医療と適当に折り合いをつける内科医

医師国家試験浪人後の適当な医療を目指す内科医を追います

雷電は医療を改革するべし

2005-09-11 03:42:51 | 医学ネタ
少し前のことになるが、我が県で大雨雷雨のあった日。いや、厳密に言うと私はずっと病院内にいて雨が降ったことすら知らず、あったらしい日だったのだが。その時私は心臓カテーテル室で外回りの仕事を必死でしており、何人目かの患者が手術を終えて終了した時であった。突然カテ室のモニタの画面がプチンと切れてしまい一部の機械も使えなくなってしまったのだ。すると隣の部屋では大騒ぎ。隣のカテ室では子供のアブレーションカテーテルの真っ最中で突然機械がストップしてしまったのだから!医師も技師さんも大あわてで連絡を取り始める。すると別のCT室やMRIでも機械が使えない事態が起きていたのである。幸い電子カルテは使える状態で病棟内の電気、手術室でのトラブルはなかった模様。補助電源が必要最低限のところで作用していたようであった。

しかしひやっとさせられた。万が一心カテ中しかも右冠動脈にカテを入れているような状態でこれが起きたらどうなっていたことか!まぁモニタが映らなくても手探りで抜いてくればいいのかもしれないが、危険きわまりないことであった。結局この事件、○○電力中枢への落雷で大規模な停電が発生した模様で一時だけではあったのだが広範囲で停電があったらしい。しかし停電時いろんなことを考えさせられた。我が病院では電子カルテが進んでおり、万が一長期の停電が発生した場合ほとんどのカルテは読み出し不可能となる。(一部のS科などは電子カルテを全て印刷して紙カルテにもするという手間をかけておりこういう時には役立つが資源の無駄という説も・・・)これだけでももはやまともな医療は期待できない。電子化が進むとオーダー一つでも停電で入れられなくなってしまう。一度オーダリングシステムを採用したところはもう一度紙伝票や口頭支持でのオーダーに戻すのは至難の業であろう。

だいたい今電気がなければエコーもCTもMRIも採血すらもできないわけで。きっと人並み以下の医療しかできないんだろうなぁと。電気なしでできる医療をわれわれは捨ててしまったのだから。(発声する、祈る、触れる、ひねる、押す、聴く、これらの技術はすべて電気の技術にとってかわられたのだ)薬に関してもかつては本草学などあったのだがもはや自然に手に入る薬物の効能など我々はわかる事がないのだ。電気の力で合成された出来合いの知識しか知らない我々である。

「医者は一生一人前になれない仕事である。」とは我が師の教えであるが、このことがまさにそれの一つである。我々は人様の、科学の力をくすねてこそこそと何かをやっているに過ぎない。しかもそれが本当に正しく、すばらしい方法なのだと断言することも決してできはしない。ましてや自分の力で、などと実感することなど決してしてはならない職業に成り下がってしまったのだ。一人前に、大人に、男になるためにはなんとかこの構造の枠を超えていかなければならないのだ。そしてよく見ている看護師さんたちはこのことを最もよく知っているのであろう。気を引き締めねばならない。

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