村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

革新を求め続けて(3)

2007年01月31日 | Weblog
モダンでカラフルな家具や生活雑貨で売り場構成した「Choice」は二十代、三十代のニューファミリー層の心を着実にキャッチ、週末の「Choice」売り場は若いカップルや子供連れのニューファミリー、さらにはシングル客でにぎわいを見せはじめる。

企業は生きものであり、売り場は舞台である。その舞台を生かすも殺すも役者、つまり商品次第だ。

さらにはどういう役者(商品)を抜てきし、その役者の魅力を引き出すかはプロデューサーやディレクターの力次第だ。小売り企業でいえばプロデューサーはマーチャンダイザーであり、ディレクターはセールススタッフである。

「Choice」はまさにそれら一つ一つの要素が渾然一体となって、相乗効果を発揮し、その成果は村内ファニチャーアクセス全体にも活気をもたらすことになる。

その活気がさらに「ブライダルChoice」の開発エネルギーを生み出す。購買ターゲットをニューカップルに絞り込み①婚礼タンスは舞台(売り場)の中心に置かない②花道から舞台に通じるスペースにはダイニング家具や生活雑貨を配置する③全体としてルームの発想をカナメとし、ダイニングルームやベッドルームなどの部屋をデザインスタイル別に再現する--など、さらに一歩突っ込んだ革新を追求したのが「ブライダルChoice」である。

ブライダルをテーマとしながらも、婚礼タンスをあえて主役から脇役へ回した道昌の決断は、さらに次の革新へつながっていく。

革新を求め続けて(4)

2007年01月30日 | Weblog
創業以来、一貫して″まごころ商法″、そして″百姓商法″を追求し続けてきた道昌。しかし、″まごころ″や″百姓″といった言葉を精神的支柱としながらも、経営環境の変化に現実的対応を的確に行ってこなければ、村内の今日はなかったはずだ。

道昌は「現実に対応しながらも、現実に流されない」村内の骨太な商法を「村内ファニチャーアクセスの発展への方程式」と呼ぶ。

ブライダルCbiceで見せたブライダル家具のショールームをアピールしながらも、「タンスを脇役に回す」決断はまさに、その「方程式」から生み出されたものだ。

業界の常識を外れたタブーへの挑戦。古い業界慣習を打破する先見性と実行力は、その方程式を解いていけば、必然的に至る解答ともいえる。

たとえば、その方程式はお客さまのためにも活用される。八王子本店の「Choice」売り場のレイアウト案内図がその一つだ。同案内因を見ると、タテ軸にモダン、ナチュラル、カントリーといった″スタイル″、ヨコ軸にリビング、ダイニングといった″ルーム″が表示されており、単なるフロアマップではなく、マトリックスになっていることが分かる。

つまり、お客さまはどの部屋の家具やインテリア雑貨が欲しいのかをまずヨコ軸で見、ついでに自分好みのテイストをタテ軸で見、その交差するところをマトリックス通りに進めば売り場のアチラ、コチラをさまようことなく、必要なルームのインテリアエレメントを、自分好みのティストで揃えることができるという寸法だ。まさにお客さまのための方程式である。

革新を求め続けて(5)

2007年01月29日 | Weblog
平成六年、八王子本店の増床リニューアルに当たって取り組んだ「Choice」の新展開、そして、それに続く「ブライダルChoice」への挑戦姿勢は、さらに平成八年三月にオープンした厚木店の売り場づくりに引き絶がれていく。

道昌は厚木店の開設に当たっては、村内健一郎常務をはじめとする若い世代に店づくりの方向性をまかせるが、その基本についてはもとより、健一郎常務およびスタッフと日々、事前の議論を重ねていく。

その議論の結果、厚木店は「(お客さまの)ホームライフの充実」をテーマとし、創業以来、道昌が中心となって構築してきた家具専門店としてのあらゆるノウハウを注ぎこんだ革新店としてスタートすることになる。

もとより、既存店においても、道昌は時流に応じて売り場の改革をはじめとする様々な自己革新に取り組んできたが、「新しい洒は新しい革袋に」の企業姿勢で、厚木店という真っ白いキャンバスに、これまでの蓄積してきたノウハウと新たな方向性を思い切り描き込んでいく。

道昌は、そして健一郎は「ホームライフの充実」実現へのキーワードとして①スタイル②コーディネート③リーズナブルプライス--の三点を重視、厚木店の具体的マーチャングイジングとそれにもとづく売り場展開を図る。

まず、スタイルについては、これまで村内が取り組んできた″ルーム提案″の内容をさらに充実させるため、モダン、カントリー、クラシック、ベーシックの四つのデザインスタイルをアピールすることになる。

革新を求め続けて(6)

2007年01月28日 | Weblog
道昌は「販売サイドが今後、一般生活者の人々ヘコーディネート提案するに当たっては①スタイル②カラー③価格--の三点がポイントとなり、その三点が整合性をもたなければダメだ」と考える。

