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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

クワイエット・プレイス

2018-10-31 18:43:04 | 映画(か)
評価点:58点/2018年/アメリカ/90分

監督:ジョン・クラシンスキー

物語の設定がほんとうに残念。

地球上に何者かが襲いかかり、街は壊滅状態になっていた。
そのクリーチャー(生命体)は、音に反応するらしい。
音を立てたものをことごとくおそってくる。
エヴリン(ジョン・クラシンスキー)一家は音を立てずにひっそりと暮らしていたが、妻リー(エミリー・ブラント)は妊娠しており、予定日が近づいていた……。

ドント・ブリーズ」上映前のトレーラーかどこかで流れていた。
気になっていたので、時間もちょうど都合が良かったので、あまり期待せずに映画館に行った。
前評判や予備知識はやはりない。
地球外生命体による近未来、という設定は先に明かしておいてほしかった気がする。
トレーラーの時点では、ホラー映画を予期していたが、どちらかというとSFだった。

妻役は、マーラ・ルーニーに似ている、エミリー・ブラント。
劇中「どこかで見たことがあるはずなのに」と思っていたら「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のヒロインだった。
それはともかく、お手頃なSFホラーという感じだ。
私にはもう一つ、工夫と必然性が足りないように感じた。

▼以下はネタバレあり▼

申し訳ないが、アイディアとシナリオ、設定がマッチしていないように感じた。
音を出してはいけない、という恐怖を生かし切れていない。
料理の仕方次第では、「28日後…」のようなスリリングな展開と社会性までも描けたはずなのに、不自然さのほうが際立ってしまった。

89日目、すでに荒廃した街が映画の冒頭だ。
そこで幼い4歳の弟が、おもちゃのシャトルを鳴らして殺されてしまう。
それから約1年後、家族はひっそりと暮らしているが、弟を殺してしまったという疵が家族を悩ませている。
そこまでは話としては面白かったのに、なんと妻が妊娠している。
要するに、弟が死んだ後、子どもを妊娠したわけだ。

その必然性に頭をかしげてしまう。
すでに3人も育てたのなら、新生児が生まれるリスクは、十分に理解しているはずだ。
わざわざ棺桶のような箱を用意しなくても、子作りしなければすむ話だ。
生まれたときの描写もいただけない。
花火で音を誤魔化して、産声を聞こえなくさせるということなのだが、あり得ない。
新生児の抱き方も不自然きわまりないし、産後の妻の活躍ぶりも不自然だ。
家族に焦点を当てて描きたいのなら、子育て経験のある人にも「あるある、大変ですよね」という「子育て分かってるよ」という描写を入れておくべきだった。

なぜなら、子育てを経験したことがある人たちに「共感」を得たいから、家族をテーマにしてこの物語を着想したはずだから。
そうでないなら、若い男女にすれば良いし、家族というコミュニティにしなくてもよい。
そのあたりの雑さが目立って、物語に必然性を感じさせない。

むしろ、妊娠中にこのクリーチャーの襲撃があり、数ヶ月後に出産しなければならない、というような様子のほうが自然だった。
弟が死ぬ場面をもっと早いタイミングにして、教訓として描いておけば、すんなりいったのではないか。
わざわざ1年も時間を経過させてしまったのが解せない。
そもそも、彼らだけが生き残れたのも、あまりに説明不足だ。
クリーチャー襲来からの、この家族だけ閉鎖的な空間になってしまった、その設定をしっかり描いておけば、物語への移入もしやすかったかもしれない。

さらに言えば、隣人?の老夫婦のシークエンスも余計だ。
1年以上、この状況になっているにもかかわらず、あの老夫婦と初めて顔を合わせたような驚きは、きわめて不自然だ。
砂をまいて道を作っているくらい、あの道には慣れているはずだ。
細かい設定がかなり雑だ。

そもそも、音をどれくらい鳴らせば襲われて、どのくらいの音ならOKなのか分からない。
ひそひそ話くらいなら大丈夫そうな印象だが、家族は基本的に口話と手話で会話している。
その境界線を見せておく伏線は必ず必要だった気がする。
また、クリーチャーの弱点についても、非常にお粗末だ。
1年以上、その弱点に気づかなかったとは考えにくい。
私はこれがエイリアンの襲来であったことを知った段階で、「弱点は音です」と思っていた。
(ジョジョが好きなら、こういうノリになるよね?)

それをアメリカ軍や他の科学者が気づかないわけがない。
そういう点でも、この1年後という設定に必然性を感じられないわけだ。
これが数ヶ月後くらいなら、逃げながら、対策を考え、そして素人の農夫が弱点を見いだした、というのも頷ける。
(実際、「宇宙戦争」や「ワールド・ウォー・Z」などはそういう感じでしたね)

アイデアは面白いが、それをしっかりと作品に落とし込むことができなかった、そういう印象だ。



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2 コメント

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Unknown (ヒカル)
2018-11-23 22:18:16
最近のハリウッド映画はやたら中国人が登場したり、中国要素を強引に入れてきますが、メンフィスさんはどう思われます?
返信する
コメントありがとうございます。 (menfith)
2018-11-24 15:04:44
管理人のmenfithです。
仕事が落ち着いたと思ったら、もう年末です。

>ヒカルさん
書き込みありがとうございます。

映画は経済活動ですので、資本に左右されることは仕方がないかなと思っています。
ですので、中国人や中国が映画に関わることの是非はあまり気にしていません。

むしろ今までがあまりにも白人至上主義で、そのバランスをとるために黒人を出していたところがあります。
今後は群像劇ならアジア系や、LGBTを出さないといけなくなるとか、そういう別の制限もかかっていく可能性もあります。

おもしろい映画を作るのに、何が必然か。
そのことを、映画の商業性とともに折り合いをつけていかなければならないのは、映画という表現媒体の宿命だと思います。

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