ことばと学びと学校図書館etc.をめぐる足立正治の気まぐれなブログ

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自殺したくなったら・・・

2005年07月30日 | 知のアフォーダンス

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雑誌『世界』8月号に「自殺したくなったら、図書館に行こう」いのちを育てる図書館員の群像(虫賀宗博、pp.214-225)という記事が掲載されている。滋賀県にある能登川町立図書館と他の3つの図書館を紹介しているのだが、読みすすむうちに、タイトルは決して大げさなものではなく、図書館は私たちが生きていくことに深く関わるところなのだということが伝わってくる。そして、「ほんものの図書館」とは何か、図書館員の専門性とは何かを考えさせてくれる。

能登川町立図書館長の才津原哲弘さんのことばを記事から拾ってみよう。
(能登川町立図書館は)「死角が多く、目が届かないところが多いように設計されています。」
「それは、図書館は一部の本好きのひとや学生の勉強の場所ではないからです。よりよく生きるために、よりよく考えるための場所が図書館なのです。」
「活字のない世界にも、言葉があります。そのひとを生かしめているものが言葉だからです。手押し車を押してきて、ただ座っているだけのひと、来ていただいてうれしいです。行き場のないひと、ケンカをしても隠れる場所がないひとを孤立させない。自殺させない。そう思います。」

図書館は、ただ本を読むところ、貸し出すところではない。図書館だからといって、かならずしも本を読みにこなくてもいい。本は、あくまでも「媒体」であり、きっかけであって、目的ではない。私たちが本を手にし、調べものをする真の目的は、その向こうにある。かねてから、そう思い続けてきた私は、地域に根をはり、住民ひとりひとりの自己実現を助ける図書館をつくられた滋賀の館長さんたちに大いに共感をおぼえる。

しかし、これまで数々の図書館建設をてがけられた菅原峻さんは、日本の図書館の大半はお役所か無料の貸本屋で、「ほんものの図書館」といえるのは5%ほどにすぎないとおっしゃっているそうだ。国会での議論が全くなかったとはいえ、せっかく成立したばかりの文字・活字文化振興法を使って、議員の皆さんには、さっそく「ほんものの図書館」を増やすための施策を講じてもらいたい。だが、間違っても、どこも同じ品揃え、同じサービスのコンビニみたいな図書館をいっぱい作ろうなんて考えはだけはおこさないでもらいたい。

記事は、さらに前川恒雄さんが日野市の図書館長だったころの活動にも触れて、図書館は「ひととひととの心のつながりの総体」であることを前川さんが示した、と述べている。かつて私自身も、阪神淡路大震災で被災した学校図書館の再生にあたって、「つながりを生かす」ことを原点に、子どもたちが自分を取り戻し、自己実現をはかる「ほんものの学び」を実現する場であってほしいと願った。その実現に直接、間接に力を貸してくださる人を文字通り全国に求め、そのプロセスで出会った多くの人たちとの交流が、現在の学校図書館メーリングリスト(sl-shock)の源流となった。

やれ活字離れだの読解力低下だのと騒ぎ立てて、本来個人の自由であるべき読書を半ば脅迫的に強いるような動きにうんざりしていた矢先にこの記事に出会って、救われる思いだった。奇しくも、この夏もまた8日間にわたって滋賀県の先生方と学校図書館を学び合う機会をいただいている。ぜひ、この記事を滋賀の皆さんと共有させていただこうと思う。

以下は、sl-shockの学校図書館ブログに紹介されたこの記事の抄録である。
自殺者が毎年3万人を超える。自殺が日常なんて、異常だ。あるとき、大学生の友人がひどく悩んでいるとき、「能登川図書館に行ってみたら」と薦めたことがある。琵琶湖沿いにバイクを1時間走らせると京都から行くことができる。帰ってくるとその友人は「よかったよ、あんな図書館はじめて」と言う。「図書館にいい印象を持たず、利用もしてこなかった」筆者が、この図書館の何に惹かれ、友人に薦めるにいたったのか? 80年代、武村知事が始めた滋賀の図書館改革で生まれた4つの図書館を訪ね、紹介する。

能登川町立図書館のことは次の本にも紹介されている。

砂漠でみつけた一冊の絵本岩波書店このアイテムの詳細を見る



日野市の図書館長だった頃の前川恒雄さんの活動は次の本で読める。

移動図書館ひまわり号筑摩書房このアイテムの詳細を見る



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