p3ぶろぐ おかわり : 糸井正和経済経営研究所

金融・経済・経営の幅広い分析をお届けします。身近な路地裏経済から陰謀渦巻く国際戦略まで、様々なハナシをお楽しみ下さい。

フォルダブル、折るだぶる

2019-04-30 01:02:03 | 企業・産業
今年(2019年)のスマホの“新機軸”はHuaweiとSamsungが先行するカタチとなった“折りたたみ型”
…なワケですが、後者のSamsungは「ムリが祟って…」という感じですネ。
1,980ドル(約22万円)という高価にも関わらず発売当日に売切れ!と話題になったものの、テスターから「その日のうちに壊れちまったぜ!」てなレポートが上がってしまいました。
The Wall Street Journalからは「ウチら、ベータテスターじゃないんだからサ(もっとマトモな端末に仕上げてから持って来いや)」と苦言を呈されてしまう有様。
分解記事を上げたiFixitに頼み込んで当該記事を取り下げてもらっているというコトは…ワタシは残念ながら読んでいませんが、よっぽど恥ずかしいトコロを指摘した記事であったのでしょうねぇ。
そうした右往左往するリスクを犯してでもGalaxy Foldを売ろうとしたのは、Huaweiに先行されることを、よほど恐れたのでしょう。

ネット界隈では「要らんだろ」的な否定的論調が強い折りたたみ型ですが、ワタシは肯定派です。
ポケットに突っ込んだり通話に使うには、コンパクトな方がいい。
一方でWeb見たり動画や書籍、漫画といったコンテンツ見たりする場合には、画面が大きな方がいい。
両方のニーズを満たすには、折りたたみ型というのは、悪くない選択肢だと思うのですネ。
値段とか耐久性とかいった問題が解決すれば、ですけど。

さて、スマートフォンの“新機軸”を打ち出す主体は、時を経て代わってきました。
世界初のスマホとされるのは米IBMの「Simon」ですが、タッチパネルでGUIという現在のカタチに近いのはシャープ「W-ZERO3」あたりが先駆者と言えるのではないでしょうか。「Simon」をスマホとするなら、我が国で全盛となったガラケーも十分スマホの範疇でしょう。その主役も“折りたたみ型”ですネ。
尤も世界的普及期に入ると、主役の座は米Appleの「iPhone」が占めることとなりました。そしてスマホの“カタチ”は最近まで同機種がリードしてきました。
これに対して韓国Samsungが2010年代後半から、有機ELの採用と狭ベゼル化やスクリーンエッジの2.5d処理で一躍、技術的に先行するコトとなったワケです。
しかし“折りたたみ”化で中国メーカーであるHuaweiの後塵を拝するカタチになると、そのまま先進的なイメージを失うことになりかねない、と同社は恐れたのではないでしょうか。

2010年代後半には中国メーカーがスマホ世界市場でシェアを伸ばしてきましたが、ソレは先進国でスマホ市場が成熟化する状況を受けて市場成長の主役が新興国になる中で、低価格を武器に当該地域で販売を伸ばしたことによるものです。
先日の「世界ふしき発見」でベトナム北部の山間地域に住む少数民族が取り上げられたトキ、現地の商業地域に置かれた中国OPPOのスマホの看板が映されました。我が国を含む先進国メーカーには、そんなトコでスマホを売るのはムリでしょう。LGが韓国におけるスマホ生産から撤退する状況を見る限り、Samsungにもソレが難しくなりつつあるコトが想定されます。
さらに技術的な面での先進性でも劣るというコトになると…
アプリやサービスを含めた“経済圏”を構築してブランドものとしての地位を確立しているAppleはともかく、Samsungは我が国メーカー同様、市場から駆逐されるコトになりかねません。
そりゃあ、あせりもしようというモノでしょう。

しかしそのあせりは結果として、イメージダウンに繋がりかねない“失態”を招きました。
米中経済戦争がこのまま収束に向かわずに“中国包囲網”が形成されて中国スマホメーカーが“締め出される”ようなコトでもない限り、スマホ世界市場は中国メーカーが主役となってSamusungが凋落に向かうというシナリオが実現に向けて加速した、と言えるでしょう。


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(There was no) Return of JDI

2019-04-15 00:00:00 | 企業・産業
残念ながら理力(フォース)が足りなかったようで。
スマホ向け液晶ディスプレイ大手であるジャパン・ディスプレイが4/12付けで台湾・中国系資本の受け入れを発表
外国資本の傘下入りするコトとなりました。

立ち上げ時には「エルピーダとは違う」とアピールした同社でしたが、結果として同じ轍を踏むこととなってしまいました。
最大の仕向け先であるスマホがコモディティ化する中で中国液晶パネルメーカーがコスト競争力でシェアを伸ばすと同時に、同社がターゲットとしてきた高付加価値レンジでは有機ELが主役となったコトで、同社は苦戦を続けてきました。
ワタシが証券アナリストとして同社をウォッチ対象としていたのは2015年半ばから2017年初めですが、その間、同社を高く評価できるコトはありませんでした。面白いハナシを聞かせてくださるトコロでしたので、取材を楽しみにしていた一社ではありますが。

