たかたかのトレッキング

駆け足登山は卒業、これからは一日で登れる山を二日かけ自然と語らいながら自由気ままに登りたい。

(2)フランス・スイス紀行(20日間) ラックブラン登山

2011年01月03日 | 旅行
プラ(ロープウエイ)アンデックス(1:30)ランデックス(3:40)フレジュール(ロープウエイ)プラ

昨夜の酔っ払い
夜が明けてドアを開けると毛布にくるまって憎たらしいほど気持良さそうに寝ている。
小突いてやりたいところだが降りかかった火の粉
ホテルの御主人を呼んで私達は8時40分、ホテルを出る。

教会近くのロープウエイ乗り場から約30分の空中散歩でアンデックスに到着
あいにく今日は雲が多くモンブランは望めなかったが目の前に赤い針峰群の岩肌が
物凄い形相で出迎えてくれた。
人通りの少ない登山道を、その紅い針峰群を左に見ながらアルプス登山の第一歩を踏む。

何度か雪渓を渡り少しずつ姿を見せ始めたアルプスの花々に酔い
私達を見ても慌てる風もなく悠然と歩いている羊に心を浮き立たせ
私達もノンビリと歩いた。
30分歩いたところで雨がパラッと落ちてきて、その内 その雨はアラレに変わった。
後方では雷鳴が轟き何とも嫌な雰囲気になった。
後ろで主人が「オンタカ教の出番だ」と冗談交じりに言うので
天に向かってオンタカを3回唱えるとウソでしょう!
雨が上がったのである。

フレジュールからの合流点に着くと一人の初老が岩に腰を下していた。
フレジュールから登って来たのだろうか。
挨拶する顔に余裕が無い。
登山道はここから岩場の登りとなる。
再び雲が怪しくなって直ぐ前の山を飲み込んだ。
未だオンタカ教が効いているのか幸い雨は落ちてこない。

最後の雪渓を渡っていると前方に小屋らしき建物がボーっと浮かんだ。
たち込めるガスの中、目を凝らすとその小屋の奥に湖が見える。
ラックブラン(白い湖)に着いたのだ。と同時に天気は回復の兆しを見せ湖全体を浮き上がらせた。
小屋にいた数組の登山者も一組、二組と湖のほとりに散らばって行く。
やがて空に青さが広がり霧散すると湖を囲む針峰群の銀嶺も挙って輝き始め
一気に山上の楽園を作りあげていった。



あの山の向こうがイタリアかと思うと何だかとても不思議な気がする。
一段高い岩の上から反対側を眺めていた主人の「ドリュが見えるぞ」という声に慌てて岩に登ると
シャモニの谷を挟んでドリュ、ヴェルト針峰、グランドジョラス、シャモニ針峰群が
影絵でしかなかったその姿を甦らせた。
谷を縫う様に流れるメール・ド・グラス氷河も手に取るようだ。
双眼鏡を当てるとエギュー・デュ・ミディ突端のロープウエイ駅も確認できる。
雲が多く今一の展望で有ったが、それでも嬉しくてナカナカ離れられなかった。

帰路は急な岩場の下りで始まった。
急斜面の雪上は足を踏み出す度にズルズルと良く滑る。
振り向けば山上レストランは遙か彼方に去り首が痛く成る程の高さから見下ろしていた。
前方にはシェズリー湖がエメラルド色の輝きを放って散らばっている。
傾斜が緩んでシェズリー湖のほとりに出た。
花の数も途端に増え今まで目にした事のない花々に高揚し私は年甲斐もなく、はしゃぎ回っていた。



フレジュールからシェズリー湖を回ってラックブランに至る道は雪も無く花を観賞しながら登れるという事で
人気が有るのか登山者と擦れ違う回数が増えてきた。
挨拶はダントツ「ボンジュール」が多いが時々「コンニチワ」で挨拶すると
登山者の中には「コニチワ」で返してくる者もいて山の楽しさが益々膨らむ。



百花繚乱とはこの事を言うのだろう。
数の多さはさる事ながら
色合い、姿形は鳥肌が立つ程であり日本の様にトラロープも無ければ監視する者も居ない。
登山者全員が管理人なのである。
モンブランとホゾン氷河を見ながら花の海を泳ぐこと2時間余り
道が二手に分かれ、どちらにしようか迷ったが
このままフレジェールに下ってしまうのも何か勿体無くて道を右にとった。
少しずつ花の種類も変わって私が日本に居る時から楽しみにしていた
アルプスの女王「アルペンローゼ」が真っ赤な花をほころばせ、その領域を広げてきた。

ふと何かが動いた。
20メートルほど先の草むらに薄茶色の小さな物体
「何処だ何処だ」
「あそこ、あそこ」
興奮状態の私は落ち着いて上手く説明できない。
やっと確認した主人が「マーモットだ」と叫ぶ。
その声もかなり興奮していた。
‘カメラ、カメラ‘ 慌てているので上手く操作できない。
とにかく落ち着いてとカメラを構え出きる限り引っ張って焦点を合わせる。
しかし動きの早いマーモットを捕らえるのは難しくカメラを外して肉眼で確認したり
又、ファインダーを覗いたり
そんな事をしている内、終に岩陰に消えてしまった。

滝を二つ見て暫くで前方にロープウエイ駅が見えてきた。
今日、私達が選んだコースはエギュー・デュ・ミディーの様に観光客に出会う事も無い
山を愛するものだけの静かな世界だった。
その上、高原、岩場、雪渓、湖、滝、展望、花、動物とこれ以上を望み様の無い大盤振る舞い。
そして四季全部を味わう様な天気というおまけ付きである。
私達は名峰モンブランの懐に抱かれる幸せを噛み締めながら残り20分の行程をノンビリ歩いた。






コメント (1)
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