道昌のそうした考え方をベースに、村内健一郎常務をはじめとする厚木店開設スタッフは①スタイルはモダン、カントリー、クラシック、ベーシックの四つを基本に②プライスはリーズナブルプライス③カラーはインテリア全体との調和--を念頭におき、国内はいうまでもなく欧米、とりわけヨーロッパを核に、グローバルな視野でマーチャングイジングを展開する。

道昌は具体的な商品セレクトを思い切って若手にまかせるが、まかされた若手は責任を強く感じながらも、商品発掘のために張り切って国内に、そして海外へ飛び出していった。

ちなみに、道昌の考えるリーズナブルプライスは、″安い″とは全く違った次元にある。高いか安いかの単純な″絶対価格″ではなく、″納得できる価格″を意味する。十万円の商品にリーズナブル性があれば、百万円の商品にもリーズナブル性がある、と道昌は考えるのだ。

その考え方が村内ならではの″旭川工芸家具展″や″飛騨高山・匠の家具展″などのクオリティーとオリジナリティーの高い商品を核とした最近の催事を次つぎと生み出し、また、それらの企画を、安物販売志向の持流の中で、見事にヒットさせる大きな原動力ともなっている。

革新を求め続けて(7)

2007年01月27日 | Weblog
厚木店の売り場づくりに当たっては、村内がこれまで蓄積してきたノウハウを、さらに革新という網目でふるいにかけた新しい試みがいくつか取り入れられている。

その一つがデザインスタイル別にプライスタッグを色分けした点だ。厚木店は八王子本店のChoiceなどに見られるルームの発想をさらに一歩先へ進め、モダン、カントリー、クラシック、ベーシックの四つのスタイルを具体的にルーム展開しているが、平場に置かれている様々なデザインスタイルの家具を、お客さまにスムーズにセレクトしてもらうためにはどうしたらよいか--道昌、健一郎、そして開設スタッフは、お客さまの立場でより分かりやすい方法を追求する。

その結果、デザインスタイル別にプライスタッグを色分けする、という方法が浮かびあがってきた。

そうすることで、お客さまは同じ色のプライスタッグをたどっていけば、同じデザインスタイルの家具をセレクトできる。ちなみに、プライスタッグは村内ファニチャーアクセスのロゴマークが標示された大きめのもので、色の区分けはだれの目にも判然としている。

まさにコロンブスのタマゴである。しかしそれはいきなりできたことではない。お客さまの立場で売り場づくりを常に追求、革新に取り組んできた道昌の姿勢があってのことである。

革新を求め続けて(8)

2007年01月26日 | Weblog
道昌が歩いてきた道を振り返る時、そこに一貫して横たわっている二文字がある。″革新″という二文字である。

道昌が標傍する商売哲学″まごころ商法″、″百姓商法″を村内の精神理念とすれば、このあくことなき革新への挑戦は、村内を動かすエンジン部分の技術革新、それも自らの力による技術革新といえる。

理念だけが先行する企業、経営技術だけが優れた企業は多い。しかし、理念と技術が一体化した企業は意外に少ないものだ。村内はその数少ない企業の一社といっていい。

道昌は今なお「日本のメーベルフィスターを目指す」を口にする。スイスのメーベルフィスターに自社の方向性を見いだし、そのやり方に道昌なりの技術革新を施し、着々と歩む。八王子本店を核として府中、立川、南大沢、相模原、厚木と店舗展開し、さらに横浜店の開設準備にいま取り組む。

いずれの店にも共通項がある。第一に旧都心から車で一時間前後の郊外立地にあるこ
と。第二に幹線道路に面していること。第三に広い駐車場をもっていること--などである。フィスターの戦略的立地に似る。

しかし、道昌が日本のフィスターを目指したのは今から三十年も前である。モータリゼーション化が店の立地に大きく影響すると考える人は、その当時、まだごくごくわずかしかいなかった。考えてもそれを実行に移す商業者はさらにいなかった。

人が考えない、考えても実行に移せないことに取り組む人を革新者と呼ぶなら、まさに道昌は革新の人である。

革新を求め続けて(9)

2007年01月25日 | Weblog
企業が常に革新を持続していくためには、やや禅問答めくが″こだわりつつ、こだわらない″精神が必要だ。

道昌の革新へのあくなき追求は、まさにこの″家具インテリア販売にこだわりをもちつつ、なお、それだけに拘泥しない″日常姿勢にあるといえそうだ。

そうした姿勢が村内美術館、村内外車センター、村内ハウジング、アイアイプラザなどの様々な周辺事業着手につながってきた。

これらの周辺事業は、道昌の「家具インテリアの延長として、生活のエンターテイメントをお客さまに提供する」という考え方にもとづき展開されているものだが、いずれの事業も道昌にとっては家具インテリアとの関連性の中にある。

″絵画はインテリアの発展″という視点で創設された村内美術館。BMWの販売代理店、村内外車センターは″動くインテリア″自動車を扱う。近年はログハウスの販売・建設を主事業とする村内ハウジングは、家具インテリアを包含する″住まい″そのものだ。

