secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

インディー・ジョーンズと運命のダイヤル

2023-07-06 17:28:55 | 映画(あ)
評価点:53点/2023年/アメリカ/152分

監督:ジェームズ・マンゴールド

冗長すぎる上映時間。失われた冒険心。

第二次世界大戦中、ナチスが各地の財宝や遺跡を集めて、ベルリンに送っていた。
そんな中、インディ(ハリソン・フォード)と、バス(バジル。トビー・ジョーンズ)は、キリストを殺したというロンギヌスの槍を取り返そうと、ナチスの列車に忍び込んだ。
しかし、そこにあったのは偽物で、アルキメデスが作り出したというアンティキティラという道具を見つける。
世界の法則を見いだしたとされる遺跡で、ナチスの教授も狙っていた。
命からがらそのアンティキティラを手に入れたがそれは半分しかなかった。
時は流れて、1969年宇宙飛行士がはじめて月面着陸に成功したと、アメリカでは話題になっていた。
そのパレードの日、ハンター校を退職することになったインディに、謎の女性ヘレナ(フィービー・ウォラー=ブリッジ)が近づいてくる。
彼女はバジルの娘であると名乗り、アンティキティラを探していると告げる。
倉庫から取り出したインディは、謎の男達に襲われて、アンティキティラも奪われてしまう。

ハリソン・フォード主演の人気作品。
いうまでもなく、トレジャーハンターという映画のジャンルを確立した記念碑的なシリーズだ。
こどものころよくテレビで見ていたが、私はほとんど覚えておらず、何度も見直したというファンとはちょっと違う鑑賞態度になっただろう。
あまり見るつもりもなかったが、評判が高いと知ったので時間を作って見に行くことにした。

ちなみに前作は、「クリスタル・スカルの王国」2008年公開。

▼以下はネタバレあり▼

正直ほとんど忘れていて、どれがどれだか覚えていないので、あまり大きなコトが言えない。
けれども、今更全部を見直すとか時間的にもお金的にも厳しいので、時間があれば批評にしよう。
過去のオマージュがたくさんある、という話だが、それもすっとばして、とにかくこの作品単体での鑑賞という体で話をしたい。

とはいえ、冒険心が駆り立てられるかどうかが、この作品の最も重要なエッセンスであるということは共有されて良いだろう。
「ダビンチ・コード」や「ナショナル・トレジャー」などの名作も、この作品がなければあり得なかったわけで。
問題はその冒険心が、この映画ではまったく駆り立てられない、ということだ。

その根本的な理由の一つは、これだけ時間が経ったのに、キャラクター設定がとことん甘いということだ。
往年の熱心なファンは、おそらくインディの無尽蔵な好奇心を期待して映画館に向かう。
しかし、息子をベトナム戦争でなくし、妻とも離婚調停中のインディに、好奇心のかけらも残されていない。
ただ老兵は去るのみ、と言わんばかりの老衰振りだ。

そこに訪れる相棒のバズの娘も、正直、全く素性が分からない。
破天荒なのか研究熱心なのか、守銭奴なのか。
私は途中まで彼女が詐欺師で、バズとは全く関係のない悪役かもしれないと疑ったほどだ。
だからただただインディが巻き込まれた事故の被害者のような、受動的な印象しか受けられない。

バズというキャラクターも、本作で急に出てきた人物で、過去の作品との関連はほぼない。
途中で手伝ってくれるエジプシャンも、ダイバーも、ほとんどキャラクター性がない。
少年とヘレナとの関係も曖昧だ。
なぜ最後まで付いてきたのか、上映時間が長いわりにほとんど印象に残らない。

もちろん、適役も結局ナチスだ、という点は予定調和だったとしても、ナチスというラベル以外にキャラクター性が薄い。
どろどろとした悪意がないのだ。
(ただ無機質に「スポンサー」を殺すだけだ)

結果として、すごく古い映画を見せられているような印象だ。
誰かの歌詞にあるように、「古いアルバムめくり」懐かしむようなノスタルジックさしかのこらない。
アクションの見せ方も、もっといじらしい、コメディとして見せる方法はいくらでもあったのに、馬と列車のチェイスくらいで、あとは見せ場になっていない。
往年のアクション映画のコミカルさがまるでない。
もちろんそこそこ見せ場にはなっている。
けれど、これが「インディ・ジョーンズ」か、と言われればほぼ記憶に残らない作品だろう。

見終わって感じたことは強い既視感だ。
それは「ターミネーター:ニューフェイト」のときのそれだと気づいた。
ただ老人ホームの雑談のような古さ。

唯一おもしろかったのは、ダイヤルがアルキメデスの時代につながっていた、という点だ。
応援を呼ぶためにデザインされていたというのはおもしろい。
そして、インディがここに残りたい、私にはそれしかない、と言った、そのことだけが彼の人間性がにじみ出ているシーンだった。
それだけだ。

あっという間に現実に戻ってくるのもなんだか、だし。
そこになぜか離婚を決意していた妻マリオンが現れるのも無理がある。
とにかく薄っぺらく、安すぎる。
カタルシスのかけらもない。
その割に、上映時間がやたら長い。

もちろん、お手軽な映画ではある。
でも、それだけ、という感じ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« セインツ ~約束の果て~ | トップ | RUN/ラン(V) »

コメントを投稿

映画(あ)」カテゴリの最新記事