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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

エイリアンVSプレデター(V)

2009-05-02 21:28:03 | 映画(あ)
評価点:57点/2004年/アメリカ

監督・脚本:ポール・W.S.アンダーソン

映画を横断する「祭り」

2004年アメリカ。
南極を監視し続けていた研究者たちは、突然熱源が発生したことを知った。
そこでその場所を衛生で探らせたところ、地下に巨大なピラミッドがあることを突き止めた。
しかもインカ、アステカ、エジプトという古代の文明の特徴を兼ね備えた建物であるらしい。
それを知ったウェイランド(ランス・ヘンリクセン、「エイリアン2」ビショップ役)は、その道のエキスパートを世界中から集め、緊急に探索チームを結成させ、探索に向かうことにした。
金で買える最高の設備と人員で挑んだ探索だったが、そこはエイリアンが住む、未知の世界だった。
やがて、そこに三人のプレデターも現れ、三つどもえの闘いに発展する。

昔、ゲームでエイリアンを倒すプレデターのゲームがあったことを記憶している。
「エイリアン」対「プレデター」。
いかにもアメリカ人が好きそうなシチュエーションである。
発想は「ゴジラ対モスラ」並に乏しいが、これがなんと全米で人気を博したそうだ。
あまり観る気はなかったのだが、短い映画で気軽に楽しめそうもので、目についたものがこれだったので、とりあえず見ることにした。

観てみたいと惹かれた人は、これを観る前に「エイリアン2」と「プレデター2」までは観ることをおすすめする。
いろいろと小ネタが仕込まれた本作を楽しむための、予備知識として役に立つはずだ。
まあ、そこまで予備知識をあえて学ぶほどの価値がある映画とも言えないが。
 
▼以下はネタバレあり▼

設定に無理がある。
というのは、イケナイつっこみだ。
なぜなら、全く違う世界観を持った両者が、一つの映画で一つの物語を形成しようと言うのは、常識的に考えても相当辛い。
だが、突拍子もないこの映画の成功の鍵を握るのは、どうしてもその点にある。

「エイリアン」は近未来を舞台にした映画だった。
リプリー(シガニー・ウィーバー)という女性がある惑星にたどり着き、探索しようとしたら、ひとりの船員がエイリアンに寄生されてしまう、というストーリー。
「エイリアン」についてはまたの機会に書くとして、エイリアンの設定に少しだけ触れておこう。
エイリアンは、蜂の習性に似ている。
交尾で繁殖するのではなく、人や他の生物に寄生し、成長してからその腹から飛び出し、増えていく。
卵は女王エイリアンから生まれ、卵から孵るとすぐに、他の生物に寄生する。
だから、女王を倒さなければ問題は解決しない。
また、寄生されるものの特徴を備えた「戦士」が産まれるから厄介である。
身体的特徴として、強い酸性の血を持っている。
攻撃して相手を倒しても、その強力な酸性の血で返り討ちにあう場合もある。
見た目は「ドラゴンボール」のフリーザの第二形態に似ている。

一方、プレデターの特徴は、多彩な武器と、透明になることができるステルススーツである。
爪、槍、ミサイル(赤い三点が目印)、手裏剣(っぽいやつ)、そして強力な爆弾などが主な武器だ。
また、ステルススーツは、目をこらせば何とか見えるようだが、一瞬や動かなければ全く見えない。
視界は、サーモグラフィのように相手の温度を見分けるタイプ。
「2」ではそれが発達したのか、人間のライトにも対応していた。
人を殺すことによろこびを覚えているのか、殺すと吊して皮をはぐ。
人間が繁殖の手段になるといったところはないようである。

身体的特徴として、血は蛍光の緑色をしている。
これは透明にならないので、良い目印になる。
えらくエラが張った顔をしているが、どちらかというと人間に近い背格好をしている。
ちなみに、ものすごい不細工な女の子が、プレデターに似ている場合があるが、それはそっとしておいてあげよう。

つまり、両者を見比べても、どちらともお友達にはなりたくないのである。
ただ、比較的知能が高いのは、武器を扱うことができるプレデターだろう。

さて、近未来と現代を舞台にしたこの水と油の映画が、現代に共存するとしたら、という超安易な発想から生まれた物語の肝は、その水と油をいかに融合させるかにあっただろう。
だが、残念ながらその点において失敗している。

なぜプレデターとエイリアンが一カ所に集結しているのか。
それを観客が知るのは物語中盤以降である。
プレデターは高度な文明を持ち、それを人類に教えていた。
人類はエイリアンの維持、増殖のためのえさとして飼われていたのだ。
プレデターはエイリアンの女王を飼いならし、自分たちの「成人」の儀式のために活用していた。
つまり、エイリアンを克服したものだけが「プレデター」として認定されるのだ。
エイリアン対プレデターは、一種の祝祭としての通過儀礼だったのだ。

