桂冠名誉指揮者のチョン・ミョンフンを迎えて、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」のコンサートスタイル・オペラである。同じメンバーで富山での公演もあった。演奏は極めて立派な出来であった。何よりも歌手陣の充実が今回の成功の鍵であった。こうしたメンバーを揃えたチョンの酔眼は素晴らしい。トリスタンにアンドレアス・シャーガー(代役)、イゾルデにイルムガルト・フィルスマイアー、マルケ王にミハイル・ぺトレンコ、クルヴェナールにクリストファー・モールマン、ブランゲーネにエカテリーナ・グバノヴァ、それに日本から大槻孝志(メロート)、望月哲也(牧人・水夫)、成田博之(舵手)と旬の歌手達が、それぞれに舞台上のオケの大音量を物ともせずに素晴らしく充実した歌声を披露した。とりわけシャーガーの極めてスタイリッシュでエネルギッシュなトリスタンと、ノーブルなぺトレンコのマルケ王が印象に残った。一方フィルスマイアーのイゾルデは、強靭な声質で明確な役作りであったが、全曲を結ぶ「愛の死」の歌唱がいささか滑らかさを欠き、チョンの音楽との齟齬を感じたのが残念であった。東フィルは、最初から尋常でないのめり込み方で長丁場の先が案じられたが、5時間を一瞬たりともだれる事なく、チョンの鋭くドラマの内実に切り込む音楽の真髄を捉えて、それを表現し尽くした。これはオケとして一昨年の新国の「トリスタン」(大野和士指揮)をはるかに凌駕する驚異的な出来だった。
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