音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

男性版『負け犬の遠吠え』はないのか

2006-09-06 01:11:29 | 映画・ドラマ・音楽
今日は久々に22時前に帰宅できたので、ガイアの夜明けで地方自治体破綻問題でも見ようと思っていたのに、ついCXのドラマを最後まで鑑賞してしまいました。題して『結婚できない男』。TVドラマにはとんとご無沙汰で疎いんですが、会社の同僚(35才もちろん独身)がこれにはまっていて、やたら「面白い、よく出来てる」と絶賛していたので、存在は知っていました。

つい先日も、阿川佐和子と爆笑問題が司会の日曜夜の情報番組に、例の自民党の世耕議員出演していたのを見た後、チャンネルをそのままにしていたら、流れで「現代男性お一人様事情」というようなレポートが放映されていました。これはドラマの番宣も兼ねていたのでしょう、40代独身の空間プロデューサーがクライアントの若い女性たちとレストランで食事をしたり、コンビニ店経営で店舗併用ビルの最上階に居を構え、高級外車4台を所有する男性のライフスタイルをカメラが追い、その結婚観を語らせたりしていたものです。「男性のお一人様」は、いわゆる勝ち組に属する方が多いそうです。その定義づけはよくわかりませんが、一部では既に話題になっていて、トレンドとして要注目なんだそうです。

そういえば、男性版『負け犬の遠吠え』ってありませんよね。フィクション・ノンフィクション問わず、独身男性を考察した書物や論考の決定版ともいえるものは、まだ出ていないと思われます。(私が不勉強なのかもしれませんが)かの酒井順子女史は当時まだ未婚だったサーヤこと紀宮様を「最後の大物」として挙げていましたが、男性独身界でシンボリックな人物は誰でしょうか?

スポーツ界は総じて早婚とはいえ、松井秀喜(32才)はまだ若すぎます。まあ彼が10年後も未婚のままだったら考察の対象になるでしょうが。それから、女性には不自由しないはずの芸能界の大物は、かなり特殊なので参考にはなりません。例えば、前述のドラマに主演している売れっ子阿部寛も実生活でも独身の42才です。他にも織田裕二や平井堅など、適齢期であっても「そっち系」の趣味をお持ちの方も少なくないようで、微妙なところです。あの中田英寿なども同様の事情でしょうが・・・。なんか松本人志も違うしなあ。強いて挙げれば田中康夫ですが、もう50才ですから、さすがにトウが立っています。理想的には30代後半から40代前半ですが、適当な人が思いつきません。

『負け犬の遠吠え』は自己韜晦と含羞をまぶした酒井節が冴え、広く男性読者の共感をも呼んだ結果、ベストセラーになりました。そういう書き手が男性サイドにもいれば面白いのですが・・・。『もてない男』の小谷野敦氏のようなファナティックな「キモヲタ系」(失礼)の人でなく、一定以上のポピュラリティーがあり、バランス感覚を持って生き方を示せるスターやセンスのあるオピニオンリーダーが出てきたら、書いた物を是非読んでみたいと思っています。

年代を拡げてみると、独身の代表的な人物といえば、何といっても現首相(バツイチですが)でしょう。

小泉純一郎は独身の強みを最大限発揮した政治家といえます。それは何も世の大衆(おばちゃんたち)と寄り添ったという意味ではなく、もし彼に配偶者がいたら、昨年の郵政解散の断行のような唯我独尊はできなかったかもしれないなと。

「あなた、若い頃よく綿貫さんと飲みに行って、うちにも何回か連れて来てたじゃないの。刺客なんて立てちゃダメよ!」

なーんて奥さんから釘を刺されて萎えてしまったかもしれません。

あるベテラン政治記者が雑誌の座談会で、「小泉首相は独り身なので、思い立ったらすぐにポーンと外遊に行けちゃう。対して『佐藤栄作日記』を読むと、戦後最長の在任を記録した元首相でさえも、外遊の際に寛子夫人の機嫌をとるのにいかに神経をすり減らしていたかがわかる」と語っていました。奥さんの体調や気分、「何着ていこうかしら」というレベルだとは思いますが、意外にこういうのって煩わしいのです。仕事をするうえでは、ですが。この種のストレスからフリーでいられるのは断然有利だということです。

それから、休刊した『噂の真相』編集長兼オーナーだった岡留安則氏も独身です。彼の場合は「俺は雑誌と結婚したんだ」というのが口癖だったそうですが、タブーを怖れず挑戦する同誌の性格上、常に身の危険があり、実際暴漢に襲われたりもしました。「月夜の晩ばかりじゃないよ」と家族を持つ身で脅されたら、筆が鈍るのが普通でしょう。自分だけならともかく、妻子に危害や不利益が及んでしまうのは耐えられないことです。信念を貫き、作りたいものを作るため、リスクヘッジの意味での独身なのかもしれません。

