やっぱりねぇ、そうなのねぇ、しんどいねぇ、未練だねー♪ 「大井追っかけ音次郎」(すみません、JASRAC不許可です)
GS藤沢の建て替え、全社が辞退…耐震偽装(3月18日 読売新聞)
耐震強度偽装事件で、耐震強度が最も低く基準の15%しかない神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ(GS)藤沢」(地上10階、地下1階)の再建事業について、マンション住民が協力を依頼したゼネコンや不動産、住宅会社計5社すべてが辞退していたことが17日、わかった。
そうだろうなと思います。住民の方には誠にお気の毒と言うしかないのだけれど。
昨年1月のエントリーで、こんなことを書きました。
余談だが、年末のNHK番組で、GS住吉だったか住民が集まって、再建プランを協議しているシーンを見た。再建マンションは各戸が少しづつボリュームを落として、捻出した容積分で新規分譲する住戸を確保し、その売却益を建設費に充て、各人の持ち出しを少しでも軽減するという青写真を描いていた。しかしこのようないわくつきのマンションを買う人はいるのだろうか?もし優良デベロッパーに引き継がれて、再建なったとしても、未曾有の危機に遭遇し、住民同士が固い団結と連帯を持つようになったであろうマンションに、後からのこのこ入っていくのは、誰しもためらうんじゃないだろうか・・・。
今回のGS藤沢は、ゼネコン・デベ・住宅メーカーの5社のうち、オリエンを受けた段階でまず3社が降り、プランを出した2社が最終的に辞退したということのようです。ビジネスですから折り合わないということは当然あるし、それは仕方がない。ただ、建設不況の昨今、中小物件やマンションなどには従来見向きもしなかった大手ゼネコンが、同業者が「え、こんな案件まで」と思うようなものまで遮二無二獲りに来ているのに、どこも手を出さないというのは異様です。
たしかに経緯が経緯ですから、まさか手抜きするわけにいかない。世間もメディアも注目するし、建設中も住民全員が現場でビデオカメラでも回しかねませんから、こんなややこしい物件に旨みはないどころか、面倒くさいと考えて、二の足を踏んだのかもしれませんね。現在も売れ残り住戸にヒューザーの所有権アリという懸案も存在します。
辞退した業者の説明は、金額が折り合わないことと、「周辺のマンション供給数も上がってきている」ということだったようです。これは言葉を慎重に選んでいますが、要は「分譲部分は売れませんよ」と言っているわけです。
再建にあたっては、住民は二重ローンになるわけですから、追加負担を減らす為の方策として、分譲戸を造って売却益を充てたいというのはわかるのですが、これをアテにしないがいいのではないかと思うのです。だって普通、こんないわくつきのマンション買わないでしょう、どう考えたって。一生に一度かもしれない高額商品ですよ。そこしかないならいざ知らず、他にいくらでも新築マンションがあるのに、わざわざ一度ミソついたもん買わんでしょう。それは、200円の雑誌を買うときも、平積みの下のものを取り出すという、日本人が商品の処女性にこだわるといった理由ではありません。集合住宅というものにつきまとう宿命的な困難さを想像すればわかることです。
重松清の『見張り塔からずっと』という初期の中編小説集の中に、「カラス」という一編があります。これはすっごく怖い話です。
後になってみれば、結果的に相場もローン金利も最高値の時に焦って買ってしまったマイホーム。「ツインヒルズ」は主人公の夢の象徴だったが、バブルがはじけて状況は一変する。販売業者に間違いなく延伸すると囁かれていた私鉄の支線の話はなくなり、もう1棟の建築計画も中止された。都心から近い場所に続々と安い物件が出てきたからである。「ツイン」でなくなった片翼だけの超郊外の分譲団地から、夫はバスも含めて3時間近くかかる通勤に耐え、妻は自分たちより後に、遙かに良い条件のマイホームを手に入れた知人の転居ハガキを見ては我が身の不幸を呪い、夫を詰り、陸の孤島で砂を噛むような思いで暮らしている。「どうしてこんな物件買っちゃったんだろう・・・」手放した隣人の物件が1千万円以上安く売り出されていることを新聞の折り込みで発見したときには、それをビリビリに破りながら、声を上げて泣いた。そんなときに、「子どもを自然の中で育てたい」と完全にアウトオブファッションになったはずのツインヒルズを中古で購入した奇特な家族が引っ越してきた。あることをきっかけに、この家族への先住民の凄惨ないじめが始まる。やがて悲劇的な事件が起きて、この家族はツインヒルズを去っていくというストーリー。
