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紀尾井ホール室内管第144回定期(2025年3月14日)

2025年03月14日 | コンサート

このオケの定期で初めての試みである演奏会形式のオペラに選ばれたのは、モーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」。指揮は首席指揮者のトレヴァー・ピノックだ。少し奥に下がったオケの前の空間とホール平土間通路を使った家田淳の演出は簡素ながら十分に立体的ドラマを表現した。何より気持ちよさそうに振るピノックの闊達な指揮がオケを沸き立たせそこに聴かれる多彩なオーケストレーションに天才の筆致を聞いた。この作品の特徴として重唱の美しさが挙げられることは多いがオケ伴も中々凄いことになっていて、単なる歌の伴奏にとどまらず歌以上にドラマを表現している箇所が沢山あったのだということに遅ればせながら気がつき聴きながら嬉しくなってきた。(人生はやはり短いな)この発見はピノックの絶大な力量に負うところが大きいと思う。配役には歌役者が揃った。フィオルディリージ役のマンディ・フレドリヒのちょと憂いを含んだ声質はこの役に最適だったがいささか低音が弱かった。ドラベッラ役の湯川亜也子の大層アグレッシーヴな歌と演技は全体を強く牽引した。KCOとは2度目の共演となるデスピーナ役のラウリーナ・ベンジューナイデの小回りの効く歌と達者な演技はスパイスのよう、 そしてドン・アルフォンソ役の平野和は堂々たる美声で実力を発揮し全体を締めた。グリエルモ役のコンスタンティン・クリメルは素直な歌唱で好感が持てた。フェランド役のマウロ・ペーターもKCOとは2度目の共演になるが、前回は鮮やかだったが今回は不調なのか高音が苦しかった。臨時編成の紀尾井ホール室内合唱団は人数は少ないが歌唱力は絶大だった。通奏低音ペドロ・ベリソのアドリブが随所で効果を発揮して人選の巧みさを感じさせた。総じて演奏会形式のオペラの利点が最大限に発揮され、3時間半があっと言う間の楽しい公演だった。


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