社員教育は精神的な基盤づくりからはじめなければならないといったが、こんなことを社員の前で繰り返し説教したところで効果は期待できない。
「さんざんいって聞かせているのに、少しもいうことを聞かない。うちの社員ドモは……」
とオニのような目付きをする類いの社長は、そもそもはじめから経営などしないほうがいいのである。プロ野球の監督さんなら、たちまち「休養」であろう。選手が作戦通りに動いてくれないのはそもそも監督の指導が悪いからであり、方法論がないからである。
先ほどからプロ野球の話ばかり持ち出しているが、実は村内ホームセンターは社員の能力向上にゲーム化のシステムを採用しているのである。仕事をゲームを楽しむようにできないかというめがゲーム化の発想の元であり、どのような形でゲームの様式を仕事に取りいれることができるかというのが方法論である。
現代の、のんびりしていて夢の多い若い社員に、仕事が楽しかろうはずがないのである。早く帰宅してレコードを聞こう、休みにはドライブヘ行こうといった遊びに楽しさと生きがいのすべてを託していては、仕事は必然的になおざりになってしまう。それでは私も困るし、他の社員も困る。何とか、遊びもおもしろいけれど、仕事もおもしろいという気持になってくれる方法論を組み立てなければならなかった。
楽しさの要素の導入ということで出てきたのが、コンテスト方式であった。支店単位、あるいは売場単位、個人単位で、業務上の適当な項目を選び出し、一定の期間をきめて競争するのである。「ヨーイドン」ではじまり、ゴールに三着ぐらいに入ったチームや個人を表彰し、賞品や賞金を出すというものである。たとえば、前に述べた「関連商品販売コンテスト」もこのひとつである。
楽しさの要素を導入することによって、経営戦略に従った作業方針を早く身につけてもらうことである。社員に競争させてすぐ売上げを上げようなどと、目先きのことにこだわっているわけではない。ましてコンテストの成績で社員にランクをつけてどうこうなどという発想は、まったくないのである。だから、賞品や賞金も遊びの域からはみ出してしまうほどの高いものや、高い金額は出さない方針である。あるコンテストで社長賞をとった社員が、賞金の封筒を開けてみて、
「あいかわらずMHKですね」
と私をからかったこともある。MHKとは村内薄謝協会という意味なのだそうである。さらにゲームであるから、採点項目もはっきりしておかなければならない。審判役は私をはじめとする経営スタッフが主で、ときには外部から学識経験者に参加していただくこともある。
採点項目と公正な審判を、スタートのときに全社員に公表してコンテストを行なうゲーム方式の社員教育は好評である。全員がおもしろがって仕事と遊びを「混同」してくれるのである。
コンテストがはじまると、職場の活気も違ってくる。人間はなぜか競争が好きな生物である。その競争も、生活をかけるといった厳しいものではなく、運動会程度のものが一番精神衛生上よいらしい。あまりヤル気のないような顔をしている社員も、コンテストになると負けたくないという気持になるのである。
コンテストが終わったとき、成績は別として全員が何らかの学習をしている。こちらが覚えてもらいたかった作業能力が程度の差こそあれ、前とは比べものにならないほど身についているのだ。どんな形での教育よりゲーム方式の社員教育にはすぐれた面があり、今後もいろいろな形でコンテストを行なっていきたい。 次へ
「さんざんいって聞かせているのに、少しもいうことを聞かない。うちの社員ドモは……」
とオニのような目付きをする類いの社長は、そもそもはじめから経営などしないほうがいいのである。プロ野球の監督さんなら、たちまち「休養」であろう。選手が作戦通りに動いてくれないのはそもそも監督の指導が悪いからであり、方法論がないからである。
先ほどからプロ野球の話ばかり持ち出しているが、実は村内ホームセンターは社員の能力向上にゲーム化のシステムを採用しているのである。仕事をゲームを楽しむようにできないかというめがゲーム化の発想の元であり、どのような形でゲームの様式を仕事に取りいれることができるかというのが方法論である。
現代の、のんびりしていて夢の多い若い社員に、仕事が楽しかろうはずがないのである。早く帰宅してレコードを聞こう、休みにはドライブヘ行こうといった遊びに楽しさと生きがいのすべてを託していては、仕事は必然的になおざりになってしまう。それでは私も困るし、他の社員も困る。何とか、遊びもおもしろいけれど、仕事もおもしろいという気持になってくれる方法論を組み立てなければならなかった。
楽しさの要素の導入ということで出てきたのが、コンテスト方式であった。支店単位、あるいは売場単位、個人単位で、業務上の適当な項目を選び出し、一定の期間をきめて競争するのである。「ヨーイドン」ではじまり、ゴールに三着ぐらいに入ったチームや個人を表彰し、賞品や賞金を出すというものである。たとえば、前に述べた「関連商品販売コンテスト」もこのひとつである。
楽しさの要素を導入することによって、経営戦略に従った作業方針を早く身につけてもらうことである。社員に競争させてすぐ売上げを上げようなどと、目先きのことにこだわっているわけではない。ましてコンテストの成績で社員にランクをつけてどうこうなどという発想は、まったくないのである。だから、賞品や賞金も遊びの域からはみ出してしまうほどの高いものや、高い金額は出さない方針である。あるコンテストで社長賞をとった社員が、賞金の封筒を開けてみて、
「あいかわらずMHKですね」
と私をからかったこともある。MHKとは村内薄謝協会という意味なのだそうである。さらにゲームであるから、採点項目もはっきりしておかなければならない。審判役は私をはじめとする経営スタッフが主で、ときには外部から学識経験者に参加していただくこともある。
採点項目と公正な審判を、スタートのときに全社員に公表してコンテストを行なうゲーム方式の社員教育は好評である。全員がおもしろがって仕事と遊びを「混同」してくれるのである。
コンテストがはじまると、職場の活気も違ってくる。人間はなぜか競争が好きな生物である。その競争も、生活をかけるといった厳しいものではなく、運動会程度のものが一番精神衛生上よいらしい。あまりヤル気のないような顔をしている社員も、コンテストになると負けたくないという気持になるのである。
コンテストが終わったとき、成績は別として全員が何らかの学習をしている。こちらが覚えてもらいたかった作業能力が程度の差こそあれ、前とは比べものにならないほど身についているのだ。どんな形での教育よりゲーム方式の社員教育にはすぐれた面があり、今後もいろいろな形でコンテストを行なっていきたい。 次へ