すっかりこの夏至の時期の初台恒例になった山形交響楽団の東京公演である。今年は常任指揮者阪哲朗の指揮だ。スターターは管楽器やティンパニも含めてピリオド様式によるモーツアルトの二曲。まずは歌劇「魔笛」序曲 K.620、そしてミサ曲ハ長調「戴冠式ミサ曲」 K.317。スッキリ爽やかに、音を大切に紡いだ純正な演奏が実に快く心に響いた。ミサ曲には老田裕子、在原泉、鏡貴之、井上雅人ら四人のソリストと山響アマデウスコアが加わった。阪がプログラムに寄せた「エッセイ」に書いているように、一晩のコンサートの真ん中に「ミサ曲」を埋め込んだプログラムは現代では珍しい。後半はこれも極めて珍しいベルリン・フィルの首席指揮者として知られるあのアルトウール・ニキシュ作曲の「ファンタジー」。これは当時大ヒットしたV.E.ネッスラー作曲の歌劇「ゼッキンゲンのトランペット吹き」の中の魅力的なメロディを紡いだポプリだ。まるでオペレッタでも聞いているような美しくロマンティックな雰囲気が会場に漂った。(このオペラ全曲は山響により2006年に日本初演されたそう)音楽史上の有名人ながらその片鱗にはなかなか接し得ないニキシュの思いもよらない魅力に興味が掻き立てられた。最後はバイオリンに辻彩奈、チェロに上野通明を迎えてブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調作品102だ。ピタリと息の合った若い二人による何とも瑞々しいブラームス。決して重くならない、風通しの良いキレキレの阪の合わせが彼らの若さを美しく引立てる。重厚で渋いというブラームスの既成概念とは正反対の演奏だったが、こんなのも有りかなと思いつつとても気持ちよく聞いた。盛大な拍手にアンコールは「魔笛」に戻ってパパゲーノのアリアがバイオリンとチェロのデュオでチャーミングに奏され楽しくお開きになった。
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