会社が休みの土曜はテツさんと朝からお出かけの日。
この日もお出かけする予定だった。
だけどテツさんは前日に接待が入ってて、アタシが終業時間間際に『明日どうする?』ってきいても返事がこなくて。
結局テツさんからのただいまメールがきたのは日付も変わって午前3時すぎ。
そんなんじゃ明日大丈夫なの?って思ったから寝てたのにもかかわらずアタシは返信した。
のに。
返事はこなかった。
翌朝9時に迎えに来てもらう約束だったのに、8時40分を過ぎても電話がこない。
絶対寝てると思って迎えに来るのはムリだと思ったから給油に行ってきた。
その旨メールすると返事が。
分かったよと。
起きてたの?
起きてたらなんかしらのアクションが欲しかった。
テツさんのこういうところが嫌い。
結局アタシの支度などもあって10時に迎えにきてもらった。
どこに行く?本来の目的はアタシの洗車だ。
テツさんが洗車とコーティングをしてくれるという。
ただ天気は猛暑も猛暑。こんな中洗車したら汗だくで大変だろう。
アタシは日中はホテルにこもり、夕方涼しくなったところで洗車をしてみたらどうかと提案した。
テツさんは最近欲求不満らしくアタシの身体をベタベタ触ってくるから、絶対にのってくると思ったのに。
「うーん、それでもいいけど、せっかくの天気だからどこかに出かけたいってのもある」
確かにいい天気だ。でもどこに行く?
アタシは川や滝に行きたいと提案した。
そして過去に行ったとある滝にまた行きたいと言った。
「うーん、ちょっと遠いな」
ということで、テツさんのお任せになってしまった。
これがそもそもの間違いだった。
車を走らせること1時間弱。
人気のない山奥で車は停まった。
テツさんの手を取り歩いていくと立派な滝が。
高さはないけれど、横に広がるそれはなかなか圧巻だった。
けれど、滝の傍に石碑があった。
「あ」テツさんがつぶやいた。
アタシは目を疑った。
そこは、テツさんが過去に奥さんと巡った100名所のうちの1ヶ所だったのだ。
アタシは以前、何度か知らずにその100名所のうち数箇所に連れて行かれたことがあったけど、事実を知ってから大喧嘩になって、二度と連れて行くなと言ったことがある。
それなのに、それなのにも関わらず。
テツさんはまたしてもやらかしてくれた。
「帰る?」テツさんが冗談まじりに言ったけどアタシだって『帰る!!』って言って踵を返した。
「せっかく来たのに・・・」なんてテツさんが言うもんだから、アタシは仕方なしに滝を見ることにしたの。
テツさんの手を取り、山を登る。
アタシは華奢なサンダルをはいてたから登ったりするのは大変なのに、テツさんはずんずん進んでいく。
「蛇とか出るかもしれないから気をつけてね」テツさんはアタシを気遣ってくれた。
だけど、そのセリフにアタシはまたしても眉を吊り上げてしまった。
『それ、ここだったの!?テツさんの奥さんがブログに書いてあったの知ってる。・・・ここだったんだ』
こんなことをテツさんに言っても仕方ないのは分かってるけど、堪えられなかった。
それでも頑張って進んでいって、上流まで来た。
せっかく連れてきてもらったのだから、あんまりこだわらないで、目の前の景色を楽しもう。
そう思って自分から川に手を入れた。
『つめたーい』なんて言ってみせて、楽しんでるように装った。
けれど、
この景色は5年前に奥さんと見たんだろうな。とか
どうしてアタシがこんなところに来なきゃいけないんだろう。とか
そんなことばかりが脳裏をよぎってしまい、顔に出てたのだろう。
「まい、どうしてそんな顔するの?」なんてテツさんに心配かけてしまった。
