虚言癖は治らない？

テツさんは今日から二泊の出張に行きました。帰ってこなくていいよ。

テツさんはよくウソをつく。
アタシはウソが嫌いで、よくそのことでケンカになる。
昨日もそうだった。
アタシは以前からテツさんのヘビースモーカーっぷりには辟易していて、不倫関係になる頃から口うるさく減煙、禁煙を勧めてきた。
一向に改善しないテツさんのために禁煙セラピーという読むだけで禁煙に成功するという本を買った。
そして自分で読んだ。
人に読ませるのに自分で読んでなきゃ説得力ないもんね。
二日前にテツさんに会う時、読んでねと本を渡した。
テツさんは「分かった」と公私ともに使用しているバッグにしまった。

翌日、つまり昨日の帰り、本を読んだか聞いてみた。
「ちょっと読んだよ」テツさんは言った。
その日も水泳をしていたアタシ達。
施設にいる間はタバコを吸わないと偉そうにぬかしてたテツさん。
そんなの２時間もないのにどうしてそう偉そうなんだか。
そして一番嫌なのは、車に戻った瞬間タバコに手を伸ばすとこ。
まったく意味がないよね。
だけどその日はタバコが見当たらず、そわそわしている。
ポケットやバッグなど探しても見つからない。
『買い忘れたんじゃないの？帰りにかったら？』そう言うアタシの話も上の空で、絶対あるはずと言って車の中を探し出した。
アタシも一緒になって仕方なくダッシュボードや座席の下、後ろをなどを探していた。
テツさんはとうとう車から降りて、後部座席に乗り込んで探し出した。
そこまで吸いたいか？
冷めた目をしながらも探し続けるアタシ。
テツさんの真似をして、後ろの座席のクッションをめくってみた。
そしたらなんと、そこには前日アタシが渡した本があった。
『・・・・・なにこれ』
「あ、バレた」

非常にがっかりした。
テツさんは本を隠していた。
それは家で本の存在を奥さんに見つかるのがうまくないとか、色々理由はあるだろう。
だけどテツさんは、本を少し読んだと言っていた。
どこで？
いったんバッグにしまって、いつも後部座席にバッグを置いてるテツさん。
きっとアタシと別れた後、ご丁寧にバッグから本を取り出し、わざわざ助手席の後ろのシートのクッションの下に隠したんだよね。
もちろん読んでるわけもないだろう。
アタシはテツさんに気づかれないように本を自分のバッグに戻した。

アタシはアパートに戻ってからも怒り心頭で眠れないくらいだった。
今朝も早く起きて、テツさんに本を本当は読んだのか読んでないのかメールで３回も聞いたけど無視されて、頭にきてしまった。

≪少し読んだとか言っておきながら、あんな場所に隠してるなんてウソついて何になるの？アタシをバカにしてるよね。
また合コンとか言ってこれも得意の悪い冗談？
身体だけは求めてきてどんだけバカにすれば気が済むの？
腹立つわ。
週末のことは保留にして
キャンプの話はなかったことに≫

昨日の帰り際、テツさんは勝手に欲情して人の身体を触ったりキスしてきたりした。
いつものアタシならテツさんに触れられたりするのがとても嬉しいのに、嫌悪感しか感じなかった。
「エッチしたい」
テツさんにそんなことを言われると殴ってやりたくなった。
アタシの反応が悪かったのか「キスしたくないの？いや？」とか聞いてくる。
『嫌じゃないよ』とは言ったものの、ため息をつかれ「悲しい」と言われた。
アタシが悲しいって言ってやりたいくらいだった。
土曜日にホテルに行く約束もなんとなくしたけど、昨日のことがどうしても許せなくて、キャンセルしようと思った。
夏に一緒に行こうと計画したキャンプも行きたくなくなった。
それでもテツさんからの返事はこなかった。
いつも出勤前のメールには返事をしてくれないテツさん。
移動中に電話すれば十分だと思っているのか、朝は奥さんといるから携帯をいじれないのか分からないけど、どっちにしろアタシをバカにしてるには違いなかった。
結局アタシが会社に着くまで着信はこなかった。
イライラしたまま携帯を車に置きっぱなしにして事務所に向かった。

「ごめんね。怒らないで」
ようやくメールがきたのは朝の９時前。
しかもこれだけ？
ウソをついたことは認めないというのか？
非常にイラついた。
テツさんは午後から出張に行き、アタシは定時で仕事をあがった。
車に戻ったら、またイライラ。
携帯に着信は入ってなかった。
つまりテツさんはハナからアタシに朝から謝るつもりはなかったんだ。
もうテツさんにとってのアタシの存在は決まりだよね。
本当にバカにしてる。
今頃客先と接待だろうけど大嫌いだの色々メールしてやった。
テツさんはアタシからの攻撃的なメールに弱い。
頭がおかしくなりそうで死にたくなるんだってさ。
ははっざまぁみろ。
自業自得だよ。
嘘には罰を。