「マンション耐震偽装事件」という未曾有の事態に見舞われ、GS藤沢の住民たちは団結して、この危機に立ち向かってきたと思います。でもそんな特殊なコミュニティーに後から入っていく勇気は、私にはありません。売りやすくするために、分譲戸を周辺相場より極端に価格を低めに設定するというのも、得策でない。あまりインセンティブにならないどころか、心理的な軋轢を生む可能性が高い。先住民の中にも色んな人がいるし、どんな感情を持つかわからないから。まあ、その一部をエンドユーザーではなく、業者に売って賃貸にするとか、薬局などの店舗にするなどの手はあるかもしれません。でも市場性がどのくらいあるかは、GS藤沢のロケーションがわからないので何ともいえませんが。
現実的には、再建築コストを圧縮するには劇的にボリュームダウンするしかないような気がします。75平方㍍とか。或いは、全戸同じ仕様にして、間取りもなるべく統一するといった経済設計を図るなど、スケルトンの充実と引き替えに、オーダー的要素を徹底的に排していくことです。分譲をアテにせずに追加負担を減らすにはそれくらいしか思いつきません。ヒューザーの「100平方㍍超の挑戦」に惹かれたからこそ、これを買ったのだとGS藤沢の住民は叫びたいでしょう。それに合わせて家具も買ったりしているかもしれない。でもこの状況では「再入居に必要な間取りとして3LDKで100平方メートル以上」という条件にこだわらずに、まずは再建することを優先したらどうでしょうか。でも、多くの住民はこのあたりのことを理解しているのでしょうが、中には「やだねったら、やだねー♪」と頑ななわからずやがいるんですね、多分。
だからマンションは難しいのです。
GS藤沢の建て替え、全社が辞退…耐震偽装(3月18日 読売新聞)
耐震強度偽装事件で、耐震強度が最も低く基準の15%しかない神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ(GS)藤沢」(地上10階、地下1階)の再建事業について、マンション住民が協力を依頼したゼネコンや不動産、住宅会社計5社すべてが辞退していたことが17日、わかった。
そうだろうなと思います。住民の方には誠にお気の毒と言うしかないのだけれど。
昨年1月のエントリーで、こんなことを書きました。
余談だが、年末のNHK番組で、GS住吉だったか住民が集まって、再建プランを協議しているシーンを見た。再建マンションは各戸が少しづつボリュームを落として、捻出した容積分で新規分譲する住戸を確保し、その売却益を建設費に充て、各人の持ち出しを少しでも軽減するという青写真を描いていた。しかしこのようないわくつきのマンションを買う人はいるのだろうか?もし優良デベロッパーに引き継がれて、再建なったとしても、未曾有の危機に遭遇し、住民同士が固い団結と連帯を持つようになったであろうマンションに、後からのこのこ入っていくのは、誰しもためらうんじゃないだろうか・・・。
今回のGS藤沢は、ゼネコン・デベ・住宅メーカーの5社のうち、オリエンを受けた段階でまず3社が降り、プランを出した2社が最終的に辞退したということのようです。ビジネスですから折り合わないということは当然あるし、それは仕方がない。ただ、建設不況の昨今、中小物件やマンションなどには従来見向きもしなかった大手ゼネコンが、同業者が「え、こんな案件まで」と思うようなものまで遮二無二獲りに来ているのに、どこも手を出さないというのは異様です。
たしかに経緯が経緯ですから、まさか手抜きするわけにいかない。世間もメディアも注目するし、建設中も住民全員が現場でビデオカメラでも回しかねませんから、こんなややこしい物件に旨みはないどころか、面倒くさいと考えて、二の足を踏んだのかもしれませんね。現在も売れ残り住戸にヒューザーの所有権アリという懸案も存在します。
辞退した業者の説明は、金額が折り合わないことと、「周辺のマンション供給数も上がってきている」ということだったようです。これは言葉を慎重に選んでいますが、要は「分譲部分は売れませんよ」と言っているわけです。
