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まかろんのお茶会

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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その152

2014-08-23 21:35:11 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
どもども。静かな夜です。

続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その152

  ・・さま? 妖精はつぶやいた
  ふいに身の裡に 水が湧いたような気がした
  暗い人影は 微笑んだようだった
  紫陽花の精は ぼんやりと笑い返した
  暗い人影は 渇いた地面にしゃがみこんだ

<つづき>

暗い人影は 紫陽花を掘り返し始めた
いつの間にか その繊細な手には
銀色の小さなスコップが 握られていた
スコップは 薄ぼんやりとした明りの中
ギラリと 光を弾いて光った

・・お待ちください! と妖精は言った
お気持ちは嬉しゅうございますが けど・・!
心配シナイデイイカラネ と人影は言った
君ハ 僕ノ家ノ庭ニ植エテアゲル
人影は花をなでた 大丈夫ダヨ・・・

ああこれはと 妖精は思った
百年前に あの方が言ったこと
舶来品として連れてこられて
陰気な花だと捨てられそうになった私を
留学先でよく見た花だと 拾ってくれた

百年 この家の人は良くしてくれた
紫陽花は 根を踏んばりながら思った
主を失い代を替えても 戦の気運に
重くなる空気の中 家を守り庭を守って・・
干上がる夏には じょうろの甘露・・・

アジサイがやっと 世間で認められると・・
妖精は スコップを一心に動かす
繊細な手を ざわめく思いで眺めた
この家の人は 表に挿し木をしてくれた
うちの自慢の花を見てもらおうと・・・

スコップは ざくざくと
渇いた地面を 掘り進めていった
暗い人影は ぐらぐらと揺れ始めた
紫陽花を見上げて 笑った
眼鏡の奥の目に 桃色の娘が映っていた

<つづく>


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※修正のご報告:2016年1月10日
陰気な花だと捨てられそうになった私に → 陰気な花だと捨てられそうになった私を
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