流動のイイ女

妻子もちと別れ⇒いじめで会社を退職⇒脱無職⇒上司と不倫関係⇒約3年の不倫にピリオド⇒復縁、妊娠⇒未婚の母に

嫌だって言ってるのに

2010-04-20 | 新しい仕事
全ては1通のメールのせいだった。

先日、テツさんはとある地方に出張に出ていた。
出張=接待とあって、その日もテツさんは食事⇒キャバクラコース。
アタシは一人アパートでごろごろウトウト。
本格的に寝ようかと思う頃にテツさんから電話がかかってくる。
「まい、まい。聞いてよ」
『んん・・・なぁに(眠い・・・)』
「お客さんがさぁ、俺のことすっげー気に入ってね、今度肉くれるって言うんだよ、肉」
お酒の入ったテツさんは声のトーンが上がっており、上機嫌だということも分かる。
『肉?なんの?』
「猪だってさ猪!今度送るから住所教えてって言われちゃったよ」
『えーマジで!?すごいねー』
「まい、来たら食べよっか!」
『うん!楽しみー』
なんて話してたのに・・・。

数日後、何事もなくいつもの日々が過ぎ、この日会社の創立記念日とあって平日にもかかわらず会社はお休み。
ただアタシとテツさんは休日出勤で事務所に二人でいた。
「まい、まい。見て!」
テツさんが呼んだ。
「これ、前言ってた猪の人。マジで送るから住所教えてってメールきてる!」
わー、酒の席の話だと思ってたけど、本当に送るんだね。
でも・・・どこに送るの?
アタシの胸に一瞬不安がよぎった。
『ねぇテツさん・・・住所はどこにするの?おうち?それとも実家?』
アタシの問いにテツさんが一瞬止まったように見えた。
「んー・・・どこに、しようかな・・・。実家にしたいけど、土日とかいないとアレだし、不在票になるのかな・・」
なんて歯切れの悪い言葉。
アタシはその言葉の端の意味を逃さなかった。
『ねぇ、テツさんのご両親は仕事してないんだよね?』
「そうだよ」
『だったら土日がどうとか関係ないじゃん。そもそも土日に届くとは限らないし。奥さんは仕事してるんでしょ?だったら平日必ずいる実家のほうがよくない?』
分かってる・・・分かってるよ。
アタシ、テツさんの自宅に届けて欲しくない。
だって、だって自宅には奥さんがいるから。
働いてるって言っても、自宅に行った時に車があった、それだけの事実で十分だった。
奥さんは働いていない。
そう確信が持てる。
「んー、そうだけど・・・」
結局曖昧なまま言葉を濁され、会話は終わってしまった。
でもアタシは見た。
テツさんの返信を。

ご好意ありがとうございます。
私の住所は○○市×丁目・・・・

自宅の住所だった。
テツさんはなんだかんだ言っても、実家より自宅を選ぶんだ。
しかも電話番号までしっかり自宅。
以前アタシがテツさんの電話番号を言った時、「それは変えたからもう使えないんだ」なんて言ってた、まさにその番号だった。
テツさんは保身のため咄嗟にウソをつく癖がある。
そういう所が、大嫌いだった。

どうにか気持ちをやり過ごそうと頑張ったけど、やっぱりムリで。
モヤモヤは残しておきたくないから、午後になって改めて聞いてみた。
『ねぇテツさん。さっきも聞いたけど、結局住所はどっちにしたの?』
午前中に何回かしつこく聞いたもののその度にはぐらかされ、また改めて逃げられないように質問したから、テツさんも観念したんだろう。
少し間をおいてから
「いちおう自宅にしたけど・・・どうして?」
ここで実家と言ってたらアタシはテツさんを罵っていたかもしれない。
本当のことを言ってくれてうれしかった。
と同時にそんな事までもいちいち疑ってる自分に罪悪感を感じた。
『あのね・・・テツさんは毎日アタシと会ってるから自宅に帰るの遅いじゃん。どうやって受け取るの?時間指定だってその時間はできないよ?』
「不在票で俺が受け取るよ」
『そんなことしたって夜だってことには変わりないでしょ?』
「日曜日に受け取るよ。日曜なら俺が行けるでしょ?」
『そうだけど・・・その保障はない。アタシね、本当に奥さんが受け取ったりするのは嫌なの。家にいるっていう事実だけでも嫌なのに』
「大丈夫だよ。俺が受け取るから」
しぶしぶ納得せざるを得なかった。

また数日後の土曜日。運命の日。
企画していた市外の花見は大荒れの天気のため中止。
アタシ達は朝からラブホテルでフリータイムを満喫していた。
やることもなくてテレビもパチンコ番組とアダルト番組を交互に見る始末。
その中で一つのアダルトチャンネルを見ていたんだけど。
女優は四十代の人妻風、男優は若い人だった。
恐らく不倫の設定だろう。
人妻が男性を貪るように愛撫して、男が人妻を愛撫すると狂ったような喘ぎ声と大げさな表情で喘ぐ。
アタシはこの番組に強い不快感を覚えた。
結婚していても身体を求める、肉欲の塊。
まるで自分も同じレベルに下がったと感じた。
いや、実際同じレベルなんだけど。
アタシはひどく悲しくなって、テツさんにチャンネルを変えるように頼んだんだけど、テツさんは笑って変えてくれなかった。
アタシは見てられなくて、テレビに背を向けテツさんの胸に顔を埋めた。
自分はあんなに汚らわしくない。アタシとテツさんはあんなんじゃない!
そういう思いが頭をグルグル回って、涙がぼろぼろこぼれた。
「どうしたの?」鼻をすする音にテツさんは気づいて、アタシの顔を上げさせた。
そこには涙でグシャグシャになったアタシの顔。
「まい、何があったの?何がそんなに悲しいの?」
『なんでもない、泣いてなんかない!』
アタシは再度テツさんの胸に顔を埋め、背中に腕を回し、嫌悪感をかき消すように腕に力を込めた。
布団を被っても女優の喘ぎ声は聞こえてくる。
とてもこの場にはいられない。
アタシはフリータイムの終わりも近づいてきたことだし、お風呂に入ろう。
お湯を入れ替えるためにベッドから起き上がった。
「どこ行くの?」テツさんは部屋から出ようとすると必ずアタシに声をかける。トイレに行くときでさえも。
『お風呂・・・お湯入れてくる』
「待ってまい・・・エッチしよ!」
テツさんが誘ってきた。
テツさんは最近、1回しかセックスしなかった。
そのことが内心不満でアタシは今日、最低5回だからね!なんて言ってたけど。
こんな番組見たらそんな気も失せていた。
『やだよ』アタシは断った。
「なんでーエッチしようよー」
アタシの身体を抱きしめ、乳首に吸い付いてきたり体中をなでまわしてきたりしたけど、ダメだった。
『やだ!お風呂入るの』
するとテツさんはいきなり立ち上がってバスローブをはだけ、ベッドに座ってるアタシの目の前にペニスを突き出した。
しゃぶれといわんばかりに。
いま流れているAVの流れそのままに。
口に押し付けられたペニスを仕方なしに少しだけ口に含んだが、嫌々というのが見えて取れたのだろう、テツさんは「ふん!もういい!」と言って、ベッドから立ち上がってソファに座ってしまった。
テツさんに不快な思いをさせてしまったと思うと同時に、嫌なことをしなくて済んだという安堵感もあった。
そのままバスルームに行こうとするとテツさんが
「まいがおかしくなっちゃった・・・」
と悲しそうに言った。
バスルームに行き、バスタブに溜まりゆくお湯を眺めながら、無言で泣いた。

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