自動運転の弱点は 複数ある。 「ハッキングの恐れが高まること」「通信不調の重大性が高まること」「製造コストが高くなりやすいこと」「AI技術の対応力の課題」「手動運転への委譲の不安要素」「社会受容性の向上」など。
自動運転の展開と通信インフラの関係でクリティカルな課題は次のようなものかと思う。(他にもあると思うが)
1. 低遅延通信
自動運転車はリアルタイムで膨大なデータを処理し、即時の意思決定を行う必要があり超低遅延の通信が求められる。
- 緊急ブレーキや回避動作:ミリ秒単位での反応が必要です。
- 車車間通信(V2V)や路車間通信(V2I):リアルタイムの交通情報やインフラ情報を共有するため。
2. 高信頼性と可用性
通信途絶や遅延が発生すると、車両の制御に支障をきたす
- 通信ネットワークの冗長性:通信のバックアップ経路を確保する。
- カバレッジの確保:全ての走行可能エリアで安定した通信が可能であること。
3. データセキュリティとプライバシー
4. 通信規格の統一
5. 通信インフラの整備コスト 5Gネットワークの展開や専用通信設備の設置はコストがかかる。
現在の日本の現状から実用になりそうなものは道路上の信号灯や電柱を利用して自動運転の通信網が成り立つのかという問いを考えて見る。
信号灯はすでに道路網の至る所に設置されているため、これを通信インフラとして活用することで新たなインフラ整備のコストを削減できます。日本国内の交通信号灯の総数について、一般的な情報として、日本には約20万本以上の交通信号灯が設置されている。
日本国内の電柱の数については、2021年のデータによると約3,500万本存在するとされている。(いずれも詳細な数は調査が必要)
NTT東日本とNTT西日本は、全国に整備された電柱約1186万本、通信ケーブルを通す地下パイプ(管路)約62万キロメートルなどの線路敷設基盤を引き継ぎ、その上で設備や サービスを提供している。2023年3月時点でも2社で国内の電柱の約35%を保有し、光回線シェアは約74%ある。
信号灯や電柱が有力な自動運転の通信インフラとなりうるが次の課題が考えられる。
課題
- アップグレード:現在の信号灯は基本的に視覚信号のみを提供しているため、V2I(Vehicle-to-Infrastructure)通信を可能にするためには、信号灯に5GやDedicated Short-Range Communications (DSRC)を追加する必要がある。電柱も同様だ。
- データの形式やプロトコルを標準化し、自動運転車がどの地域でも同じように受信・処理できるようにする必要があり
- 地域差や予算の制約などの問題。信号灯は国交省、電柱は電力会社やNTTが管掌している。
- 従来以上のメンテナンスが必要となり、そのための運用会社やコストや技術的サポートも考慮する必要がある。
具体的な実現例と取り組みの参考
- ニューヨーク市:一部の交差点で信号灯にV2I通信機器を設置し、交通情報を自動運転車に送信する試みが行われている。
- シンガポール:スマートシティの一環として、信号灯にセンサーや通信機器を組み込み、リアルタイムで交通情報を収集・提供するプロジェクトが進行中。
信号灯や電柱から基幹回線への通信容量増大にはどのような対策が必要か。
信号灯や電柱から基幹回線へのデータ伝送に多くのデータを高速かつ効率的に伝送する必要があり、かつ各信号灯や電柱が複数の経路でデータを送信できるようにすることで、ネットワークの冗長性とスループットを向上させる。そのためには現在都市部でほぼ100%の敷設率と言われているが自動運転では経路の冗長性や安全性からもさらに大量の光ファイバーケーブルの増設が必要ではないか。地方では尚更だ。
信号灯や電柱から基幹回線への通信容量増大に対する対策は、多岐にわたる技術とインフラの改善が必要だが、何より重要なことは自動運転システムに参入する通信各社が信号灯や電柱までの光ファイバー敷設を制限なく行うことが最大重要課題だ。そのためには現在NTTが占有するとう洞を道路占有権をてこに公共化することが何より重要と考える。
NTT法廃止議論の論点は現在NTTが占有する「とう洞」内の光ファイバーを各社がいかに自由に使えるかであり、とう洞内の空間利用権を無体財産として公共化することを提案します。
総務省のデータによると、2020年時点で日本の光ファイバー(FTTH)の普及率は70%以上に達している、特に、東京、大阪、名古屋などの主要都市では、FTTHの普及率が非常に高く、多くの家庭や企業が光ファイバー回線に接続されている。
NTT東日本とNTT西日本は、都市部を中心に光ファイバーネットワークの整備を積極的に進めてい東京23区内のほとんどのエリアで光ファイバー回線の利用が可能です 。さらに、KDDIやソフトバンクも都市部での光ファイバー敷設に注力しており、普及率の向上に寄与している。
しかし自動運転では必要な光ファイバー需要は安全性の観点から信号灯や電柱状に蜘蛛の巣状に敷設する必要があり、自動運転開始時には各社で敷設競争が始まるのではないかと推測します。どの程度の光ファイバーが必要なのかは専門家の詳細な検討を待ちたいと思いますがいずれにしても現在の本数では囲い込みや排他的な競争が始まることは避けられないでしょう。