いずれの周辺事業とも、家具インテリア販売のみに拘泥していたのでは展開不可能であり、逆に、家具インテリア販売に限りない夢をもっているからこそ、可能な事業であったともいえる。

そうした道昌の一見矛盾するようでいて整合性をもつ革新志向はたとえばミレー、コロー、クールベ、ルノワールなど十九世紀のフランス絵画を中心に百四十点の作品を常設展示する村内美術館の高質な内容に凝縮されているといえる。

革新を求め続けて(10)

2007年01月24日 | Weblog
道昌はベッド、リビングソファ、収納家具などを品目別にズラリと平場構成することを否定しない。ある特定の家具を購入したいと考えるお客さまには、それはそれで意味のある陳列方法だからだ。

しかし、家具はほとんどの場合、住まい生活と密着したものであり、基本的にはワンハウスあるいはワンルームとの関連性の中で売り場を構築していくべきだと道昌は考える。

つまり、家具は住まい生活に必要不可欠なエレメントであり、それだからこそ、売り場にはお客さまが思い描く暮らしの″夢″や″あこがれ″が表現されていなければならない、と道昌は考えるのだ。

そうしたお客さまの″夢″や″あこがれ″に応えていこうとする道昌の姿勢の延長線上に、たとえば村内アートギャラリーがある。八王子本店には美術愛好家には広く知られた村内美術館があるが、こちらのアートギャラリーは日本画、洋画、掛け軸、リトグラフなどの美術品を販売する場である。

また、八王子本店内にはレストランのルーブルがあり、本格的なフランス料理を楽しむことができるのも、道昌の住と食の相関憧を強く意識したところに起因する。

村内美術館で絵画を鑑賞し、レストラン・ルーブルで食事を味わう--まさに、生活者にとって八王子本店は道昌のエンターテイメント心を存分に楽しむことができる世界に希有な家具販売店である。

革新を求め続けて(11)

2007年01月23日 | Weblog
民族の特性を農耕民族型と騎馬民族型の二つのタイプで区分けした場合、道昌は自らの生き方、そして自企業の経営展開を農耕民族型と規定する。

この二十年間で道昌が出店展開した店舗数は、八王子本店を核に、府中店、相榎原店、立川店、南大沢店、厚木店--の六店舗であり、そのスピードは決して早くはない。これらの店の他に大月店、原宿店などもあったが、すでにスクラップしている。

その背景には眼前の動物、つまり獲物(顧客)を追い求めるというよりも、土地(市場)を耕やし、種(ウォンツやニーズ)を蒔き、その実(顧客)を収穫するという道昌独自のやり方がある。

ただし、農耕民族型とはいえ、道昌のやり方は創意工夫を追求する、どちらかといえば研究実践型であり、ただただ忍従型の農民タイプではないということだ。

そうした道昌の開拓者的農耕経営の姿勢を端的に表しているものに会社案内がある。最新の会社案内のテーマは″draw(ドロー=引き出す)″。その前が″Flexible Eyes(柔軟な目)″。いずれも単なる会社案内ではない。道昌の人生哲学、経営思想がそのバックボーンとなっており、求職活動の学生から経営のプロにいたるまで、思わず引き込まれる中身の濃さをもつ。

今、村内がなにをしようとしているのか、そして、今後どのような方向を考えているのか--″draw″は、村内を超えて業界そのものを考えさせられるドキュメントでもある。

革新を求め続けて(12)

2007年01月22日 | Weblog
最新の企業案内″draw″の冒頭から。

 「あなたの洋服ダンスの、一番右上の引き出しには、何がありますか?
 会社のデスクの、膝の上の平たい引き出しには、何がありますか。
 もちろん中味は人それぞれ。でもたくさんのモノを収納するには、できるだけ多くの引き出しがあったほうが、何かと便利ですよね。
 私たち村内ファニチャーアクセスにも、たくさんの引き出しがあります。
 そしてその中には、たくさんの『アイデア』が詰まっています。
 ニューマーケットをターゲットにした家具売り場を考えてみよう、とか。
 都心から少し離れた場所に店舗展開をしたらどうなるか、とか。
 美術品や自動車、ログハウスも日常生活の延長といえないか、とか。
 村内ファニチャーアクセスは、新しいアイデアの引き出しを、どんどん引き出して、現在の家具専門店の在り方を模索しているのです。結論はまだ見えていません。
 でも、だからこそ面白いと思うのです」

道昌の日常姿勢が気張りや気取りのない散文詩形態のコピーに表現されており、ついつい次ページへ目を移したくなるような企業案内である。

内容は以下①店舗内店舗「Choice」の試み=新家族が語る″選択″の時代②村内式売り場づくりの戦略=「洋8畳」を再現する③店舗展開の根底にあるもの=日本のメーベルフイスタたれ④生活のエンターテイメント=クールベのある風景--などと続く。