村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

商売は売って喜び、買って喜ぶ

2007年05月15日 | Weblog
私はシステムを考えるとき、システムを動かすのは、そこに参加する人の心の問題ではなかろうかと思う。私はよく「真心商法」という言葉をつかう。お客様に対してウソをつかず、心の交流を大切にすることこそ商人道だというわけである。

ショッピングセンターの社長である私がこんなことをいうと、何か宣伝めいて聞えるかもしれないが、商売といえどもやはり、やはり心がすべてをきめてしまうのだから、まずは心の問題を解決してからでないとシステムは組み立てられないといいたいのである。

商売はすべてお客様の気持しだいである。いくらあいさつのしかたまでシステム化してその通りに実行しても、形式だけで心がこもっていなければたちまち見抜かれてしまう。

私が常に社員にいう「真心商法」とは儲かったから喜ぶという発想を捨てて、相手を喜ばせることができたから喜ぶという発想を自分のものにすることである。人間は誰でも他人を喜ばせることができれば、自分はもっとうれしいものである。簡単な発想でみんな知っていることだが、こと商売となるとすっかり忘れて、自分のことばかり考える商人が多い。するとその気持を見抜かれてしまって、商売はうまくいかなくなるのである。

相手を喜ばせるためには、できうる限り相手の利益を考えることが第一である。古今東西、良い品を安く売る店が繁盛しなかったためしはない。つまり、システムを組むときの基本姿勢に、それが消費者のためにどう役立つか、を考えていくことが大切であり、役立つシステムを実行すればやがて販売促進に結びつく。本気で相手の利益を考え、相手が喜ぶことで自分が喜べば商売は必ず成功するわけだ。

私はホームセンターオープン以来、ガソリン五リッター無料サービスを実行してきた。これはのちに公害問題で、ノーカー運動に反するという意味あいが出てきて中止したが、発想は「わざわざ車で来てくださったのだから往復のガソリン代ぐらいはこちらで持ちましょう」という考え方である。その分だけ商品を安くすればいいではないかといわれるかもしれないが、もともと価格はできる限り押えてある。

さらにその上五百円程度値引きしたところで、相手にこちらの気持が伝わらない。宣伝の一環ではあっても、誰のトクにもならない宣伝に金をかけるより、具体的に相手の利益になる方法を実行したほうがお互いによいのである。せっかく来店して下さったのだからガソリン五リッター差上げます、といって怒る人はいないはずである。

コーヒー、紅茶の無料サービスも同じ発想の上に行なわれている。加住の村内家具店の頃は商談室でお茶とお菓子を出していた。その基本を活かし発展させたのが、今のシステムである。

村内商法は百姓商法である。少しばかりドロ臭いかもしれないがスマートさ、簡略さを追求するより、人と人の心の交流を追求していったほうがよいということを、人里離れた家具店時代に学びつくしただけに、都会的などちらかといえば味気ないほどビジネスライクな商売はしたくないのである。

二宮尊徳先生は『凡て商売は売って喜び、買って喜ぶようにすべし。売って喜び、買って喜ばざるは、道に非ず』と教えておられる。

外渉にしても、テナント問題にしても、その他あらゆる販売戦略を考えるに際しても、基本にあるのは心であり、心だけが相手に通じる唯一のものではないかということなのだ。

ここで私が提言したいことは、戦後の日本は欧米の合理的精神をずっと学んできて、合理化することが最終目的のように思われてきた傾向が強い。だが、それで本当によかったのか、それで商売はうまくいったのか、企業は正しく運営されてきたのかということをもう一度考え直してみる必要があるめではないか。現代社会のあらゆる問題点は、ことによると、合理主義を一片の疑いもなく追求し続けたことによって生まれたのではないだろうか。

私の百姓商法-真心商法の提起を、検討していただける時代になりつつあるのではないか。 次へ