リアス式読書日記(仮)

本好きのマヨネぽん酢が、読んだ本の感想をのらりくらりと書きます。よろしく!

『雪沼とその周辺』堀江敏幸

2005年02月25日 | 純文学
■詳細
出版社:新潮社
発行年月:2003年11月
価格:1470円
ジャンル:純文学

■収録作品
「スタンス・ドット」
「イラクサの庭」
「河岸段丘」
「送り火」
「レンガを積む」
「ピラニア」
「緩斜面」

■感想
どことは知れない山間の町〈雪沼〉と、その周辺に住む人たちのお話。

読み手にスリルや興奮、あるいは鮮烈な印象を与えるタイプの小説ではないけれど、不思議と心安らぐ暖かさがあり、里帰りしたような懐かしさがある。
そこに描かれるのは特に重大な事件というわけではなく、誰もが日常生活のなかで感じたことのあるようなちょっとした心配事、ふいに現れてはすぐに消えて行ってしまうような些細な不安だったりする。
たとえば、がむしゃらに走り続けてきた半生をある時点でふと振り返ってみて、そのときに感じるめまいに似た感覚。道が一本しかなかったのは承知だけれど、「俺は本当にこれでよかったのか」と疑りたくなるような、そんな一瞬。
また、色褪せていた思い出が何かのきっかけでふと蘇ってきて、脳裏に浮かび上がってすぐにまた沈んでいってしまい、懐かしむ暇もなく現在に取り残されてしまったような一瞬の、もどかしさ。名残惜しさ。

そんな田舎町の断片のような物語も、堀江敏幸が描けばじつに美しい。
独特のリズムをもった洗練された文体は、物語に浮遊感を与え、見慣れたもののなかに潜む違和のようなものを際立たせる。
人物にも、風景にも、音にも、不思議な丸みがあるような気がする。

いや、しかし、本当にいい小説だなあ。

■満足度
(6)

『地図に仕える者たち』アンドレア・バレット

2005年02月22日 | 純文学
■詳細
出版社:DHC
原題:Servants of the Map
訳者:田中敦子
発行年月:2004年9月
価格:1890円
ジャンル:純文学/博物学

■収録作品
「地図に仕える者たち」
「森」
「雨の理論」
「二本の河」
「ユビキチンの謎」
「静養」

■感想
愛とか恋とかを正面切って語られると、ちょっと怯んでしまう。
かといって、真面目に科学の歴史なんかを語られるのも眠くなるし……。

その点、この小説はよかったなぁ。
博物学(自然史)を探求する作者が、その知識を遺憾なく発揮して描いた人間ドラマ、という感じで。博物学と人間ドラマの合わせ技。
どの短篇も、魅力的な物語の背景に、科学の変遷が巧みに織り込まれているわけ。いや、もうお見事というしかないね。これは。

「地図に仕える者たち」
――ヒマラヤ山脈の測量に従事したマックスのお話。
過酷な任務のなかでマックスは高地の植生に魅了されていき、次第に好きな研究に身を捧げたいという願望が、故郷に残してきた妻を想う気持ちとの間で揺れ動いていく。

妻との手紙のやり取りでの微妙な時間のずれがもどかしい作品。
過酷な自然環境がとてもリアルに書かれているなと思っていたら、どうやら作者は実際にヒマラヤに登ったそうだ。
とんでもない作家だな~。

「二本の河」
――聾学校の設立に尽力したケレイブと、その養父のお話。
化石の発掘に人生をかけていた養父だったが、そのころは地質学研究も転換点に差し掛かろうとしており、やがて養父の唱えた説は完全に否定されてしまう。養父亡き後に家業を継いだケレイブだったが、あるとき思い立って発掘の旅に出る。

複雑な感情を抱きながら、あくまで養父への尊敬と感謝を見失わないケレイブがかっこいい。
粒ぞろいの短篇集だけど、個人的にはこの「二本の河」が一番輝いている気がする。なんたって、最後の一行がかっこいいしね。

■満足度
(8)

トラックバック練習板にて 最近読んだ本のタイトルを教えてください

2005年02月20日 | Weblog
今週のお題は、最近読んだ本のタイトルを教えてくださいですか。
実は最近、あんまり読書が進んでないんだけど、「SFが読みたい!2005年版」を読んだおかげで俄然読みたい本が増えました。
というわけで、お題を全面的に曲解して、最近読みたいと思った本のタイトルを書こう。

これだけは万難を排してでも読まなきゃと思った作家が、スティーヴン・ミルハウザージョン・クロウリーです。タイトルでいえば、『マーティン・ドレスラーの夢』と『リトル・ビッグ』あたり。あらすじや紹介を読んでも、どんな本なのか想像もつきません。そういう不思議な本に、このところ読書意欲をそそられています。
しかも、『マーティン・ドレスラーの夢』はピュリツァー賞をとったみたいで。最近は読書の興味が欧米の主流文学に移ってきたのか、ピュリツァー賞とかいわれるとそれだけで読んでみたくなっちゃいます。
基本的に権威に弱いです。
O・ヘンリー賞受賞とかブッカー賞候補作、なんて裏表紙に書いてあるとくらっとくるね。実際はO・ヘンリー賞がなんなのかよく知らないとしても。こりゃ、もしかして典型的なブランド志向かな。

