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まさおレポート

さすが村上春樹、記号士はハッカーの文学的飛躍だ いやAIの予兆か

追記 《ブレイン・ウオッシュ》は脳内ビッグデータでシャフリングは生成AIのことを指しているように読めてくる。これが文学の予知性か。曖昧に書いておけばどうとでも好きに読めると反論ももっともだがどう読むかはやはり読み手に依存する。
 
初稿
 

「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を三回目になるが読み返しているとなかなか予言的な文章に出会う。この本は1985年に発行されているが当時は電電公社が民営化した年でインタネットも出現していない、1988年にようやくアメリカで商用インターネットが始まるのでまして1985年にハッカーなる言葉があったかどうか。

さすが村上春樹、近未来を垣間見ている。記号士はハッカーの文学的飛躍だと思って読むと面白い。

「私のかかわった限りではこのレベルで記号士の侵入を受けた例は一度もありません」
「というと一次転換《シングル・トラップ》で十分とおっしゃるわけですな?」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」

「シャフリングです。私はシャフリングのことを言っておるですよ。私はあんたに洗いだし《ブレイン・ウオッシュ》とシャフリングをやっていただきたい。そのためにあんたを呼んだ。洗いだし《ブレイン・ウオッシュ》だけならとくにあんたを呼ぶ必要はないです」
「わかりませんね」と私は言って脚を組みかえた。「どうしてシャフリングのことを御存じなのですか? あれは極秘事項で部外者は誰《だれ》も知らないはずです」
「私は知っておるです。『組織《システム》』の上層部とはかなり太いパイプが通じておりましてな」
「じゃあそのパイプを通して訊いてみて下さい。いいですか、今シャフリング・システムは完全に凍結されています。何故だかはわかりません。たぶん何かのトラブルがあったんでしょう。しかしとにかくシャフリングは使ってはいけないことになっているんです。もし使ったことがわかれば懲罰程度では済まないでしょう」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」


 要するにこのギザギザの面をぴたりとあわせないことには、でてきた数値をもとに戻すことは不可能である。しかし記号士たちはコンピューターから盗んだ数値に仮設ブリッジをかけて解読しようとする。つまり数値を分析してホログラフにそのギザギザを再現するわけだ。それはうまくいくときもあるし、うまくいかないときもある。我々がその技術を高度化すれば彼らもその対抗技術を高度化する。我々はデータを守り、彼らはデータを盗む。古典的な警官と泥棒のパターンだ。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」


 記号士たちは不法に入手したデータを主として情報のブラック・マーケットに流し、莫大な利益を得る。そしてもっと悪いことには彼らはその情報のうちのもっとも重要なものを自分たちの手にとどめ、自らの組織のために有効に使用するのである。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」上巻 メモ

「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」下巻 メモ - 団塊亭日常

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