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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

エアベンダー

2010-07-21 20:27:12 | 映画(あ)
評価点:55点/2010年/アメリカ

監督:M・ナイト・シャマラン

原案:テレビアニメ「アバター 伝説の少年アン」

おもしろさを評価するにはまだ早い。

火の国は、調和を保つはずのアバターが不在になった100年前から、他の三つの国を侵略しようとしていた。
水の国のサカ(ジャクソン・ラスボーン)とカタラ(ニコラ・ペルツ)はある日氷の中に何かいることに気づく。
氷をたたき割った2人は中から滅んだはずのエアベンダーの少年アン(ノア・リンガー)を発見する。
少年は100年前に自分の運命から逃げ出したことを告白する。
火の国の王子ズーコ(デヴ・パテル)は、彼を捉えるまで祖国に帰ることが出来ない身のため、エアベンダーのアンを執拗に追いかける。

シャマランほど僕が追いかけている監督はいない。
シックス・センス」以来、印象の強い映画を撮り続けている。
その彼の最新作がなんと「ファンタジー大作」。
どこまで冗談なのか、もはや笑うしかないほど方向性がわからなくなってきたシャマランだが、見ないわけにはいかない。

予告編を見れば見るほどチープな印象が先行してしまう本作。
果たしてシャマランらしさを垣間見ることは出来るのだろうか。
不本意にも、ちょっと疲れ気味の週末に鑑賞することになった。

▼以下はネタバレあり▼

シャマランは衝撃的なオチ、という印象が未だに拭い切れていないのは大きな誤解だ。
どちらかというと彼は実験的な、挑戦的な映画を撮り続けている。
時には実験的すぎて「レディ・イン・ザ・ウォーター」のような作品を生み出したりもする。
また、「ハプニング」では人間が自殺するという恐怖を映像化して成功した。
興行的にはどうしても初期の作品を越えることが出来ないが、彼は間違いなく自分の方向性を知りながら映画を撮っている。
だからこそ目が離せない監督なのである。

問題はファンタジーを撮ったことにあるのではない。
そこにいかにシャマランらしさを見せるかどうかである。

世界観の特徴はシャマランらしさに満ちている。
おそらく多くの西洋人ならこのような世界観は構築できなかっただろう。
一つは絶対的な存在がいないということだ。
絶対的な存在であるはずのアバターとよばれる者は常に生まれ変わる。
よって恒常的な存在でありながら、常に流動的な存在でもある。
だから殺しても殺しても意味がない。
輪廻転生はヒンドゥー教だが、一神教的な絶対者とはやはり画している。

また、四つの国それぞれは関係性を持ちながら、上下関係はない。
そこで生きる人々の服装や建物は東洋の国々を彷彿とさせる。
アバターであるアンの動きも、やはり東洋の武術である。
軸にある世界観が東洋的なものなので、これまで語り継がれてきたファンタジーとは色合いがだいぶ違う。
「指輪物語」にしても「果てしない物語」にしても、勧善懲悪的な白黒はっきりした対立はみられない。

特に人物造形にそれが見える。
火の国が謀反を起こすため、悪を担っているようにみえるが、その王の息子は父親に反発し、アバターを助ける。
徹底した父親の息子への恨みは、どちらかというと中国の親子関係のような情けのなさだ。
同じように主人公のアンの設定もおもしろい。
彼は自分の運命から逃げ出したくなり、100年間逃げてしまう。
彼に師匠は「自分の思うように生きろ」と伝えるが、奇しくも、ラストでアバターとしての生き方を見いだす。
彼は逃げることで自分の意志に従い、守りたいと心底思うことで、アバターへと覚醒する。
アバターになりたくないという意志が、逆に犠牲を生み、彼を自分自身への運命へ立ち向かわせる。
逆説的な物語のありようは、決まり切った型をもつファンタジーには珍しい。

圧倒的な映像も、またそこに華を添えている。
これまでSFXに頼る映画は撮ってこなかったシャマランとしては、上出来と言えるだろう。
残念ながら、僕は眠気に勝てずに所々寝てしまったのだが。

それはさておき、この映画だけでこの作品を評価するのは早計だ。
第一章とあるように、今後二作目三作目と続くであろうこの本当の魅力はまだ見えてこない。
特に、世界観はまだまだ甘い。
断片的にしか広がりを見せない街や国々は、地理的な関係性が不明確だ。
よって各国の連続性が見いだせず、彼らの旅は、唐突な印象を受ける。

ここまで書いてきてなんだが、正直、これならシャマランでなくても十分に可能だったのではないかと思わせる程度にしか感じられない。
今後、土、火、それぞれの国の技を磨くことによって、アバターとしての力を発揮していくのだろう。
もし、この程度の完成度でシリーズ化されたとなると、シャマランは単なるヒットメーカーになってしまう。
一作目と二作目、どうつながりをつけて広げていくのか、楽しみではある。


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