それから、もういい加減そろそろグレッグ・イーガンの長編を読もうかなと思います。
短篇集は二冊とも読んだのですが、長編は手が出ませんでした。
ただ、三部作のようなので、前のほうから順番に読まなきゃ駄目なんでしょうかね。そこら辺、敷居の高さを感じるんだよね。
でも、神林長平の火星三部作なんかは、三作を通読することでしか味わえない感動みたいなものがあったし。やっぱり、シリーズものは順を追って読むのが一番なんでしょう。
よし、とりあえずいま読んでる本と、その次に読む予定の『魔法の王国売ります!』が終わったら、真剣にイーガンの三部作購入を検討しよう。

「しまった、配達に遅れるっ!」

2005年02月19日 | ゲーム


tawaさんのブログで行われているF1GP!!に、及ばずながら参加します!(写真はクリックで拡大)
車はミゼットⅡで、コースはカテドラルロックトレイルⅡの逆走です。
コース後半にある急な下りで、ブレーキングせずに飛び出してみました。ミゼットのお茶目な表情が素敵です。

GT4 とりあえずエンディングを見ました。

2005年02月18日 | ゲーム
先日、グランツーリスモ・ワールドチャンピオンシップで勝てん、なんぞとぼやいておりましたが……。
勝ちましたよ。tawaさんから助言をいただいたとおりに、ミノルタ トヨタ 88C-V レースカーで出場しました。ラップ数が多かったので、タイヤはスーパーハードにしました。だいたい無交換でいけましたが、二度ほどピットインを余儀なくされる場面が。確か、香港とオペラ・パリだったかな。
それから、ところどころ一位じゃなかったのは秘密です。鈴鹿で5位だったのは秘密です。まあ、総合優勝すればいいさ、後でやり直せばいいさ。
なにはともあれ、tawaさんどうもありがとうございました。

そういえば、gooブログさんの画像の容量が増えましたね。これはもう、原寸大の写真を貼るしかないね(クリックで大きくなります)。




いまのところ成績はこんな感じです。エンディングは見ても、やること残ってますね。
相変わらず、地味にA-specポイントをためてます。最近はダイハツ ムーヴでダートを走ったりしてます。


ゲーム達成率 43,4%
A-specポイント 30741pts
勝率 62,5%


勝率が低いのは、生き方です!

「SFが読みたい! 2005年版」を買いました、読みました。

2005年02月18日 | Weblog
「SFが読みたい! 2005年度版」を買いました。
最近は「SFマガジン」も購読していないので、そのかわりにこれを読みます。一年間のSF業界のトレンドが分かって便利です。
まあ、「SFマガジン」を毎月買ってこそ真のSFファンなのかもしれませんが、そこまでする時間がないという人はこれに目を通してみるといいかも。

「SFが読みたい!」といえば、ベストSFの発表です。その年のSF小説のなかから、すごかったやつをランキング形式にして発表するんです。これで、トレンド丸分かりなわけですね。
ちなみに去年は、海外篇の一位には『あなたの人生の物語』テッド・チャン、国内篇の一位には『マルドゥック・スクランブル』冲方丁が選ばれました(どうでもいいけど、冲方丁って漢字変換しにくいなぁ)。
別にランキングが上位だったからといって、読んでみて必ず面白いと感じるかどうかは分かりませんが、ある程度は本選びの指標になると思います。
そういうわけで、私はこれを結構参考にしているわけです。

Amazonさんをみていたら、ベスト10までが載っていたのでリンクを張っておきます。
ちなみに実際に本を買えば、ベスト20まで載っているのですが。
ベストSF2004 海外篇ベストSF2004 国内篇

う~ん、『象られた力』飛浩隆が国内篇の一位に選ばれたのは嬉しいです。
でも、どっちかというと地味な本だよな……。まあいいや。
海外篇はやっぱりグレッグ・イーガンでした。三度目です。
もはや、誰もイーガンを止められないみたいですね。

カエル調整

2005年02月12日 | Weblog
前に読んだあの本、いま考えるとすごく面白かったなぁ……。
なんてことがよくあります。

読んだ本のおすすめ度を勝手に五段階評価していたのですが、いま考えると納得できない部分がちらほら。ここはひとつ思い切って、以前の感想のカエル指数を調整してみよう。
びしばし、厳しくいくぞ~。