結局、あまり涼しくないとのことですぐに降りてきた。
川はずっと続いていたけど、あまり見ないようにして滝も最初しか見なかった。
けれども石碑はしっかりと頭に焼き付いてしまって、車に乗り込んでも涙が溢れてしまった。
「まい、まい!?」テツさんがアタシを揺さぶる。
『なんでもないよ』アタシは気丈に振舞った。のに。
「まい、なんで泣くの!?」なんてしつこい。
『泣いてないもん!!』確かにその時は涙ぐんでただけで泣いてはいなかったのだけれど、その言葉を言われたら涙が頬を伝ってしまった。
それを見たテツさんははぁああああぁと大きなため息をつき、「せっかく連れてきたのになんだよ。最悪。もう嫌だ!頭がいたい!もう帰る!」と騒ぎだしてしまった。
頭が痛くて帰りたいのはこっちだよと言いたかった。
テツさんにはもう少し配慮をお願いして、場所を変えた。
またしても川だったけど、鮎を食べたり散歩したり、川に足を入れてみたりと楽しかった。
ここだってもしかしたら以前奥さんと訪れたことがあるかもしれない。
でもそれはいいんだ。だって真実を知らないから。
もし、来たことがあるって言われたらここも最悪な思い出になるだろう。
テツさんは過去にしてきたことをそっくりそのまま再現する癖がある。
だからアタシがこうして鮎を食べて散歩をして川遊びをしたのなら、奥さんも同じ事をしているはずだから。
アタシは奥さんの代わりでもなければペットでもない。
だから同じなんてごめんだ。
だから知らなきゃいい。
100名所はそれだけで許せない。
もし今度テツさんがどこかに連れてってあげると言ってきたら、アタシはまずそこが100名所かどうかチェックする。
そして100名所じゃなくてかつ昔奥さんと来た事があると聞いた場所でなければ行く。
こうすることにした。
嫌だ、こんな付き合い。
もっと素直に景色を美しいと言いたいし、食べ物も美味しいと言いたい。
もっと素直に生きたい。
テツさんが離婚しない限り、素直になれない。
見た滝だって綺麗だった。滝は悪くない。
普通のカップルだったら、もっとじっくり見たし写真だって撮っただろう。
今のアタシにはこんなの屈辱でしかない。
素直になりたい。
素直に生きたい。
夜、テツさんと別れた後テツさんに想いを伝えた。
もちろん返事はくるはずなかった。
この日もお出かけする予定だった。
だけどテツさんは前日に接待が入ってて、アタシが終業時間間際に『明日どうする?』ってきいても返事がこなくて。
結局テツさんからのただいまメールがきたのは日付も変わって午前3時すぎ。
そんなんじゃ明日大丈夫なの?って思ったから寝てたのにもかかわらずアタシは返信した。
のに。
返事はこなかった。
翌朝9時に迎えに来てもらう約束だったのに、8時40分を過ぎても電話がこない。
絶対寝てると思って迎えに来るのはムリだと思ったから給油に行ってきた。
その旨メールすると返事が。
分かったよと。
起きてたの?
起きてたらなんかしらのアクションが欲しかった。
テツさんのこういうところが嫌い。
結局アタシの支度などもあって10時に迎えにきてもらった。
どこに行く?本来の目的はアタシの洗車だ。
テツさんが洗車とコーティングをしてくれるという。
ただ天気は猛暑も猛暑。こんな中洗車したら汗だくで大変だろう。
アタシは日中はホテルにこもり、夕方涼しくなったところで洗車をしてみたらどうかと提案した。
テツさんは最近欲求不満らしくアタシの身体をベタベタ触ってくるから、絶対にのってくると思ったのに。
「うーん、それでもいいけど、せっかくの天気だからどこかに出かけたいってのもある」
確かにいい天気だ。でもどこに行く?
