音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

選挙に強い人

2010-07-04 14:03:45 | 時事問題
最近思うんですが、選挙に強い人というのは、実は最も政治に向かないんじゃないかと。自治会の会費を100円上げる案件でさえ、持ち回りで役員を担っただけの、ごく普通の人たちが色んな資料を作成し、事前に根回しをしながら、集団の合意形成に手を尽くしています。しかし、このたびの消費税10%をめぐる首相の拙劣な言動を見ると、本当に政治家のレベルの低さに嫌気がさしてきます。

永田町には厳然たるヒエラルキーが存在します。衆議院議員>参議院議員、小選挙区選出>比例代表選出という力関係で、選挙区を制した衆議院議員がデカイ顔をすることになります。俗にいう当選回数至上主義というのは単なる年功制ではなく、選挙に強い奴が一番エライという体育会的意味合いを孕んでいます。自分の選挙に心配がないから他人の応援にまわれるし、周囲から一目置かれるというわけです。結果的に選挙に強い人が有力政治家として要職に就くのですが、仲間がことごとく討ち死にするような逆風下でも勝ち上がれるかどうかというのが、その判断基準になると思います。

昨年の衆議院選挙では、森、小泉(進次郎)、安倍、福田、麻生の誰一人として選挙区で負けていません。進次郎以外は「上がり」と見られ、イキのよい対抗馬をぶつけられたのにもかかわらず、それでも負けないしぶとさを持っており、それくらい強固な地盤があるから首相に登りつめることが出来たともいえます。

民主党でいうと、大惨敗した2005年の郵政選挙において、比例復活でなく小選挙区当選した人が強い人でしょう。当時の党首・岡田克也や小沢一郎を除いた以下のような面々です。

菅直人(首相)

前原誠司(国交相)

野田佳彦(財務相)

枝野幸男(幹事長)

仙谷由人(官房長官)

古川禎久(官房副長官)

【番外編】
河村たかし(名古屋市長)

いずれも現在の政権で要職を占めています。樽床国対委員長はこの選挙で落選していますから、代表選に立候補するというトリッキーな行動に出なければ、今のポストは得られなかったでしょう。

その中でも、菅直人と前原誠司という二人の政治家が、現代日本において選挙のチャンピオンといえるのではないでしょうか。世襲政治家でなく徒手空拳で野党時代に磐石な地盤を築いたからです。でも、私はこの二人は中身のなさという意味でも双璧ではないかと思っています。

菅直人唯一の功績としてあげられる厚生大臣時代の薬害エイズ問題は、実は枝野幸男がやった仕事であり、ボスの菅大臣に手柄を付けて上げたことは知られています。あとは野党党首として無駄に攻撃的な揚げ足取りと、時の為政者をくさす一口コメント以外は特筆すべき政治業績が思い当たらない。逆に山崎養世という怪しげなブレーンの提唱する「高速道路無料化」に簡単にのせられたことや、今回の消費税の持ち出し方と、支持率急降下後の後出し発言(低所得者還付等)など、およそ見識のある人物とは思えず、一言でいうと只のポピュリストです。

前原誠司も同様で、党首時代の永田メール事件は云うに及ばず、国交相に就任してからの八ツ場ダムやJAL問題を混迷させた元凶ともいわれています。たしかに、いずれも難易度の高いイシューではありますが、見識がないのならば、自己の功名心を優先させず、専門家にレクチャーを受けて判断し、間違っていれば軌道修正すればいいのですが、つまらないプライドと自説に固執するあまりにドツボにはまってしまうというパターンに終始しました。

政治家というのは、自分の名前を10万人の人に書いてもらうという異常な稼業です。投票所のポスターで直前に入れる候補者を決める人が多いのも現実ですから、つるんとしたマスクが望ましいし、さらにイケメンならばTV映えもするし、ご婦人方の支持層も広がるでしょう。前原誠司は地元の京都では稲盛翁の超お気に入りだそうですが、地盤を築くためには、地元の有力者に好かれる爺殺しの資質も重要です。

政治家は強烈な自己顕示欲や出世欲の持ち主でないと、務まらないような気がします。小田嶋隆氏が「ツイッターのスターには躁側の人間が多い」と喝破していましたが、「私を見て!注目して!」というツイッターは政治家との親和性が極めて高いツールだといえます。ツイッターで云うと、私も何人かフォローしていますが、政治家はかなりの確率で一般素人にもフォローを返してきます。(おそらく常時閲覧するTLとは別に管理しており読んじゃいないでしょうが)やはり人気商売の大変さを感じるところでもあります。

地元のわからず屋やネット上の粘着系など、様々な有権者をうまくいなし、一方では何処に出かけても「やあやあやあ」と愛想をふりまくというのは、云っては失礼だけど、頭のネジが2、3本外れていないと出来ない稼業だと思います。こういうタフさというのは、外交などでは有効です。キム・ジョンイルやプーチンといった得体の知れない外国の首脳と臆せず渡り合うには真面目人間ではダメで、胆力や、ある種突き抜けたキャラと強靭な精神力が必要です。逆に、選挙に強い人は、地道に様々な政治課題に取り組んでいくというのが、最も不得手な人種ではないかと。

日本という国は、ここ40年ほどの間、優秀な人間は経済界か官界に進み、政界には碌な人材が行かなかったという身も蓋もないことをいう人がいます。もしそうだとしたら、私はそろそろ不毛な官僚叩きはやめて、彼らの力を引き出すシステムを整えるべきだと考えています。モチベーションが上がらないから、既得権益やポジションをただ守ろうという方向に流れるのであって、意欲的に仕事に取り組んでいれば、つまらないことを考えなくなるというのは、民間企業でも同様でしょう。

政治家とはある意味、かーなーり特殊でスーパーな人たちであり、我々有権者が選んだといわれても、正直ピンと来ないほど遠い存在ですが、私にとってはむしろ官僚の方がオラが村から出たという実感があります。自分たちと机を並べた同級生や、新卒で苦楽を共にした中からも転職で相当数の知人が官僚(国家、地方)になっています。彼らの能力や、どういう動機で公務員になり、どんな志と思いで仕事をしているかを日頃から聞いていますから、身近なのです。もちろん官僚は選挙の洗礼を浴びないので、「我々の代表」と呼ぶには無理がありますが、「政治主導」というスローガンで、官僚に仕事をさせない民主党政権に明日はないような気がしています。


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