『都市と星』アーサー・C・クラーク

2005年02月09日 | SF(海外)
■詳細
出版社:ハヤカワ文庫SF
原題:The city and the stars
訳者:山高昭
発行年月:1977年12月
価格:441円
ジャンル:SF

■感想
突き抜けてるな~、というのが第一印象。

なんたって、お話の舞台が10億年後なのだ。こりゃ突き抜けてるよね。
クラークの作品っていうと荘厳なイメージで、リアルな近未来小説という印象が強かったのだけど。
『都市と星』の舞台は思い切った遠未来で、荘厳というよりイマジネーションがほとばしってる感じ。

このお話では、人間がある都市に完全に引きこもっちゃっている。
ダイアスパーというその都市は、銀河帝国が滅んだ後に地球上に残った唯一の都市。その内部はコンピューターに制御された小宇宙で、外部との接触を絶った状態で10億年以上も完璧に安定していた。
――と、まあ、それだけだとありがちな感じがするんだけど、そこらへん違うのがクラーク。とにかく、このダイアスパーの描写はすごいぞ。
具体的にどこがどうすごいのかを説明すると長くなるのでやめるけど、まず、絵的にすごい。クラークの書き方が上手いためか、とてつもない立体感と、のしかかる高層ビル群の圧倒的な重さすら感じる。
それから、都市の運営に欠かせない「記憶バンク」なるもののアイデアが、科学技術的にすごい。古い小説なのだけれど、情報理論もナノテクノロジーも、ばっちり先取りの感がある。それに、クラークの科学描写は分かりやすいところも好印象。

主人公はこの都市で生まれた青年アルヴィン。彼は完璧ではあるが停滞している都市に満足できずに、その外に拡がる地球を、宇宙を目指そうとする――。

青年アルヴィンの個人的な物語が、いつしか人類全体の物語になっていくのはやっぱりクラークらしい。
しかしまあ、『幼年期の終わり』や『2001年宇宙の旅』でもそうだったように、クラークの描く「知性の最終形態」はみんなあんな感じなのか。
スター・チャイルド、オーバーマインド。

■満足度
(5)

GT4 中級者向けレースのラストで勝てず

2005年02月05日 | ゲーム
ちょくちょく『グランツーリスモ4』をやっているのですが。
へなちょこドライバーの私は、中級者向けレースの最後のグランツーリスモ・ワールドチャンピオンシップというレースで、こてんぱんにやられています。
AMG メルセデス CLK-GTR レースカー ’98という車で挑んだのですが(ドイツ・ツーリングカー選手権でもらえるやつです)、あっさり負けました。何か、他の車を使ってみようかな。
とにかく、これに勝つとエンディングが見られるようなので、もっと頑張らないとね。

記事の内容とは関係ないけど、写真を貼っておこうかな(クリックで拡大します)。




いまのところ、成績はこんな感じです。勝率がすごいことになっています。

ゲーム達成率 39,8%
A-specポイント 22069pts

レース勝率 68,1%

A-specポイントをなるべくためてみようと思ってぎりぎりのレースをしていたら、勝率がここまで下がってしまいました。

『都市』クリフォード・D・シマック

2005年02月02日 | SF(海外)
■詳細
出版社:ハヤカワ文庫SF
原題:City
訳者:林克己/福島正実/田村裕
発行年月:1976年9月
価格:462円
ジャンル:SF

■感想
古典SFは、すがすがしいね。
このすがすがしさは、最近の小説ではちょっとお目にかかれない。
なぜかって、希望に満ちているからすがすがしいんだ。1950年代のSFは、未来への、科学への希望に満ちている。だから、読んでいて気持ちがいいのと同時に、どうして現在の世界はこうならなかったのだろうと、決まって切なくなるんだ。

『都市』は、犬たちの物語だ。
作中の遠い未来では、人間はとうに地球を離れていて、残された犬たちが独自の文明を築いていた。そこでは、人間の存在はとうに忘れ去られ、伝説と化してしまっている。
この小説は、知性化した犬たちが、人間に関する古代の文献を整理して本にまとめた、という形式になっている。
一話ずつ人間の歴史が語られていくのだけれど、その一話ごとに犬による解説がつけられているのだ。
しかし、この解説は人間が存在した可能性についてどうも懐疑的だ。これには最初は違和感を感じたけれど、読み進めるごとにしっくりくるようになる。つまり、だんだん犬の価値観も分かってくるわけだね。

もっとも、物語に登場するのは人間と犬ばかりではない。ロボットや、人間より優れた能力を持つ新人類も登場する。しかもそういったSF的な要素を、あまさず使い切っているからこの作品はすごい。

一番の見所は、犬たちがどんな社会を築くかということ。また、犬たちに機会をあたえるために、人間やロボットがどのような決断をしたかということ。
作中のロボットの言葉を借りるならば、人間の歴史は「弓と矢の道」だった。
犬たちは、それとは違った道を切りひらいていくのだ。

■満足度
(6)