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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

千葉雅也「デッドライン」

2023-11-22 18:28:07 | 読書のススメ
研究者で、小説家という千葉雅也のデビュー作「デッドライン」を読んだ。
多分に彼の過去を反映していると思われる私小説風の作品。
大学院時代に、フランス思想を研究する中、修士論文の締め切り(=デッドライン)に追われる学生を描いている。
と同時に、同性愛を自認した語り手が、周りにカムアウトしながら、自分の性欲を満たしていくという日々も描かれている。


読んだ後しばらく考えていたが、ネタバレするほどの深い読解・考察ができなかった。
しかし、この後の記述は若干ネタバレが含まれているかもしれない。
未読の場合は、注意してほしい。
(抽象的な記述に留めているが)

▼以下はネタバレあり(かもしれない)▼

自己をマイノリティであることを自認しながら、自分に課された修士論文の締切と戦う。
どうしても書けない。
書くことと、自分を掘り起こしていく=その輪郭を明確にしていくことの間に、どうしても線を引けない。

彼が「現代思想入門」でも語っていたように、どこまでも自分のあり方とフランス現代思想たちの思索とが重なり、思想をそのまま自分の性(あるいは生)として捉える。
それを実践したよう作品である。

その意味で、テイストはサルトルの「嘔吐」のような位置づけなのかもしれない。

文章を読んで理解する、それは頭で分かっている部分と、身体となって動き出すというレベルにおいて理解する、ということは決定的に違う。
語り手はその身体となって動き出すレベルで理解しようとあがいている。
私はそれを小説を読んだという意味では理解しているつもりでも、しかし身体としては理解できていないので、こうして書くことも難しい。

これがまさに、自分がデッドライン(境界線)になる、というラストへつながっていくということなのだろう。

いちおう三部作になっているので、他の私の「課題図書(=積ん読)」にめどが付いたら、手を出してみたい。

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