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東響第99回川崎定期(3月31日)

2025年03月30日 | 東響
東響初登場の指揮者オスモ・ヴァンスカがどんな音楽を聞かせてくれるか楽しみに出かけた今シーズン最終の定期である。ニールセンの序曲「ヘリオス」OP.17、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ハ短調OP.37、そしてプロコフィエフの交響曲第5番変ロ長調Op.100というプログラム。不思議なプログラムではあるが、あえて言えばどの曲も肯定的な雰囲気に終わるということか。きな臭い今のご時世ではこれは大いに聴く者の心のなぐさみになる。まずは明快な音色にこの作曲家を強く感じるニールセンの序曲で気持ちよく始まった。この曲はデンマーク放送では新春を寿ぐ音楽だったそうだ。ヴァンスカの堅固で迷いのない音楽が心地よい。続いてピアノにイノン・バルナタンを招いたベートーヴェンのコンチェルト。これは正統的なベートーヴェンと明らかに異なる音楽だが、決して本道を外れていないとろが素晴らしい。力強い魂の入った音も、羽毛のような軽やかでしなやかで優しい音も自由に使いこなす自由闊達なピアニズムには全く恐れ入った。色彩感を落としてまるで後年のキース・ジャレットのような雰囲気まで醸し出しつつ新たなベートーヴェン像を提示したと言ったら大袈裟だろうか。オケはこの曲にだけピリオド系のティンパを使用して鋭角的なアクセントを添えるが、そのオケとの呼応も素晴らしく夢のような35分だった。いつまでも終わらない大きな拍手にアンコールはJ.S.BachのBWV208からアリアがしっとりと心を込めて、そしてちょっとクールに弾かれた。最後のプロコフィエフはヴァンスカの独壇場だった。なによりも明快で隈取のハッキリした迷いの一切無い骨太なプロコフィエフだった。振りは多少アマチュア的ではあるのだが、出てくる音楽は決してそんなことはない。強弱の対比を明らかにしつつオケを完璧にコントロールし、それが独特の奥行きを付け加えていた。東響の強靭な弦とニュアンス豊かな木管、力強い金管、強力な打楽器群が総力で立ち向かった演奏だった。この3月で退任するフルート首席の相澤政宏のソロがあらゆるところで光っていた。

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