アタシは川や滝に行きたいと提案した。
そして過去に行ったとある滝にまた行きたいと言った。
「うーん、ちょっと遠いな」
ということで、テツさんのお任せになってしまった。
これがそもそもの間違いだった。
車を走らせること1時間弱。
人気のない山奥で車は停まった。
テツさんの手を取り歩いていくと立派な滝が。
高さはないけれど、横に広がるそれはなかなか圧巻だった。
けれど、滝の傍に石碑があった。
「あ」テツさんがつぶやいた。
アタシは目を疑った。
そこは、テツさんが過去に奥さんと巡った100名所のうちの1ヶ所だったのだ。
アタシは以前、何度か知らずにその100名所のうち数箇所に連れて行かれたことがあったけど、事実を知ってから大喧嘩になって、二度と連れて行くなと言ったことがある。
それなのに、それなのにも関わらず。
テツさんはまたしてもやらかしてくれた。
「帰る?」テツさんが冗談まじりに言ったけどアタシだって『帰る!!』って言って踵を返した。
「せっかく来たのに・・・」なんてテツさんが言うもんだから、アタシは仕方なしに滝を見ることにしたの。
テツさんの手を取り、山を登る。
アタシは華奢なサンダルをはいてたから登ったりするのは大変なのに、テツさんはずんずん進んでいく。
「蛇とか出るかもしれないから気をつけてね」テツさんはアタシを気遣ってくれた。
だけど、そのセリフにアタシはまたしても眉を吊り上げてしまった。
『それ、ここだったの!?テツさんの奥さんがブログに書いてあったの知ってる。・・・ここだったんだ』
こんなことをテツさんに言っても仕方ないのは分かってるけど、堪えられなかった。
それでも頑張って進んでいって、上流まで来た。
せっかく連れてきてもらったのだから、あんまりこだわらないで、目の前の景色を楽しもう。
そう思って自分から川に手を入れた。
『つめたーい』なんて言ってみせて、楽しんでるように装った。
けれど、
この景色は5年前に奥さんと見たんだろうな。とか
どうしてアタシがこんなところに来なきゃいけないんだろう。とか
そんなことばかりが脳裏をよぎってしまい、顔に出てたのだろう。
「まい、どうしてそんな顔するの?」なんてテツさんに心配かけてしまった。
結局、あまり涼しくないとのことですぐに降りてきた。
川はずっと続いていたけど、あまり見ないようにして滝も最初しか見なかった。
けれども石碑はしっかりと頭に焼き付いてしまって、車に乗り込んでも涙が溢れてしまった。
「まい、まい!?」テツさんがアタシを揺さぶる。
『なんでもないよ』アタシは気丈に振舞った。のに。
「まい、なんで泣くの!?」なんてしつこい。
『泣いてないもん!!』確かにその時は涙ぐんでただけで泣いてはいなかったのだけれど、その言葉を言われたら涙が頬を伝ってしまった。
それを見たテツさんははぁああああぁと大きなため息をつき、「せっかく連れてきたのになんだよ。最悪。もう嫌だ!頭がいたい!もう帰る!」と騒ぎだしてしまった。
頭が痛くて帰りたいのはこっちだよと言いたかった。
テツさんにはもう少し配慮をお願いして、場所を変えた。
またしても川だったけど、鮎を食べたり散歩したり、川に足を入れてみたりと楽しかった。
ここだってもしかしたら以前奥さんと訪れたことがあるかもしれない。
でもそれはいいんだ。だって真実を知らないから。
もし、来たことがあるって言われたらここも最悪な思い出になるだろう。
テツさんは過去にしてきたことをそっくりそのまま再現する癖がある。
だからアタシがこうして鮎を食べて散歩をして川遊びをしたのなら、奥さんも同じ事をしているはずだから。
アタシは奥さんの代わりでもなければペットでもない。
だから同じなんてごめんだ。
だから知らなきゃいい。
100名所はそれだけで許せない。
もし今度テツさんがどこかに連れてってあげると言ってきたら、アタシはまずそこが100名所かどうかチェックする。
そして100名所じゃなくてかつ昔奥さんと来た事があると聞いた場所でなければ行く。
こうすることにした。
嫌だ、こんな付き合い。
もっと素直に景色を美しいと言いたいし、食べ物も美味しいと言いたい。
もっと素直に生きたい。
テツさんが離婚しない限り、素直になれない。
見た滝だって綺麗だった。滝は悪くない。
普通のカップルだったら、もっとじっくり見たし写真だって撮っただろう。
今のアタシにはこんなの屈辱でしかない。
素直になりたい。
素直に生きたい。
夜、テツさんと別れた後テツさんに想いを伝えた。
もちろん返事はくるはずなかった。
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