村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

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攻撃精神

2007年06月04日 | Weblog
2.父に鍛えられた“村内精神"

村内家は八王子市の北部にある加住という村の地主であった。遠く戦国時代にさかのぼれば、北条家の家臣の一家だったといわれている。やがて、北条が豊臣秀吉に破れることによって土着したと伝えられているが、豊臣時代が終わり徳川時代に入ると、江戸の甲州ロを守る幕府直属軍団として歴史上名高い「八王子千人隊」の一家として、幕府に迎えられる。「八王子千人隊」の平常時の仕事は日光東照宮の警護であった。東照宮はご存知の通り、徳川家康を祭ったところであり、徳川幕府の精神的支柱でもあった。その東照宮を警護するわけであるから、当時の千人隊士の袴りは大変なものだったらしい。家系的には、私は十七代目ということになっている。

さて、明治維新になったときの当主は村内宇三郎といった。肖像画で見ると、なかなか立派な風貌の人物だが、事実、村で、名主的な仕事をする一方、八王子の代表的な産業であった織物業も行なうなど、実力のある人物だったという。

宇三郎は私の祖父である。宇三郎の長男は村内栄一といって、この人は私の伯父に当たる。

栄一という人も若い頃から事業家的な気質に恵まれていたらしく、小学校を出ると同時に、親に無断で千葉県の醤油醸造屋に丁稚小僧として住み込み、年季が明けると八王子に帰ってきて醤油メーカーをはじめた。農家の長男であるから、そこまでする必要はまったくなかったのだが、それでは気がすまなかったのだろう。この人は戦後、醤油製造から家電販売に転進し成功を収めた。現在のムラウチ電気が、それである。

私の父、村内万助は字三郎の次男であった。当然、村内家を継ぐ立場にはなかったのだが、長男が農業より事業家への道を選んだので、成り行きで家を継ぐことになった。

兄が千葉から帰ってきたら、家を継ぐものとばかり思っていた父、万助は、典型的な次男坊であった。小さいときから腕白で、人一倍元気がよかったという。ごく若い頃は競争馬を買って、前橋、伊勢崎といった草競馬場を転戦して歩いたというエピソードもある。

村内万助は現在の八王子工業高絞、当時の八王子染織学校を卒業して、甲種合格で近衛騎兵連隊に入隊した。皇居の守備隊であるから、身体検査、学歴、家柄などすべて厳重に審査される。身長は一番低かったが、この名誉ある連隊に配属されることになったのだ。

軍隊時代の村内万助のエピソードは、軍刀術が抜群に強かったことである。子供の頃から攻撃精神が旺盛で人一倍負けず嫌いだったのが、軍刀術でも負けたくないという気持に結びついたのだろう。

軍刀術にはこんなエピソードがある。ある夜、万助は野戦の演習に出て、何か大切なものを落してきて、営倉に入れられてしまった。ところが、翌日、連隊の軍刀術の中隊対抗試合があった。万助のいない中隊はどんどん負けていく。中隊長が「村内はどうした」というと、営倉に入れてありますという。すぐ出して来いというわけで出場した万助は連戦連勝、ついに自分の中隊を優勝させてしまった。もちろん、営倉は取り消し、中隊長以下に大いにほめられたという。

村内万助が、私の母、正子と結婚した事情については、あまり詳しいことはわからないが、正子は当時十九歳で庄屋の娘だったという。たいへん美人で働さものだったらしい。明治生まれの女性の典型で、我慢強く、常に夫につくすというタイプだった。

嫁に来たときも、父と母は盛大な結婚式はしていないという話である。父は次男で、家を継ぐとは思っていなかったので、やがて財産でもできたら盛大にというつもりだったらしい。

さて、父はというと、軍隊に行ってきて、かなり人間ができてきたものの、まだ若く、次男坊気質も完全には抜けていない。家業の農業よりも、競争馬を連れて歩いたりするほうに熱心である。地主で小作米も入ったからそれでもやっていけたのだが、そのため、母は大変苦労したらしい。

地主とはいっても、自作の田畑もあるし、豚も五、六十頭飼っていた。座って小作人を指図しているわけではなく、とても忙しいのである。

父がその調子で、あまり家業に身を入れてくれない。母はそのぶんだけ働かなければならなかったわけである。田畑へ出るし、豚の世話もする。豚がお産をするなどということになると、豚小屋に徹夜で泊り込み、生まれたばかりの仔豚の面倒を見るといったことも、珍しくなかったという。それでも明治の女だったから、不平をいうわけでもなく、黙々と働いたらしい。
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