新作 ～ 「妖精の結婚式」 その５５

ども、今日は七夕ですねっ。

毎年この祭りには、何か清々しくも壮大なものを感じるのですが、
残念ながら一度もそれを表現できた試しがありません。

今年こそはっ、と思ってたのですが、この「妖精～」にかかりっきりで、
今年も無理でした。

いつかはチャレンジしてみたいです。

あ、それが今年の七夕のお願い事かな、うん。

いや、その前に目の前の茶菓子を何とかして下さい、が先ですね。

皆さまは、どんなお願い事をお持ちですか。

続きでーす。


2014年6月10日～ブログ直接投稿　「妖精の結婚式」　その５５

　　胸の中の固い　真っ暗なものが
　　ドクン　と震えた気がした
　　バラを買って　アパートに帰る
　　花びんがあったはずと　キッチンを漁る
　　どうしてもこの花に　水を与えてやらねば

＜つづき＞


コツンと　手に何かが触れた
作りすぎたのと言って　何年か前に
母親に持たされた　梅酒のビン
要らないと言うのに　聞かなかった
ビンに転がる　実家の庭の丸い梅の実

花びんは　その傍に置いていた
はさみを取り出し　蛇口から水を流す
花の持ちのために　水の中で茎を切る
ざくっと切って　花びんに入れた
金属ガ痛イ・・　ああ誰かそう言ってたっけ

部屋が暗いと　さやかさんは思った
部屋は　灯りをつけてなかった
よくこれで見えたなと　スイッチを押す
ザクリと電気の光が　視界を切り裂いた
ペンキのようなバラの赤が　目に痛かった

少し迷って　電気を消してみる
物みな影に見える　暗い部屋で
バラだけが　うっすら明るく見えた
花の赤も　葉や茎の緑も
うすぼんやりと　でも確かに見てとれた

これ・・ただのスーパーの花だよね
さやかさんは　花をまじまじと見た
バラといっても　香りはない
ただ　青くさい匂いがした
あの庭のと違うなと　花びらに触れた

外からの明かりを頼りに
花びんを　テーブルに置いた
台所に戻って　数年ぶりに梅酒を取りだす
梅の実がビンの中で　ほんのり光って
物思わしげに　揺れていた


＜つづく＞



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※修正のご報告：2016年1月9日
梅の実が液体の中で　ほんのり光って　→　梅の実がビンの中で　～