リアス式読書日記(仮)

本好きのマヨネぽん酢が、読んだ本の感想をのらりくらりと書きます。よろしく!

『魔法の王国売ります!』テリー・ブルックス

2005年03月27日 | 幻想文学・ファンタジイ
■詳細
出版社:ハヤカワ文庫FT
シリーズ:ランドオーヴァー①
原題:Magic kingdom for sale-sold!
訳者:井辻朱美
発行年月:1989年5月
価格:693円
ジャンル:ファンタジイ

■感想
ファンタジイ小説の主人公って、だいたい十代の少年少女とか、せいぜい二十代の若者とかが多いよね。
ところが、この『魔法の王国売ります!』の主人公は三十九歳のオッサン。
ハードボイルドの主人公とかだったら適齢だと思うけど、ファンタジイだと正直年齢オーバーだろ。なんて思ったけど、その点は大丈夫。
このオッサン、魔法の国でも結構がんばるから。

それで、どんな話かというと。
――主人公のベンはシカゴに住む弁護士で、二年前に奥さんを亡くしてすっかり参っちゃっていた。そんなとき、デパートのチラシで「魔法の王国売ります!」という広告を発見。
普通だったらそんなの一笑に付すところだけど、ベンはかなり参っていたので、百万ドルをはたいて魔法の国の王権を買ってしまう。
そんなわけで彼は、魔法の国〈ランドオーヴァー〉の王さまになった。けれども売りに出されるくらいだからわけありで、王国は存亡の窮地に立たされていた。
はたしてベンは王国を立てなおして、〈ランドオーヴァー〉を救うことができるのか――。

ストーリーはわりとオーソドックスなのだけど、キャラクターは個性的。
魔法のコントロールがきかない、お茶目な宮廷魔術師クエスター。
誰かさんの魔法でイヌにされちゃった、皮肉屋の宮廷書記アバーナシイ。
この頼りなさそうなふたりが王の側近で、とてもいい味を出している。ほかの仲間たちも楽しいやつらばかりだし、敵のドラゴンや魔女なんかもキャラが立ちまくり。

ただ、お話の序盤と終盤の面白さにくらべて、中盤が少し失速した感じがするんだよね。でも、シリーズものの第一巻だし、続きが気になる世界観なので、もうちょっと読んでみないとトータルな面白さが分からないのかも。

■満足度
(4)

実は短編が好き

2005年03月20日 | Weblog
近所の書店で「本の雑誌」の4月号を購入しました。

「本の雑誌」のブックレビューの充実ぶりは、すごい。各ジャンルを手広くカバーしているので、読書傾向がめちゃくちゃな私にもたいへん役に立ってます。
それで、今月号の特集は「秒速百メートルの短編小説」でした。

短編小説の位置づけって、どうなのだろう?
短編も一応読むけど、長編がメイン、という人が実は多いんじゃないかな。
でも私の場合は、逆に短編がすきなんです。もちろん、どちらも好きなんだけど、しいてどちらかといえば。
集中力がないのか、それともせっかちなのか、短編のほうがリズムに合っているような気がするんですよ。長編を読むときは、「さあ読むぞ」って構えてしまうのだけど、短編の場合は適度に力が抜けるし。その辺も、短編を好む要因なのかもしれません。

そんなわけで、自分の好きなSF短編を選んで、勝手にアンソロジーを考えてみました。

「踊るバビロン」牧野修
「カーネーション、リリー、リリー、ローズ」ケリー・リンク
「アルファ・ラルファ大通り」コードウェイナー・スミス
「穴のなかの穴」テリー・ビッスン
「時計の中のレンズ」小林泰三
「ぼくになることを」グレッグ・イーガン
「墓読み」シオドア・スタージョン

「踊るバビロン」を最初に持ってきて読者を混乱させつつ、ケリー・リンクでさらに混乱させつつ、ラストは「墓読み」で手堅く決める、と。
なんか、無茶苦茶な短編集が出来上がった……。というか、真面目に考えた末に、どうしてこうなっちゃうかなあ。
でも、こういうの考えるのもなかなか楽しいね。

GT4 だいぶ達成率も上がってきた

2005年03月20日 | ゲーム
ということは、そろそろ大詰めなのかな。

ゲーム達成率 74,7%
A-specポイント 52303pts
A-spec走行距離 9,046Km
レース勝率 62,2%

100%になるまでやるか分からないですが、ここまできたらチャレンジしてみたいですね。となると問題はニュルブルクリンク24時間耐久でしょう。
これはもう、B-specに頼むしかないかな。
しかし、耐久レース以外はだいたいA-specで走っているので、B-specのスキルがあまり上がってないんですよね。ある程度スキルを上げておいたほうが無難かもしれない。