再建にあたっては、住民は二重ローンになるわけですから、追加負担を減らす為の方策として、分譲戸を造って売却益を充てたいというのはわかるのですが、これをアテにしないがいいのではないかと思うのです。だって普通、こんないわくつきのマンション買わないでしょう、どう考えたって。一生に一度かもしれない高額商品ですよ。そこしかないならいざ知らず、他にいくらでも新築マンションがあるのに、わざわざ一度ミソついたもん買わんでしょう。それは、200円の雑誌を買うときも、平積みの下のものを取り出すという、日本人が商品の処女性にこだわるといった理由ではありません。集合住宅というものにつきまとう宿命的な困難さを想像すればわかることです。
重松清の『見張り塔からずっと』という初期の中編小説集の中に、「カラス」という一編があります。これはすっごく怖い話です。
後になってみれば、結果的に相場もローン金利も最高値の時に焦って買ってしまったマイホーム。「ツインヒルズ」は主人公の夢の象徴だったが、バブルがはじけて状況は一変する。販売業者に間違いなく延伸すると囁かれていた私鉄の支線の話はなくなり、もう1棟の建築計画も中止された。都心から近い場所に続々と安い物件が出てきたからである。「ツイン」でなくなった片翼だけの超郊外の分譲団地から、夫はバスも含めて3時間近くかかる通勤に耐え、妻は自分たちより後に、遙かに良い条件のマイホームを手に入れた知人の転居ハガキを見ては我が身の不幸を呪い、夫を詰り、陸の孤島で砂を噛むような思いで暮らしている。「どうしてこんな物件買っちゃったんだろう・・・」手放した隣人の物件が1千万円以上安く売り出されていることを新聞の折り込みで発見したときには、それをビリビリに破りながら、声を上げて泣いた。そんなときに、「子どもを自然の中で育てたい」と完全にアウトオブファッションになったはずのツインヒルズを中古で購入した奇特な家族が引っ越してきた。あることをきっかけに、この家族への先住民の凄惨ないじめが始まる。やがて悲劇的な事件が起きて、この家族はツインヒルズを去っていくというストーリー。
「マンション耐震偽装事件」という未曾有の事態に見舞われ、GS藤沢の住民たちは団結して、この危機に立ち向かってきたと思います。でもそんな特殊なコミュニティーに後から入っていく勇気は、私にはありません。売りやすくするために、分譲戸を周辺相場より極端に価格を低めに設定するというのも、得策でない。あまりインセンティブにならないどころか、心理的な軋轢を生む可能性が高い。先住民の中にも色んな人がいるし、どんな感情を持つかわからないから。まあ、その一部をエンドユーザーではなく、業者に売って賃貸にするとか、薬局などの店舗にするなどの手はあるかもしれません。でも市場性がどのくらいあるかは、GS藤沢のロケーションがわからないので何ともいえませんが。
現実的には、再建築コストを圧縮するには劇的にボリュームダウンするしかないような気がします。75平方㍍とか。或いは、全戸同じ仕様にして、間取りもなるべく統一するといった経済設計を図るなど、スケルトンの充実と引き替えに、オーダー的要素を徹底的に排していくことです。分譲をアテにせずに追加負担を減らすにはそれくらいしか思いつきません。ヒューザーの「100平方㍍超の挑戦」に惹かれたからこそ、これを買ったのだとGS藤沢の住民は叫びたいでしょう。それに合わせて家具も買ったりしているかもしれない。でもこの状況では「再入居に必要な間取りとして3LDKで100平方メートル以上」という条件にこだわらずに、まずは再建することを優先したらどうでしょうか。でも、多くの住民はこのあたりのことを理解しているのでしょうが、中には「やだねったら、やだねー♪」と頑ななわからずやがいるんですね、多分。
だからマンションは難しいのです。
突然のコメント失礼いたします。
わたしの住宅関係サイトで、
こちらの記事を紹介させていただきましたので、
ご連絡させていただきました。
該当記事は
http://blog.livedoor.jp/goodmyhome21/archives/53260326.htmlです。
どうぞこれからもよろしくお願いいたします^^
私の住むマンションもなかなか難しい問題がいま、噴出しています。
共同生活とは、リスクを共有する運命共同体なのかもしれません。
分譲マンションに住んだことのない私が、生意気なことを書きましたが、管理組合での活躍をステップに選挙に打って出られて、マンション問題を知悉されておられるtakeyanさんにコメントしていただいたのは面映ゆいのですが、色んな人がいるという集合住宅の難しさは想像できます。