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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

貴志祐介「新世界より」

2010-08-04 23:16:03 | 読書のススメ
ようやく読み終わった。
貴志祐介「新世界より」である。

他のサイトなどで紹介されて、しかも絶賛されていたので、少し気になって読むことにした。
SF大賞を受賞していることもあり、衝動買いに近いかたちで買ってしまった。

気になる人は他のサイトであらすじなどをチェックしてください。
もはや今の僕にその余力はありません。

▼以下はネタバレあり▼

ノベルズサイズで900ページを超える長編小説。
だが、僕は全くおもしろさを感じることができなかった。
一つは語りが甘すぎる点にある。
細かい設定が近未来の世界観を補強するにもかかわらず、語り手の言説がいちいち超越的だ。
「このときまだわたしは気づいていなかった」
「特筆すべきは…」
「驚くべき事に…」
「そのことについては後に触れることになる」
などという「もうこの出来事は終わりましたよ」という印象を強くする言説が随所にみられる。
そのため、イマココで起こっている物語としてではなく、すでに過ぎ去ってしまったことを超越的に語るという印象しか受けない。
長い話なので、なんとか読者を引っ張りたかったのかもしれないが、読んでいる方としてはうざったい。

また、余計な描写や説明が多すぎて、世界観を詳細に語ると言うよりは、むしろ冗長な話になっている。
内容だけでいえば、半分くらいにできたのではないか。
原稿料を稼ぎたいのはわかるが、作家の態度としてはマニアックな読者のみ狙っているようで、いただけない。

そして何より、これはSFではない。
呪力なる超能力がつかえるようになったファンタジーにすぎない。
途中で挿入されるBL的な要素も、無駄に露骨なセクシャルな描写も、残酷描写も、SFのそれではない。
途中でハリー・ポッターかなと錯覚してしまうほどだ。

この程度の本が、ちまたで話題になっているとすると、もう僕は文学と呼ばれる埃のかぶった本しか読めないのかもしれない。

太宰でも読もうかな。

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4 コメント

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Unknown (wadan)
2010-08-05 20:30:29
貴志さんとしては、壮大な世界観を造り上げたために、読者に気を使いすぎてくどい説明になったんでしょう。

早季の内面に世界を投影しようと掘り下げるだけ掘り下げて、回収しきれなくなったんだろうなと残念です。

貴志さんは、伏線を散りばめながら、ラストで全てを回収しきる文筆が特徴的な作家だったはずですが…


口直しにでも、桜庭一樹「私の男」「ファミリーポートレート」は読んで頂きたいです。

直木賞授賞理由がわかるかと思います
返信する
返信遅くなりました。 (menfith)
2010-08-08 10:42:11
管理人のmenfithです。
少々夏ばて気味でだらだらと過ごしています。
う~ん、やることは多いはずなのですが、ちょっと手につかない状態です。
そろそろランニングも本格的に再開しないとなぁ…。

>wadanさん
書き込みありがとうございます。

貴志祐介ははじめてだったので、ショックです。
かといって今更「青い炎」を読む気にはなれないですし。

桜庭一樹まで手を出せるかわかりませんが、どりあえず「ドラッカー」を読み終わりたいと思います。

まあ、気長にぼちぼちと。
返信する
見た感じ (ズッキーニ)
2010-08-14 15:19:22
新世界よりの装丁は
すごくすきです。
内容はさておき
貴志祐介さんの新作でましたね。
なんだか読みたくなる
見目でした~。
返信する
映画化するかもしれません (menfith)
2010-08-15 17:34:42
管理人のmenfithです。
「インセプション」見てきました。
できればもう一度見にいくつもりです。
「トイ・ストーリー3」も見たいので、う~ん、迷うところです。

>ズッキーニさん
確かに装丁はいいですね。
作品の雰囲気もよく表している気がします。

「新世界より」はうまくすれば映画化しておもしろくなるかもしれません。
ちょいちょいエロティックなシーンがあるので、それをうまくはしょりながらすれば、スリリングなファンタジーが撮れるのでは? と思っています。
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