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猫と酒とアルジャジーラな日々

1999年のトルコ北西部地震で1人も死傷者を出さなかった町

2023-02-17 11:56:43 | 中東ニュース

 

 

回の記事で、今月6日のトルコ南東部を震源とする地震で被害がひどかったハタイ県にありながら、建物が1軒も倒壊せず、死傷者が1人もいなかったエルジン郡の郡長のインタビューを和訳(要約)した。

 

このエルジン郡長のインタビューをネットで見た時、私はすぐにタヴシャンジュル(Tavşancıl)を連想した。

 

トルコでは1999年にも北西部でM7.6の大地震(トルコ北西部地震、イズミット地震、トルコ・コジャエリ地震等と呼ばれる)があり、多くの犠牲を出したが、震源地に近かったのに一切被害が出なかった地域があったのだ。今回のエルジンのように。それがタヴシャンジュルだ。

 

今回は、私がタヴシャンジュルのことを知るきっかけとなった動画の内容を以下に和訳(要約)する。BBCトルコ語版が2022年8月17日に公開したものだ。

 

 

「タヴシャンジュル:1999年8月17日の地震で破壊されなかった町」

1999年8月17日の地震により、イズミット湾岸地域で多数の死者が出て建物が倒壊した。しかし、震源地に非常に近かったにもかかわらず、イズミット湾岸のある町は、ほぼ地震の影響を受けなかった。後に注目を集めることになったこの町は、タヴシャンジュルである。

 

タヴシャンジュルはなぜ地震の影響を受けなかったのか?

 

タヴシャンジュルは周辺の多くの地域とは違い、緑豊かで閑静な町だ。建物の階数が少なく、互いに距離があることが目を引く。この町が地震の影響を受けなかった理由は、これに直接関係している。これについて、よりよく理解するためには、1980年代に遡る必要がある。

 

 

 

 

1989年の地方選挙で、サーリヒ・ギュン氏がタヴシャンジュルの町長に選ばれた。ギュン氏は町の都市計画を準備するにあたって、コジャエリ大学の地質学の研究者らに調査を依頼した。彼らが作成した地質調査報告書は、地震のリスクに焦点を当てた内容だった。この町は北アナトリア断層上に位置しており、都市計画を策定するにあたって、地震のリスクを無視することはできなかった。

 

 

 

 

報告書の作成に参加したコジャエリ大学地球物理学科の元教授によると、この町が地震の影響を受けなかった理由は、地盤の堅固さと町で取られた措置だった。

 

 

 

 

ギュン氏は報告書を重視して都市計画を策定した。この計画に基づき、高層建築(4階以上)の規制を始めとする、様々な決定が実行された。

 

しかし当時、この計画に対する住民の意見は、賛否両論に分かれた。反発する人も多かった。しかし、町長は一歩も引かず、自身の親戚や町会議員にも手加減せず、高層住宅は建てさせなかった。自身の父親が家を一階分建て増ししたいと言い出した時も許可しなかった。ギュル氏の娘さんの証言によると、彼は「人命が失われるよりは、票を失う方がいい」といつも言っていたという。

 

1999年8月17日のトルコ北西部(イズミット)地震では、公式発表によると1万8,373人が亡くなり、36万4,905棟の建物が被害を受けた。イズミット湾の多くの場所で被害が出たが、タヴシャンジュルでは大きく揺れたものの、一切被害がなかった。死傷者も1人も出ず、損壊した建物は1軒もなかった。

 

住民たちによると、2000年代以降、建築に関する検査は以前ほど厳しくなくなった。ギュン氏は建築を厳しく制限していたが、彼の後を継いだ新しい町長は、基本的に違法建築を放置して、住民の好きなようにやらせた。ギュン氏の取った措置を評価している住民たちは、次に地震が起こったらどうなるかを恐れている。

 

(注:サーリヒ・ギュン氏は1989年5月~2002年11月までタヴシャンジュルの町長を務めた。2002年に共和人民党(CHP)から総選挙に出馬して、コジャエリの国会議員に当選。2022年1月、新型コロナの治療中に76歳で死去)

 

 

 

 

(参考)

Tavşancıl: 17 Ağustos 1999 depreminde yıkılmayan yer(動画が掲載されたBBCトルコ語版の記事)

https://www.bbc.com/turkce/haberler-turkiye-62570328?at_campaign=Social_Flow&at_custom1=%5Bpost+type%5D&at_custom3=BBC+Turkce&at_custom4=BDCD1732-2148-11ED-BE3B-311B933C408C&at_custom2=twitter&at_medium=social&at_campaign_type=owned&at_bbc_team=editorial&at_link_id=CB1F3818-A7D8-11ED-B325-9B3B16F31EAE&at_ptr_name=twitter&at_format=link&at_link_origin=bbcturkce&at_link_type=web_link

 

 

(終わり)

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4 コメント

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Unknown (meretseger)
2023-02-17 12:19:12
内容はもちろん興味深く拝読いたしました。でも、なにより、トルコ語のプロがこうして無料で記事を書いてくださることに感激です。ありがとうございます。ウスターザのトルコ愛を感じます。どうか被災された皆さまが、早く希望を持てる状況になりますように。
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ルクソーラさんへ (michi)
2023-02-17 19:32:41
いつもコメントありがとうございます~プロは基本的に無料で翻訳するべきではないのですが、地震関連の話題に興味がある人は多そうだし、時間もあるし、やりたい内容を要約という形ならいいかなと…最近色々迷走しています~トルコ愛はあんまり関係ないかな・・・シリアの方が状況がひどいので心配です~
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ウンム・キタト・ミチさんへ (Zhen)
2023-02-17 22:33:16
眠れる獅子ならぬ、眠れるネコ、美女が、目覚めたって感じです。連日のブログのアップ、さすがです。

それに加え、「プロは基本的に無料で翻訳するべきではない・・・・」痺れます。その通りだと思います。でも、動くときは、動く。

ワラビスタンのグルド住民の心中を察すると、その中に住んでいる者として、気がかりですからね。

では、また。
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Zhenさんへ (ウンム・キタト・ミチ)
2023-02-18 19:55:36
Zhenさん、「眠れる猫」って、素敵な表現ですね✨これからそう名乗ろう~(起きんかい)美女は…

今回の地震に関して、紹介したいと思った内容をがんばって続けざまに2つ訳しましたが、もうエネルギーが切れた…3日坊主猫です~

クルド文化協会等が被災地支援活動をしているようですし、支援を兼ねてハッピーケバブなどで食事されたら、喜ばれるかもしれません。クルド・トルコ料理のレストラン、川口で増えている模様ですね。

ではまたよろしくお願いします~
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