直前に2029年迄の任期延長が報じられた常任指揮者沖澤のどかとチャイコフスキーコンクールの覇者上原彩子の二人が登場した真夏の定期だ。京都コンサートホールはほぼ満員の入りでこの二人の人気の程がうかがわれた。一曲目はプロコフィエフ作曲のピアノ協奏曲第3番ハ長調作品26。上原はまるでアスレチック選手のような身体能力を存分に発揮して難所を鮮やかに弾き切った一方、プロコフィエフ独特の冷たく澄んだ叙情をも見事に表出させ、その技量の幅広さを存分聴かせてくれた。寸分の狂いもない沖澤の挑戦的な合わせも完璧で見事の一語に尽きる共演だった。盛大な拍手にアンコールはドビュッシーの「ゴリウオークのケークウオーク」。音色の対比が実にチャーミングで素敵だった。休憩を挟んでストラヴィンスキー作曲のバレエ組曲「ペトルーシュカ」(1947年版)。ロマン主義と新古典主義の折衷的な様式を持つこの曲を、沖澤は見事に振り分けて料理した。その指揮振りは一言で「鮮やか」に尽きる。無駄のない判り易い指揮が京都市響からにニュアンスと色彩感に富んだ音を次から次へと引き出してゆくその爽快感は只事ではなかった。これは相思相愛の組み合わせならではの音楽作りのように聞いた。二曲とも酷暑を払いのけるような快演で会場は大沸きに沸いたのは良いのだが、近くの席で発せられる罵声のような「ブラボー!」には耳が耐え難く早々に席を後にした。
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