メガヒヨの生息日記

メガヒヨ(観劇、旅行、鳥好き)のささいな日常

THE MUSICAL AIDA ~王家に捧ぐ歌より~

2009年09月12日 | 国内エンタメ
THE MUSICAL AIDA 宝塚歌劇「王家に捧ぐ歌」より
9月12日 東京国際フォーラム ホールCにて
脚本・演出 木村信司

ヴェルディのオペラをベースとして、宝塚歌劇団が「王家に捧ぐ歌」というミュージカルを上演したのは2003年のこと。
それから6年後の今、当時アイーダ役を好演した安蘭けいさんを再び同じ役に起用して新しいミュージカルが制作された。

アイーダ 安蘭けい
ラダメス 伊礼彼方
アムネリス ANZA

ファラオ 光枝明彦
アモナスロ 沢木順
ウバルド 宮川浩
神官 林アキラ

【あらすじ】
3500年前の古代エジプト。
先の戦いで捕虜として連れてこられた敵国エチオピアの王女アイーダと
エジプト軍筆頭の戦士ラダメスは、お互い密かに惹かれあっていた。
二人を嫉妬を秘めながら見つめるエジプト王女のアムネリス。
そしてエチオピアとエジプトとの間に再び戦争が起こり、ラダメスは将軍として戦地に赴くのだが…



あのチケット取りの日から長いこと待って、やっと観劇の日がやって来た。

安蘭けいさんが宝塚退団後初出演となるこの舞台。
東京公演のチケットは争奪戦となり、ちけっとぴあの一般発売は販売開始後に瞬殺状態だったとの話。
なんとか運良く買うことが出来た。

メガヒヨにとってはスカーレット・ピンパーネル以来の安蘭さん。
宝塚退団後は一層美しさに磨きがかかり、登場時の白い衣装のお姿は光り輝くばかりだった。
この方が数ヶ月前まで男性を演じていたなんて信じられない。
それに少々の淋しさを感じるものの、これからの女優としての活躍がますます楽しみ。
歌も期待以上に聞かせてくれた。
高音が綺麗に響いていて、音域がさらに広がった感じがする。
人気ぶりにも拍車がかかっているし、ミュージカル女優最強の座に君臨されたかも。

ラダメス役には、初めて拝見する伊礼彼方さん。
イケメン俳優の登竜門「テニスの王子様ミュージカル(これ、未見…)」ご出身。
歌はそれなりだけど、運動能力の高さに目を見張った。
助走なしで高い段差もぴょんぴょん飛んでしまう。
そして彼はエジプト人役ということで、露出度も高かった。
その腹筋の素晴らしいこと!!
さらに装飾品がついた腰巻がずり落ちかけているのか、手で押さえる仕草もたまらない。
この件については幕間にみんなで熱く語り合ってしまった(笑)

アムネリスのANZAちゃんも綺麗だった。
長い黒髪が大きい目によく引き立って、まるでお人形の様。
声も高く澄んで凛としていて、王女役にぴったり。
ただ衣装が少々、鎧みたいで残念だった。
宝塚で壇れいさんが着ていた感じのものだったら、きっとよく似合ったのに。

ファラオの光枝さんは、相変わらず豊かな声量の歌声を聞かせてくれた。
いや、四季時代よりもさらにパワーアップしている模様。
年内には「グレイガーデン」でも拝見する予定だけど、この方って仕事が多いなぁ。
あのご年齢でこれだけ歌えてカリスマを持っている俳優さんって本当に貴重だしね。

アイーダの家族、兄ウバルドには宮川浩さん、父アモナスロには沢木順さん。
宮川さんも鍛え上げられた体格をお持ちだった。
しかし捕虜とはいえ何も着ていない上半身に長い布を垂らしていると、なんか裸ネクタイの人みたいで目のやり場に困る(笑)
歌声は格好いいのだけど、どうもそのビジュアルが邪魔をしてくるのだった。

沢木さんは偽りの狂気の仮面をはがす場面に迫力があった。
終盤のダメダメ父ぶりも板についている。
出番が少なくて勿体無かった。

そして神官の林アキラさん。
以前にタナボタ企画の「BIG SPENDER」で拝見した際は、成田空港のお土産日本人形みたいなお姿だった。
今回はエジプトの空港で売られている民芸品と化していた。
そんなユーモラスな外見と似合わず、これまた鳥肌ものの美声。
丸い声と言ったらいいのかな?角もアクもまったくないツルツルとした珠のようなテナーなのである。
今回の役は、女官と遊ぶ様ななまぐさ神官。
こういうのって、綺麗な声の方が腹黒さが却って目立っていいのかも知れない。


このミュージカルは音楽面ではディズニーの「アイーダ」に劣るもの、
戦争の副作用としてのドラマは深く掘り下げられていた。
「争いはまた新たな争いを生む。」確かにね。
2003年の時にも思ったけど、エジプトは現代のアメリカを象徴しているのかも。

作品が訴えかける内容は高尚なのだけれど、歌詞や台詞まわしにもう少し気の利いた言葉を使って欲しかった。
「エジプトはすごい♪つよい♪」なんて、ギャグとはいえあまりにもお粗末。
友人たちとも「語彙があまりにも貧困だよね~。」とうなづき合ってしまった。
宝塚のときもこうだったのだけど、新しい作品として世に送り出すならもう少し手直しするべきだと思う。

少々の突っ込みどころはあるものの、日本で制作されたミュージカルとしては珠玉の出来栄えだった。
総立ちのカーテンコールでは安蘭さんのお茶目な一面も観ることが出来、満足な気持ちで劇場を後にしたのだった。