波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

外国系団体による米国報道媒体界の調略 Washington Timesの例 其の3

2005-07-08 01:07:17 | メディア


第一回目の最後で触れた,ある米月刊誌にWTの社主とみなせる統一教会教祖文鮮明と北朝鮮の金正日との密着関係を報じた記事は以下の網站で全文が読める.

The American Prospect, Volume 16, Issue 7 (July 2005)
Dear Leader’s Paper Moon
http://www.prospect.org/web/page.ww?section=root&name=ViewPrint&articleId=9868

雑誌や新聞の紙面構成から,保守対革新,右翼対左翼というような政治的立場による二分法で分類するのが世の中の恒だが,最近の米報道媒体の動向から判断すると,このような二分法は不十分であり,もう一つの判断基準を加えることが重要と思われる.それは,事実と反する報道を行ったことが後続の報道等で判明した場合,謝罪し訂正することを名目でなく実質的に実践しているか,どうかである.以下,本網誌では,実質的に実践していないと判断されるものを宣伝系と分類し,実践していると見做されるものを非宣伝系と呼ぶことにする.この二つの判断基準からすると,前掲誌は,左翼・非宣伝系となり,批判対象のWT(Washington Times)は,右翼・宣伝系となる.
 この記事中には,日本テレビ系列のザ・ワイド等に出演の有田芳生(ありた よしふ)氏から得た情報が幾つか挿入されていたので,有田氏の網站を覘いてみると,以下のような関連網頁があった:

南北朝鮮問題に果たす 統一教会の狙い
http://www.web-arita.com/touitu4.html

統一教会の世界戦略 ―とくに北朝鮮との関わりで―
http://www.web-arita.com/touitu6.html

 これらの網頁と当該記事を対照させると,当該記事は,基本的に,日本の報道媒体界では周知の事実に米政界とWP=統一教会の関係を追跡したものを加味した構成になっている.ただし,有田氏は軍事関係の話題に余り興味がないのか,前掲の網頁では当該記事中で触れられている旧ソ連の廃棄潜水艦の北朝鮮への売却に関する統一教会系の日本の商社(?)の関与等は言及されていない.当該記事中に引用されている米国防情報局(Defense Intelligence Agency(DIA))の情報では,売却の背後に統一教会の存在を認めていて,世界の軍事業界では,この売却が北朝鮮での誘導弾開発において胴体安定化に貢献したことが周知の事実となっているようだ.
 このような米国と敵対関係にある北朝鮮に対する利敵行為に関与していながら,米政界の保守派領袖(例えば元大統領のレーガンやブッシュ)と緊密な関係を維持しているWT=統一教会は,ある意味で不可思議な存在である.国際勝共連合の主宰者等反共の旗印を掲げながら,現存する数少ない共産国である北朝鮮に対し多大な投資を行い,また先代及び現在の同国の首領と親密な個人的関係を維持している.結局,対立点である筈の「共産主義」や「宗教」などは,少なくとも北朝鮮に対しては,飾りでしかなく,重要なのは,朝鮮系という同胞意識と所持している力や指導・支配の形式に行き着くのだろう.出身地の北朝鮮の首領と対等に口がきけるまでの財力と世界(特に米国)での地位も得た文鮮明にとって,かつての北朝鮮に対する反共の怨念の炎は消えさり,残ったものは金持ち喧嘩せず的な同胞同士の相互提携ではなかったか.
 このような根底にある民族感情,同胞意識が反共に勝るというような文鮮明の実際の判断の結果を直視すれば,元々純粋に反共を確信してWTや統一教会に接近していた非教会員の米人ならば,言行不一致に幻滅して統一教会やWTから離反していくのが自然と思われる.しかし,そのような大量離反が現実に発生していないことは,統一教会やWTとの繋がりは多分に迎合的なものである,との証左と言えよう.米国の保守派を代弁する主要宣伝系新聞としての貢献の前では,北朝鮮への利敵行為には目を瞑るという一貫性のない「反共」の実践の姿がそこにある.
 米国で海外からの邪教集団として移民法その他で排除されないためには,政治家と何らかの繋がりが不可欠であり,反共という共通利害による反共保守系政治家との提携が生まれ,その提携を磐石にするのもが米国首都における保守宣伝系日刊紙の発行だったのに違いない.米国における普通の報道媒体が職業倫理上恥ずかしくて出来ない宣伝系新聞という「汚れ役」を敢えてWTが演じられたのは,社主が統一教会という潤沢な資金力を持ったcult系宗教団体であったことは言うまでもないだろう.宗教団体を便宜的に利用しただけのつもりが,いつの間にか逆に利用されていたという構図は,日本の自民党だけでなく,米国についても当てはまるだ.
 
註:
米国における文鮮明の活動については以下の網站が詳しい:

Archive:Dark Side of Rev. Moon
http://www.consortiumnews.com/archive/moon.html

数ヶ月前,二階堂ドットコムに以下のような投稿記事が掲載された:

カルト教団の企業も「宗教マフィアのフロント」として監視せよ 【4/23(土)6:30】
http://www.nikaidou.com/./clm2/c2_050501.html

この記事はかつて米国の波士敦(Boston)に在住されていた方からの投稿が元になっていて,当地における寿司屋での体験話が触れられている.波士敦の寿司屋及び鮮魚屋の中には統一教会系のものが多いというのは,当地に昔から在住する邦人の間では常識になっていて,店屋の屋号に「花」の文字が含まれているかどうかが見分け方とされている.

© 2005 Ichinoi Yoshinori. All rights reserved. [Last Update:07/10/2005/ EST]

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして。 (枇杷)
2005-07-10 21:01:10
ヒロさん日記から参りました。

実は、私の従姉が山崎浩子さんや桜田淳子さんと同じ回の合同結婚式に行ってそれっきりです。個人的にクリスチャンなこともあり、統一の脱会者の方も拙ブログにかなりこられます。現役信者や他の宗教の方が書き込みやTBをするようなことがあるんで、直にご紹介してないのですが、「摂理」のお話が今その脱会者さんのところにも出ているのです。親北も何も話が出ていたのですが、アメリカのマスコミも捉えていましたか。



参考になりました。有難う御座います。
返信する