■詳細
出版社:国書刊行会/文学の冒険シリーズ
訳者:長谷見一雄/沼野充義/西成彦
発行年月:1998年2月
価格:2520円
ジャンル:メタフィクション
■感想
『完全な真空』に続く、架空の書物シリーズ(?)の第2弾。
『完全な真空』では架空の書評集だったのが、『虚数』では架空の序文集になっている。とはいえ、それによって印象ががらりと変わったということはなくて、あいかわらずレムにしか出来ない名人芸だと思わされる濃い内容。
個人的な感想としては、サイド攻撃の『完全な真空』、中央突破の『虚数』といった感じ。なんて、ぜんぜん分からないね。でも、2冊の特質を細かく説明すると長くなるので。
まあ、何はともあれ「GOLEM XIV」なのだ。
この「GOLEM XIV」という章が、破壊力、難易度、ともにぶっちぎりですごい。
基本的に本書『虚数』は架空の序文集なのだけど、「GOLEM XIV」においては序文だけではあきたらず、しっかり本文まで書きこまれている。じっさい、全ページの半分以上を「GOLEM XIV」が占めているほど。「でも本文書いちゃったら、架空の序文集としては反則じゃん」というツッコミを入れたくもなるけど、まあ細かいことをいってもしょうがない。
「GOLEM XIV」という書物は、人智を超えたコンピュータGOLEMによる、人類への講義録。
これには序文などのほかにも、講義が2つ収められている。ひとつが人間論で、もうひとつが自己論だ。
人間論は、人間についての講義。
これはレム版『利己的な遺伝子』といった感じで、人間が進化によって獲得した知性について語る。
自己論は、GOLEM自信についての講義。
人類よりも上位の知性であるGOLEMが、さらなる知性の高みについて語る。
ええと、あんまり自信がないんだけど、この作品のテーマを要約するとこういうことになるなんじゃないかな。
――人類の知性は進化によって獲得したものであり、それゆえの限界があり制約もある。
進化を経験しなかったコンピュータの知性には制約がないため、人類の知性を容易に超えるだろう。
そして、さらにその先へ上昇していく知性があるとしたら、いったいそれはどこへ向かうのか――。
とにかく、レムは自然科学にも人文科学にも精通する膨大な知識をたくわえていて、おまけにとてつもなく頭の切れる人なので、でっち上げのはずの学問が洒落になっていないのだ。
イミテーション・ダイアモンドをあまりにも精巧に作りすぎて、とうとう本物のダイアモンドよりも高値がついてしまった感じ。いや、こういう感覚はほかの本では味わえないだろうね。驚嘆するしかない。
あ、一応書いておくけど、「GOLEM XIV」以外の作品もなかなか面白いよ。
■満足度
(10)
出版社:国書刊行会/文学の冒険シリーズ
訳者:長谷見一雄/沼野充義/西成彦
発行年月:1998年2月
価格:2520円
ジャンル:メタフィクション
■感想
『完全な真空』に続く、架空の書物シリーズ(?)の第2弾。
『完全な真空』では架空の書評集だったのが、『虚数』では架空の序文集になっている。とはいえ、それによって印象ががらりと変わったということはなくて、あいかわらずレムにしか出来ない名人芸だと思わされる濃い内容。
個人的な感想としては、サイド攻撃の『完全な真空』、中央突破の『虚数』といった感じ。なんて、ぜんぜん分からないね。でも、2冊の特質を細かく説明すると長くなるので。
まあ、何はともあれ「GOLEM XIV」なのだ。
この「GOLEM XIV」という章が、破壊力、難易度、ともにぶっちぎりですごい。
基本的に本書『虚数』は架空の序文集なのだけど、「GOLEM XIV」においては序文だけではあきたらず、しっかり本文まで書きこまれている。じっさい、全ページの半分以上を「GOLEM XIV」が占めているほど。「でも本文書いちゃったら、架空の序文集としては反則じゃん」というツッコミを入れたくもなるけど、まあ細かいことをいってもしょうがない。
「GOLEM XIV」という書物は、人智を超えたコンピュータGOLEMによる、人類への講義録。
これには序文などのほかにも、講義が2つ収められている。ひとつが人間論で、もうひとつが自己論だ。
人間論は、人間についての講義。
これはレム版『利己的な遺伝子』といった感じで、人間が進化によって獲得した知性について語る。
自己論は、GOLEM自信についての講義。
人類よりも上位の知性であるGOLEMが、さらなる知性の高みについて語る。
ええと、あんまり自信がないんだけど、この作品のテーマを要約するとこういうことになるなんじゃないかな。
――人類の知性は進化によって獲得したものであり、それゆえの限界があり制約もある。
進化を経験しなかったコンピュータの知性には制約がないため、人類の知性を容易に超えるだろう。
そして、さらにその先へ上昇していく知性があるとしたら、いったいそれはどこへ向かうのか――。
とにかく、レムは自然科学にも人文科学にも精通する膨大な知識をたくわえていて、おまけにとてつもなく頭の切れる人なので、でっち上げのはずの学問が洒落になっていないのだ。
イミテーション・ダイアモンドをあまりにも精巧に作りすぎて、とうとう本物のダイアモンドよりも高値がついてしまった感じ。いや、こういう感覚はほかの本では味わえないだろうね。驚嘆するしかない。
あ、一応書いておくけど、「GOLEM XIV」以外の作品もなかなか面白いよ。
■満足度
(10)