文学でいうと、宮沢賢治をすぐに思い出します。なぜなら彼は独身どころか生涯に渡り童貞を貫いたといわれているからです。あまりにストイックに生きた彼は、その欲求が極限まで昇華した結果なのか、『銀河鉄道の夜』など他の誰にも真似のできない幻想的な物語を生み出しています。思索を深め、それを芸術の域に高めるには、家族は邪魔なのでしょう。

ドラマ『結婚できない男』で阿部ちゃん演じる桑野も、住宅設計家としては当代屈指の存在で、その才能は誰もが認め、手がけた作品の素晴らしさは若い女性のため息を誘います。しかし・・・。


自分がもし独身だったらと想像してみると(離婚して子供2人を妻が引き取ったということでもいいのですが)間違いなく好きなことしかしなくなるでしょうね。好きなとこに住んで、好きなものだけ食べて・・・。基本的にグータラなので、ゴロゴロしているのが大好きなのです。週末の休日のうち1日は家から一歩も外に出ないかもしれない。もう1日はゴルフでしょうね。会員権を買って、そのメンバーコースでラウンドしたあと、日が沈むまで芝の上からアプローチやパターの練習に明け暮れる。または自転車です。MTBの他にロード用も1台購入して、それを車に積んでひたすら遠出して乗り回すでしょう。

こういう生活は決して空想ではありません。子供がまだ小さくて妻が仕事に出ていない時分は、かなり長期間妻子が実家に帰省していたため、私は一人暮らしだったのですが、実際のところ、休日は大体こんなもんです。打ちっ放しを朝からはしごしたり、一日中本を読んだり、ネット巡回したり・・・。

そして金はアッという間になくなり、部屋はアッという間に汚れてしまう。要するに生活無能力者ですね。それ以外の何者でもない。

だから私は、仕事熱心でインテリジェンスも高く気配りもでき、経済的にも破綻しないどころか貯蓄をきちんとしている周囲の独身の人たちを、畏敬の念を持って眺めているのです。


何故か不覚にも『結婚できない男』を観て、涙が出てきてしまいました。身につまされるというか何というか・・・・トホホホ。国仲涼子の飼っているあの犬もいいですね。『盲導犬クイール』(映画でなく玉置浩二が盲人役のNHKドラマの方)を連想しました。目は見えるけど、行く先五里霧中のいい年した男女を導いてくれる存在なのでしょうか。来週も楽しみです。

独身のメリットばかり書いてきましたが、果たしてその弊害はあるのでしょうか。でも今日は眠いので、またのエントリーにします。


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3 コメント

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我が家もこのテレビの (ぽたこ)
2006-09-06 13:36:35
大ファンです。

ぱっとめは2枚目の阿部ちゃん、このドラマでの

役作りすごいですよね。

本当に気持ち悪い独身偏屈男に見えます。



このドラマにおける桑野のいいところは

彼自身がちっとも寂しそうに見えないことですね。

本当に1人の生活を楽しんでいるようにみえます。



我が家の息子は結婚できるかどうか

見た目よりも性格的に不安があるため

もしかしたら一生独身かもしれませんが

もしそうなら桑野のように自立した独身に

なって欲しいと切に願いながら息子と

一緒にみています。
Unknown (ソクラテス)
2006-09-07 00:34:25
 ある特殊な能力で飯を食っている上流階層にいる人社会的地位のある人たちは女性がほっておかないので、いつでも結婚できると思うんですが(でなければよっぽど女性の嫌われるような人なのかあるいわその道の人)



 問題は下流階層にいる人たちですよ、中流の丸の内OL風の負け犬の遠吠えどころじゃない、所得も金融資産もなく、資本家につかわれて生きている労働者ならまだいいのですが、能力がないとその市場からはきだされ、派遣待ちのホームレス予備軍で結婚できない人たちはたくさんいる。両親も高齢で両親の富もいつまであるかわからない。



今問題になっておるのはこのあたりなんでしょうね。



コメントありがとうございます。 (音次郎)
2006-09-09 09:58:38
>ぽたこさん、毎度です。



たいていの男は、私も含めて、「気持ちの悪い偏屈男」なのかもしれません。だから他人事じゃないと思ってしまうのでしょうか。



>ソクラテスさん、いらっしゃいませ。



男性お一人様現象は、恵まれている人なのにもかかわらず(またはそれゆえなのか)結婚へ淡泊な人を指しているのだと思いますが、ご指摘のような現在不遇をかこつている方でも、たとえ経済的な障害を解消したとしても、その心象はあまり変わらないような気がします。

「お金」も一つの要素ですが、それだけではない日本男性の変容があるのだと思います。

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