村内まごころ商法 & 剛毅の経営

昭和53年に出版された本と、ホームリビングに掲載された記事でたどる、村内道昌一代記

本店およぴ支店網

2007年06月06日 | Weblog
八王子本店がオープンして三年のちの昭和四十七年十一月、府中に第一号の支店が完成した。本店ほどではないが、やはり家電、ピアノ、フトンなどのテナントを入れた大型店である。さらに翌四十八年には相模原店、五十年には大月店、五十一年には立川店をオープン。現在は町田市近郊にも五番目の大型支店を建設する予定である。

企業にとって、拡大は宿命的課題といってもよい。現状維持、あるいは縮小といった発想を持てば、その時点ですでに競争に負けるという宿命をいやでも負わされているのだ。その意味で、現在の支店網を見ていれだければ理解していただけると思うが、村内ホームセンターの拡大戦略は、「地域一番店」を、ユーザーが車で気軽に行ける程度の距離に置き、面すなわち商圏を埋めていくという方式である。地域一番店とは、その地域では一番大きい専門店という意味である。村内の場合はもちろん、家具を中心とする住いの総合店舗の地域一番店である。その地域の主要国道ぞいに大型店舗を置いて、住いのことならなんでもその店でまにあうということになれば、車で来られる範囲のユーザーなら必ず一度は見にくるはずだし、他店に比べて商品そのものが安くて良質のものであれば売れるに違いないということである。そして現実にもその通りになってきたのである。これが地域一番店でなく、他に強力な競争店があれば、商品数をはじめとして、さまざまな不利が予想されるから、巨大店舗方式こそ、現代の専門店の拡大方式として正しかったわけである。

村内ホームセンターの販売戦略の基本は以下の通りだが、専門店のもうひとつの大きな課題は商品供給の問題である。並みの商品を並みの値段で売るのなら問題はない。しかし私の基本理念にある「良品廉価」、すなわち良い商品を他より安く売るのが専門店の本来の姿勢であるという方針を実行に移すためには、普通の方法ではだめなのである。ただ単に安く売るだけならメーカーを叩けばいいし、金融品など裏のルートから商品を入れることも可能であろう。しかしこのルートでは安定供給はないし、まして良品ということになると不可能になってしまう。

優良商品を長期にわたって安定して仕入れるにはどうしてもメーカー側の協力が必要である。ご存知の通り、日本の家具メーカーは家内工業的な規模がほとんどだから、メーカーと専門店はモノとカネの交換といった単純な交渉ではなく、場合によっては親戚付合い以上の親密さがないと、良い商品を開発し、製作してもらうことができないという事情である。その点、村内ホームセンターには「村内会」というメーカーの集った親睦団体があり、この会の加入メーカーによって商品のはとんどが供給されている。私はメーカーに対しては常に“親戚以上のお付き合い"をモットーに相手の立場を第一に考えるよう努めてきたつもりだが、それがホームセンター成長の蔭の大きなカになっているのである。 次へ