そういえば、ミッションレースのラスト3ラップバトルをクリアしてジェイレノタンクカー’03をもらいました。
いや~、2000GTでニューヨーク市街地を走るレース、かなり苦労しましたよ。全体的に、ミッションレースは難易度高めみたいですね。いまはスリップストリームバトルのスカイラインのレースでてこずってます。




この車、インパクトありすぎ!
なんでも、戦車のエンジン流用したからタンクカーというそうな。
馬力がすごいので、3500kgの重量もなんのその。恐ろしい。
で、とりあえず記念写真を撮って、売却してしまった……。
一度手に入れた車は、手放してしまってもアーケードモードでは乗れるようなので、ガレージ整理のために心置きなく売り飛ばしてます。判断に困るのは値段がつかないコンセプトカーですが。




『完全な真空』スタニスワフ・レム

2005年03月18日 | ジャンル分類不能な小説
■詳細
出版社:国書刊行会/文学の冒険シリーズ
訳者:沼野充義/工藤幸雄/長谷見一雄
発行年月:1989年11月
価格:2000円
ジャンル:メタフィクション

■感想
架空の書物について書かれた、架空の書評集。

ええっ、何それ?
って思うよね。最初は私もそう思った。
でも、これは文学史上はじめての試みというわけではないそうだ。レム以前にもボルヘスが同じようなことを試みていたらしい。
とはいえ、あまり類例をみないというのは確かなんじゃないかな。こういう趣向はフィクションの選択肢のひとつとしてたいへん面白いと思うけど、やっぱり並みの作家では書けないというか書こうとも思わないものなんだろう。

で、内容だ。
文学や科学に通じるレムの該博さもすごいのだけど、圧倒的にすごいのがアイデアの特異さと、思索の切れ味だろうね。

インパクトとしては「新しい宇宙創造説」が一番。これはビッグバン宇宙論に取って代わる宇宙論を提唱した〈架空の〉学者の、ノーベル賞授与式での〈架空の〉講演を引用したもの。
この学者が言わんとするのは、われわれの宇宙の物理法則は〈宇宙創造ゲーム〉によって目的志向的に形成されたものであるということ。
学者はゲームの理論を用い、宇宙の膨張や背景放射、さらにはエントロピーの増大や光速の不可侵性を鮮やかに説明してみせる。
――と、私が書くとなぜかとたんに分かりにくくなるのだけど、それほど難しいことが書いてあるわけではないよ。SF読者なら面白く読めるんじゃないかな。

反対に、とっつきやすくておすすめなのが、埋もれた天才を発掘しようと冒険した人物を描いた「イサカのオデュッセウス」と、コンピュータ・ネットワークによって顧客の人生を演出する企業が発展した未来社会を描いた「ビーイング株式会社」の二篇。

■満足度
(10)

『エバ・ルーナ』イサベル・アジェンデ

2005年03月07日 | ジャンル分類不能な小説
■詳細
出版社:国書刊行会/文学の冒険シリーズ
原題:Eva Luna
訳者:木村榮一/新谷美紀子
発行年月:1994年6月
価格:2363円
ジャンル:ラテンアメリカ文学/フェミニズム文学

■感想
冒頭からラテンのパッションに魅せられてしまうこと間違いなしの、パワーに満ちあふれた物語。
まず、ストーリーテリングが一級品。風変わりな登場人物が次々とあらわれ、予想もつかないエピソードが展開されていく。といっても、やたらと複雑に入り組んだストーリーとかではなくて、むしろごまかしなしの直球勝負という感じ。文章も素敵で読みやすいので、とてもスピード感があった。
さらに、作品全体にみなぎる野生の活力。主人公のエバは身寄りのない混血児の少女で、社会的な強弱からいえば底辺にいるわけだけど、それがぜんぜん感傷的な物語になっていない。なんというか、奔放さとか意志の強さとかっていう表現をとおりこして、野性的としか言いようがないものを感じた。
――そんなわけで、『エバ・ルーナ』を読んだら、きっとほかの小説が軟弱に思えてしまうはず。

