということと、日本とアメリカという条件の違いも大きい。
というか、そもそも、原作の和製アニメを僕はほとんど覚えていないので比較しようにも比較できない。

この映画を映画として支えているのは、「CG」という一点に尽きる。
この映画が面白いのは、CG技術がひとつの見せ場として成立するほど、発達したからに他ならない。
マトリックス」シリーズ以降、技術革新は目覚しいものがあるが、「マトリックス」で可能だったことを、さらに映画として、見せ場として人間のイマジネーションによって進化させた感じだ。
この映画が映画館で見るべきなのは、この一点に尽きる。
大画面で大音量で見るべき映画なのだ。
これには、老若男女関係なく楽しめる要素といえるだろう。

シリーズ最高傑作といわれたハリー・ポッターや、根強い人気のポケモン、「西遊記」などと肩を並べる作品として、配給しているのは、CG力に自信があるからに違いない。

そして、何より、見せ場以外のシーンもかっこよく撮られている。
「変形」という設定には夢があるし、車が意思を持って動き出すというのは、大人でも子供でも、心を動かされる。
愛用している車やマシーンが自分のパートナーとして力になってくれるのは、物に対して強い愛着がある日本人ならではなのかもしれない。
日本人の発想力がようやく技術に追いついてきたのか、とちょっと感慨深い気持ちにさえなった。

夢があるCGという意味でも、この映画の価値は相当高いだろう。
マトリックス」のような映画と一線を画しているのは、そのためだ。

家族で、カップルで、誰にでも楽しめるようにしてあるところも心憎い。
わかりやすいギャグやスパイス程度のシモネタ、けっこう濃いキャラクターの家族たち。
失笑程度の笑いしかとれないけれど、その笑いがあるために、「ID4」のようにあまり悲壮にならずに済んでいる。
全体的に軽いノリだから、ヒーローものとして、気軽に楽しめる。
夏休みにうってつけの映画となったわけだ。

だが、手放しで喜べるほどの傑作でないところも、また「気軽さ」を強調する。
壮大なわりには、敵の設定がいまいちよくわからないし、軍へのハッキングにしても、「ダイハード4.0」よりもあいまいだ。
極めつけは「セクター7」という秘密組織。
これに関してはなかったほうがよかった。
無駄にややこしくなったし、「座標のめがね」がまったく意味を成さなくなってしまった。
(だってアメリカ人が持って帰っているなら、北極のどこにあるかなんて完全にどうでもよく、必死に探し回っていること自体が無意味になる)

また、セクター7と軍との妙にリアルな仲違いも、話がすっきりいかなくなっている原因になっている。
もっと勧善懲悪をシンプルに描くか、敵に取り込まれる人間、というような設定にしたほうが、楽しめただろう。
ちょうど、「エイリアン」を持ち帰ろうとする奴や、ピッコロをよみがえらそうとするピラフのように。
そうでないと、敵を倒すときのカタルシスと、セクター7との仲直りのカタルシスとが一気に起こらないために、どうしてもちぐはぐな印象を受けてしまう。
セクター7は「機械嫌い」「機械を道具としてしか扱わない人」代表を担っていることは言うまでもないのだが。

キャラクターも描ききれていないところが惜しい。
特に味方のトランスフォーマーたちが色分けがあまい。
また、死の設定があいまいで、どうなったら死ぬのか、説明してほしかった。
そもそも、彼らが登場するまでの前置きが長ったらしく、真相がわかってからが短いので、映画全体の緊迫感が希薄になっている。
いうなれば、前半が「SFパニック」で後半が「ヒーロー物」になっている。
もうすこし両者を連動できれば、もっと面白かったのに、という印象だ。

そのために、最後の見せ場がどうしても熱がこもりにくい。
CGがすごすぎて、何がなにやらわからないということもあって、キャラクターに感情移入しにくいために、一緒に戦っている感が薄い。
やはりどうすれば勝てるのか、とか、どこに弱点があるのか、など、もっと印象的に伏線を張っておくべきだった。
あるいは、感情的になれるように、味方が死んだときにもっと怒りを表すとか。

そもそもキューブを敵に差し込んだらなぜ死んだのだろうか。
僕はより強力になってしまうのではないかと、ちょっとあせった。
(実はそのクライマックスのときに、なんやようわからんかったので、眠気がマックス状態だったので話がちゃんと理解できていなかったのだが。
感情移入できなかったという評価はそのためでもある。)

いずれにしても、手軽に楽しめる映画としては最高峰だろう。
そういえば、今年の夏はどれも手軽に楽しめる映画のような気がする。
う~ん、だからなんとなく不作な感じがするのかな。

時代が経っているからかもしれない。
むやみに「ハリウッド化」された怒りよりも、うれしい気持ちの方が強かった。
ハリウッド化するなら、時間がたった作品のほうが、批判は少ないかもしれない。
「起動戦士ガンダム」はきっといつまで経っても映画化できないだろうけれど。

(2007/8/9執筆)

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