万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

teacup.ブログ“Autopage”から引っ越してきました。

1785 笠金村歌集 女歌

2010-11-21 | 巻九 相聞
神龜五年戊辰秋八月歌一首(并短歌)

人跡成 事者難乎 和久良婆尓 成吾身者 死毛生毛 公之随意常 念乍 有之間尓 虚蝉乃 代人有者 大王之 御命恐美 天離 夷治尓登 朝鳥之 朝立為管 群鳥之 群立行者 留居而 吾者将戀奈 不見久有者

人となる ことはかたきを わくらばに なれる我(あ)が身は 死にも生きも 君がまにまと 思ひつつ ありし間に うつせみの 世の人なれば 大君の 命畏(みことかしこ)み 天離(あまざか)る 鄙治(ひなをさ)めにと 朝鳥の 朝立ちしつつ 群鳥(むらとり)の 群立ち行かば 留まり居て 我れは恋ひむな 見ず久ならば


728(神亀5)年・戊辰・秋8月の歌一首(ならびに短歌)

「人間となることは(思いのほか)難しい。偶然に、(人間として)生まれた我が身は、生きることも死にゆくことも、神の意のままと、思いつつ。この地で生きる間、“うつせみの”現世に生きる人間だので、“大君の”(天皇の)勅令を謹んで承り、“天離る”地方を統治せよと、“朝鳥の”(朝の鳥が)飛び立つように、“群鳥の”(鳥の群集が)一群をなして飛び立つように(慌しく旅立ったあなた)。

(別れを惜しむ間もなく)家に留まり残された私は、(地方に出向したあなたを)恋しのぶ。(あなたの姿を)見なくなって(すでに)久しい」