お話の舞台は南米のとある国。石油の輸出で急速に潤ったけれど、政情は不安定で治安もよろしくない時代。
主人公のエバは、ヘンテコな研究をしている博士のお屋敷で女中として働いていた母と、強靭な体を持ったインディオの父との間に生まれる。エバはそのお屋敷で、たくさんの素敵なお話を聞き、仕事を手伝いながら母の手で育てられた。けれども、エバがまだ幼いころに母は死んでしまい、彼女はそれからさき自分の力で生きていくことを宿命付けられる。
彼女に与えられた才能は、お話を語ること。エバはさまざまな町を転々とし、さまざまな人と出会い成長し、やがて国家を揺るがすような事件にもかかわっていく。

エバと対照をなすように語られるのが、ロルフ・カルレのお話。ヨーロッパで生まれた彼は、暴力的な父の恐怖のもとで育ち、やがて運命に導かれるように南米をめざして船に乗る。彼は叔父夫婦の家で不自由なく暮らし、のちに戦場カメラマンとしてドキュメンタリーを撮ることに生涯をささげる。

エバの人生は、のちにロルフの人生と交わっていくわけだけど、個人的にそのあたりはとても興味深く読んだ。
テレビドラマの脚本を書くエバの姿と、正規軍とゲリラの戦闘の真実を追うロルフの姿は、対称的なようで根底でつながっているような気がする。創作とジャーナリズムはどちらも他者に何かを伝える行為だけど、フィクションとノンフィクションという意味で表裏をなしているのだろう。そう考えるとこの小説のラストは、真実と虚構がゆるやかに溶け合うラストなのかもしれない。

――と、まあ、だらだらと屁理屈をこねてしまったけど、この小説は理屈ぬきで面白いよ。
というか、理屈をよせつけない面白さ。情熱に身をまかせてページをめくるのが、一番なんじゃないかな。

■満足度
(7)

これからは、真面目に新聞読むか

2005年03月03日 | Weblog
さっき読売新聞の夕刊を読んでいたら、小谷真理の書評を見つけました。
読売の夕刊には、「KODOMO」っていう子供向けのページがあるんですね。ネーミングはそのまんまですが、ざっと見た感じ、大人が読んでもなかなかためになるページだと思われます。
「KODOMO」は曜日ごとにテーマが決められているようで、水曜には小谷真理が「ファンタジー&SF玉手箱」というコーナーで本を紹介しているわけです。

そして、本日紹介されていた本はなんと、大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』ではないか!

そういえば、『ハイブリッド・チャイルド』について言及した記事を、ネット上であまり見たことがありません。人気がないのかな? さっきAmazonで検索してみたら、レビューがひとつもなかった。完全にマイナー本なんですね。面白い本だと思うんだけど。
個人的には――

『百億の昼と千億の夜』光瀬龍
『宝石泥棒』山田正紀
『ハイブリッド・チャイルド』大原まり子


――の三冊で、ハヤカワ文庫JA三種の神器だと勝手に信じています。

どんな本なのかというと説明が難しいのですが、早い話が母と娘の物語です。
主人公の〈サンプルBⅢ号〉は有機体と機械の混合でつくられた生命体で、まさにハイブリッドなチャイルド。物語は、軍から脱走したBⅢ号の、めまぐるしい逃避行を追っていきます。
BⅢ号は、一度サンプリングした生物の組成を、完全に真似ることができます。たとえば、馬の細胞を取り込んだら、自由に馬に変形できるわけ。
それで、あるときBⅢ号は、ヨナという少女の遺体をサンプリングします。ヨナは母親とふたりで暮らしていましたが、その母親というのは精神がかなり参ってしまっていて、折檻のすえにとうとうヨナを殺してしまう。そして、その死体を家の地下に埋めていたんです。それを見つけたBⅢ号がサンプリングしてしまったわけ。
そうして、BⅢ号のなかにヨナの人格が形成されます。物語が進むうちにいくたびも、この母子のモチーフは繰り返されていきます。

なんて、こう書くとかなり暗そうな感じですが。まあ実際、読んでいて気分爽快な小説ではないかも。むしろ、どろどろとしてる感じで。
描写がシュールで、グロテスクで、耽美で。胸焼けしそう。
ただ、アクションシーンは大変迫力があります。その点は、スカッと爽快。

とにかく、メジャーな新聞の夕刊で『ハイブリッド・チャイルド』に出会えるなんて、マイナーな本読みとしてこれ以上の喜びはありません。
これからは、ちゃんと新聞読もう。