ここで誰もが想像できるのは、この映画自体がある種の祝祭、祭りであるという符号の一致である。
要するに、この映画そのものが、「企画もの」であり、とりあえず対戦させたらおもしろいんじゃないのかという発想で作られた
映画だと言うことを、映画自身が語っているのだ。
それに巻き込まれた人間、そして何より観客は、非常に複雑な感想を持つだろう。
「テキトーやな~」と言わざるを得ない。
あまりに安易である。
もう少し説得力ある設定であれば、映画としての価値もあるのだが、ここまでとってつけたような無理な設定には閉口する。

だが、ここまで両者をつなげる設定に「負担」がかかってしまったのは、訳がある。
それまでの展開があまりにその「真相」に頼るようなものだったからだ。
ホラー映画のセオリーは、徹頭徹尾、その「謎」にある。
ストーリー的な謎ももちろんだが、見えない、聞こえない、わからないというような謎が一番恐怖を駆り立てる。
おそってくる相手が見えないから怖いのだ。
意味不明だから恐ろしいのだ。
それがなければある程度の方策が立てられて、対処のしようもある。
だが、それができないから、ホラーを感じるのだ。

この映画は最初からエイリアンの女王の姿を映し出し、プレデターのCG映像が流れる。
闇の中に潜む、といった演出ではなく、モノをありありと映してくれるのだ。
だから全然怖くない。
どんな姿をしているのか、どんな武器や攻撃でおそってくるのか、という謎が全くない。
もちろん、エイリアンもプレデターもあまりに有名だが、それでも見せないことで、不安をあおることはできたはずだ。
あまりに惜しげもなく見せてくれるため、恐怖は減退する。
だが、中盤まではまだおもしろい。
なぜ両者が争っているか全くつかめないからだ。
どちらにつけばいいのか、どちらがより凶悪なのかつかめない。
だから人間側に対処する方法がない。
目的が不明なために、そこに恐怖が生まれるのだ。

ところが、考古学者のセバスチャン(ラウル・ボヴァ)が、謎を強引に解釈し説明してからは一切の恐怖感がなくなる。
エジプトの古代文字を解読するという極めて観客の推理の余地がない方法で、しかも、「お祭りだった」という切実さのない謎が解明されると、エイリアン側にはつけないとわかり、急に「ミスタープレデター」が仲間になる。

それは敵の敵は味方、というようなよそよそしいものではない。
「味方」である。「仲間」である。
しかも、それまでは人間を殺しまくっていたにもかかわらず、人間とコミュニケーションまで取り始める。
これを使ったら酸性の血を免れる、といったアイデアまで教えてくれる。
おいおい、中に人間が入っているんじゃないのか、と言いたくなるほどだ。
エイリアンをぐるぐる回す姿には怖さのかけらもない。
そのうえ、爆弾を取り出したときには、
閉じた拳を広げて見せ、「これは爆弾だよ」とまでボディー・ランゲージしてくれる。

これはもう爆笑しかない。
つながれていた女王エイリアンにも爆笑だが、人間プレデターには腹を抱えて笑うしかない。

プレデターをあたかも人間のように扱う姿には、日本の「ゴジラ」を彷彿とさせる。
「ゴジラは怒っているのよ」というあの声で、「プレデターは人間と仲間になろうといっているのよ」という台詞が聞こえてきそうだ。

そしてラストは「プレデター2」を模したような終わり方。
とりあえずシリーズのおいしいところは踏襲しましたよ、的な終わり方である。
お約束で、プレデターの腹の中からエイリアンが「こんにちは」。
何から何までつけていただいて、ほんとおなかいっぱいです。
これだけファン・サービスに走りすぎた映画も珍しいだろう。
ホラー、アクション、SF、コメディ、とすべてを楽しませてもらった印象だ。

監督は「バイオハザード」シリーズの脚本を担当したポール・W.S.アンダーソン。
ああ、それでか、と妙に納得してしまった。
「どちらもオリジナルの方がおもしろい」

(2005/11/6執筆)

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2 コメント

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Unknown (はいど)
2009-05-03 12:33:38
「エイリアンVSプレデター(V)」の評価点間違
ってますよ。
返信する
直しました。 (menfith)
2009-05-06 21:17:18
管理人のmenfithです。
書き込みありがとうございます。

そして、ご指摘ありがとうございます。
直しておきました。
返信する

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