そして、スマホ市場自体がピークアウトしたコトが、日本メーカーとしての同社の“息の根を止めた”カタチです。
ただ、自力では量産に持ち込めなかった有機ELディスプレイについて中国での生産を考慮しているとのことで、実質“チャイナ・ディスプレイ”として、企業としては当分存続できるのではないでしょうか。

さて、その有機EL。
同社本体の有機ELは蒸着方式による製造を目指していましたが、同時にグループ企業のJOLEDでは、印刷方式の製造を実現。
直近ではJOLED製パネルを採用したディスプレイがASUSから発売されています
原理的には印刷方式の“売り”は低コストなワケですが、現時点では量産といえるホドになっていないためか、当該製品は50万円以上(英4500ポンド/伊5400ユーロ)と、非常に高価なものです。

しかし、JOLEDは増資の上で生産ラインの構築に向けて動き出しています
量産による低コスト化が実現できれば、PCやタブレット、車載用にと、それなりに広い需要が期待できるでしょう。
“ニッポンのディスプレイ”の灯が消えないよう、JOLEDには頑張って頂きたいトコロですネ。


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ハイブリッド技術“開放”

2019-04-08 01:23:45 | 企業・産業
今週(4/1週)、産業面で大きな反響を呼んだニュースの一つが、トヨタによるハイブリッド技術の“無償開放”です。
…といっても特許の利用が無償で出来たところで、肝心の材料や部品摺り合わせの“レシピ”は、当然ながら無料では提供されないワケで。
他メーカーが無償公開された特許を利用して、スグにトヨタ並みの高度なハイブリッド・システムを作れるワケではありません。

さてそのハイブリッド。
現在では日米欧韓の自動車メーカーが、多くの車種で展開しています。
中期的に継続的な市場拡大が期待されておりトヨタ自身もここまで順調に販売を拡大してきました
ただし、そのイメージ・リーダー車種である“Prius”の販売台数は、明らかにピークアウトしています()。
“ハイブリッドであるコト”のスペシャリティが無くなり、ソレがフツ~のコトになっている、と言えるでしょう。

同時に別の動きとして、大手自動車メーカー間でのコア・モジュールの相互提供や共同開発が拡大する気配が見えています。
日産がスカイラインにメルセデスのエンジンを積んだりトヨタの新型スープラがBMWとの共同開発だったり

そうした中での今回の特許“無償開放”。
トヨタが提携先のスバルスズキ以外にもハイブリッド・システムの外販を拡げるための“打ち手”である可能性が高いんではないかなぁ、と個人的には感じるトコロです。

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IT教育に愛はあるか?

2019-04-01 06:30:00 | ニュース雑感
かねてから決まっていたコト、ではありますが、文部科学省が小学校教科書の検定結果を今週火曜(3/26)に公表したことで、新たに採用されるプログラミング教育が一つの話題となりました
賛否両論ではありますが、教える側がうまく対応できるか、という点に対する不安は共通しているもよう。
とはいえ、この30年でPCからスマホまで様々な情報機器が我々の生活に浸透しているワケで。
もっと早く実現してもヨかったくらいではないかと思います。

とはいえ、その中身については、少々不安に感じられるトコロ。
日経新聞の記事に掲げられた教科書の部分写真を見ると、アルゴリズムが主になっているように思われるワケですが…
教科書通りのコードを書くコトを高く評価するような体系になるならば、文法偏重で“使えない”ノウハウを身に付けるコトになりがちな英語教育の二の舞になるおそれがあります。

さて、日本の電機メーカーが家電・情報機器分野で新興国メーカーに負けてしまったように、モノ作り、特に低価格が重視される大量生産品については、先進国は新興国に敵いません。
ならばどうすればよいか、の答えの一つが、米国のGAFAに見るように、新たなITサービスを継続的に生み出すコト。
そのために若い頃からのIT教育が重要であるのは確かです。

ですが、求められるのは、ソレを使ってどのようなサービスを創り出すか、です。
そのために重要なのはまず、情報機器に何が出来るのかを理解するコトや、情報処理技術の発展に伴って何が出来るようになるのかを想像するコトでしょう。
それは、教科書通りのコードを書くコトとは、むしろ逆の方向性と言えます。
今回の従前の算数や理科に組み入れるのではなく、新たに「情報」教科を立ち上げる必要があるでしょう。

教える方にとってはより困難な課題ですが、日本の産業全体に寄与するよう、早めに“使える”IT教育を実現して頂きたいトコロです。

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株価予想について

※当ブログで2011年4月~2012年1月に開示していた株価予想は、日経平均株価の当日大引け値が、前営業日比で高くなるか安くなるかを、ワタシの独断と偏見で予想したものです。また、それ以外の株価に関するコメントについても、同様のものです。 投資判断は、あくまでも自己責任でなさって下さい。その上で、参考になれば幸いです m(_ _)m

Disclaimer

当ブログは、私、糸井正和の個人的意見を記したものであり、現在・過去・未来における所属企業もしくは契約先企業の公式見解を表すものではございません。また、書かれた内容に関する完全性、適時性等を保証するものではありません。なお、投資にあたっては、自己の判断と責任において行って下さいますよう、お願い申し上げます。直接・間接に関わらず、投資に関する一切の結果について、責任を負うものではございません。