茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

名器との出会い

2006-12-15 22:52:27 | m-tamagoの物想い
 弦楽器制作巨匠アントニオ・ストラディヴァリ(1644-1737)が作った名器、ストラディヴァリウスはあまりに有名である。

 1716年に作成されたストラディヴァリス・デュランティは、製作後すぐ249代ローマ法王クレメント14世に献呈され、その逝去後、フランス貴族からスイス大富豪の手に渡った。その後、300年間、誰にも弾かれず眠り続けていた。所有してた貴族の称号デュランディの名で呼ばれる名器中の名器が所有者の遺言で世に出ることになった。但し、決して商人の手に渡さないこと、オークションにかけないこと、博物館や美術館展示するのではなく純粋なヴァイオリニストによって演奏されなければならないという厳しい条件がつけられた。
 購入のためのエントリー(楽器の試奏権)を許されたのは世界で5人。日本人楽器商の尽力で千住真理子はエントリーナンバー4を手に入れた。購入確実と思われた音楽家達を思わぬアクシデントが襲い、とうとうデュランティは千住真理子に演奏されるために日本にやってきた。これは「千住家にストラディヴァリウスが来た日」(新潮社)にある。
 茶道では一期一会という言葉がよく使われるが、音楽家と楽器との出会いもまた一期一会。千住真理子のもとにデュランティがやってきたのも力量にふさわしいと楽器が近づいてきた結果だろう。
 私は聞いたことがないが、日本ではストラディヴァリウスの生の音色を売りにした演奏会が開かれているようだ。

 ストラディヴァリは、名職人ニコラ・アマティに楽器製作を師事し、イタリア北西部の街クレモナで製作を続けた。生涯に一千二百挺のヴァイオリンを製作し、うち六百挺が現存するという。ヴィオラやチェロも各五十挺ほど作ったらしい。名の由来は、楽器に“Antonius Stradivarius Cremonenfis”のラベルが貼られてる為で、自らの名をラテン語表記することで職人としてのプライドを誇示したといわれる。
 出来上がりが他のものとあまりに違う為に、満月の夜決まった時刻に材料の木を切ったとか、ニスに美女の血が混じっているなどの伝説も数々。ニスの調合法は現代分析でも判明せず。

 日本音楽財団では、所有する17挺のストラディヴァリウスと2挺のグァルネリウスを国内外問わず優れた演奏家に貸与する事業を行っていて、1714年製のストラディヴァリウス・ドルフィンは現在諏訪内晶子さんに貸与中とか。楽器は演奏すると減るそうだが、名手によって奏でられ、聴衆に幸せなひとときを与えるなら、製作者も楽器ものぞむところだろう。そんな幸せなひとときをいつか経験してみたいと思っている。

 茶道具との出会いもまた一期一会。いにしえの茶人と名器との出会いにもまた様々なエピソードがあり興味深い。私はこれからどんな道具にめぐり合えるだろうか。
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4 コメント

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Unknown (とく)
2006-12-17 03:51:00
いつだったかテレビでストラディヴァリウスと一般のバイオリンとの音の違いを・・・
あの時はだれが弾いていたんだったか?
千住真理子だったかな~?
私の耳にはストラディヴァリウスの方が音が澄んで聴こえました。
でも一般のバイオリンの方が音の幅があるな~とも思ったけど。

この間、自分の耳を疑う番組がありました。
年代で聴こえる音の周波数。
10代には聴こえて私には聴こえない周波数があるのですね~(ーー;
20代で聴こえる周波数も聴こえなかった。
ちょっと愕然としました。
耳は老化しています(ーー;

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mosquito (m-tamago)
2006-12-17 18:45:01
とくさん、こんばんは。
あらー、やっぱり楽器によって音違うんですね。そのテレビ番組見てみたいなあ。

年代で聴こえない音の話、私も聞きました。
イギリスだったかな?高い周波数は年をとると聞き取れなくなるそうで、学校で携帯電話の着信音を高い周波数に設定することが流行っているとか。先生には聴こえないので授業中でも着信OKってことらしいです。モスキート音域とか何とか言っていたような。。。
多分私も相当聴こえなくなっていると思う。。。。
自分では変わらないつもりでも身体は正直!確実に衰えているってことですね。とほ。(ーー;

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千住真理子さん (ukiki01)
2006-12-18 02:12:43
今年2回演奏会を聴きに行ってきました。
私はクラシック音楽にも、ましてヴァイオリンにも詳しくないのですが、音楽が歌っているな、と感じました。
千住さんは頻繁に各地で演奏会を開いておられるので、機会があればぜひ。
やっぱり演奏家と同じ空間に居合わせて、空気を伝わってくる音に身を浸すのが断然いいです。

そうそう、先日の演奏会には、千住さんのお母様が見えてました。
トークの時間に司会者に指名され、客席で立ち上がって『千住家にストラディヴァリウスが来た日』のことなどを話しておられました。
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千住真理子さん (m-tamago)
2006-12-19 22:45:21
ukiki01ちゃん、今年2回も行ったのですか!すごいなー。その行動力に拍手!!行きたいと思ったら行動しないとね。。。。これからアンテナ張ります。
音楽が歌っているですか。。。。ふむ。
空気を伝わってくる音、生はまさに体中で音を味わうって感じだよね。
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