原発の恐怖に怯えながら安全対策を立てるよりも、原発に頼らない新しいライフスタイルを創り上げる努力をする方が、私たちはのびのびと生きられる。そのために、私たちは、自分の内に生息して認識と行動の源泉となっていることばを問い直し、書き換えなくてはならない。以下、さまざまな観点から脱原発を考えるための上質な情報源を選んでみた。
【原子炉の現場で働く研究者から見た原発】
小出裕章・著『隠される原子力・核の真実──原子力の専門家が原発に反対するわけ』(創史社、2011年12月)
隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ | |
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創史社 |
原子力にかかわる専門家の立場から、原子力発電の危険性を訴え続けている小出裕章氏 (京都大学原子炉実験所助教)が昨年末に出した本である。小出裕章氏のことばは、明快かつ的確で、ぶれない。そして、何よりも科学者としての良心につらぬかれた正確な物言いを信頼して、私は、3.11の原発事故が起こってから、ネットを通して小出さんのことばに耳を傾けてきた。おかげで、政府や東電の発表が二転三転して、そのたびに弁明に苦慮している様子を見ても聞いても動揺することはない。
・小出裕章(京大助教)非公式まとめ
・『世界』2011年6月号(岩波書店)の原子力特集「原子力からの脱出」にも小出裕章氏のインタビュー記事「ブラックアウトは何故起きたか」が掲載されている。
以下は、岩波書店のサイトから転載
執筆者からのメッセージ
原子力発電とは、ウランの核分裂反応を利用した蒸気機関である。今日標準的になった100万kWといわれる原発では1年間に1トンのウランを核分裂させる。広島原爆で核分裂したウランは800gであったから、優に1000倍を超える。原発は機械であり、事故を起こさない機械はない。原発を動かしているのは人間で、間違いを犯さない人間はいない。電気を多量に消費するのは都会だが、万一の事故のことを考えれば、原発を都会に立てることはできなかった。そこで、原発は過疎地に押し付けられ、厖大な電気を使う豊かな生活のためには「必要悪」と言われてきた。私は40年間、いつか破局的な事故が起きると警告してきた。何とか破局的な事故が起きる前に原発を止めたいと願って来た。しかし、福島原発事故は起きてしまった。現在進行中の事故を収束に向かわせるため、今後、多くの作業員が被曝する。周辺の多くの人々も、歴史を刻んできた土地を捨てて避難するか、被曝を覚悟で住み続けるか選択するしかない。それを思うと、言葉にできない無念さがある。
これほどの悲劇を前にまだ原発が運転され続けていることを、信じがたい気持ちで私は眺める。世論調査では、停電すると困るので原発は必要とする人が多数いると言う。もし、享楽的生活を続けるために電気が必要と言うのであれば、原発は是非都会に作って欲しい。それができないのであれば、電気が足りようと足りまいと原発は即刻全廃すべきものと私は思う。
【原発が既成事実となるまでの動き】
武田徹・著『私たちはこうして「原発大国」を選んだ 増補版「核」論』(中公新書ラクレ、2011年5月)
私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ) | |
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中央公論新社 |
書名にあるとおり、本書は『「核」論―鉄腕アトムと原発事故のあいだ』 (中公文庫、2006)の増補版である。朝日新聞2011年4月17日「ニュースの本棚」「原発事故とコミュニケーション」で、神里達博(東京大特任准教授、科学史・科学論)は、この本を次のように評している。
我々は短期的なリスクについてのみならず、今後、社会全体として原子力という技術にどう向き合うべきか、議論を避けるわけにはいかないだろう。そこでは客観的で公平な知識、とりわけ歴史的視座が重要となる。だが長い間、原子力発電を巡る議論は、推進と反対にほぼ完全に分極してきたこともあり、中立的で読みやすい本は少ない。そんな中『「核」論』は、我が国の原子力の歴史を努めて公平な立場から描いた良書である。
【文明の転換に向けての視点】
内田樹、中沢新一、平川克美・著『大津波と原発』(朝日新聞出版、2011年5月)
大津波と原発 | |
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朝日新聞出版 |
4月5日にラジオデイズのUstreamで配信された内田樹、中沢新一、平川克美の三氏による鼎談「いま、日本に何が起きているのか?」の書籍化したもの。
「未曾有の震災後に浮かび上がる、唯一神のごとき「原発」。原子力という生態圏外のエネルギーの憤怒に、われわれはどう対峙し、無残に切断された歴史を転換させていくべきなのか。白日のもとに晒された危機の本質と来るべき社会のモデルを語り尽くす。」(多摩美術大学芸術人類学研究所)
・中沢氏は、『すばる』2011年6月号・7月号(集英社)に「日本の大転換」を寄稿して、原発に関する文明史的批判を展開しておられる。
参議院行政監視委員会
「原発事故と行政監視システムの在り方」
参考人:
・小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)
・後藤政志氏(原子炉格納容器設計者)
・石橋克彦氏(地震学者)、
・孫正義氏(ソフトバンク社長)
下記のサイトでインターネット中継される。
http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
原発は今後どうなる?
放射能から身を守るにはどうすればいい?
どのくらいの「被曝」ならば安全?
原発を止めて電力は足りるの?
など、原子力に関するさまざまな疑問に“いま最も信頼されている研究者”がわかりやすく答える。