茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

つぼつぼ

2006-08-19 10:25:35 | 茶道マメ知識
 茶道を習っている人は耳にしたことがあると思いますが、“つぼつぼ”。よくお家元のお好みのお道具にあしらわれている丸が2つ重なったような模様。でも、“つぼつぼ”って何だろうと思ったことありませんか?

 そもそもの始まりは京都の伏見稲荷を利休様の孫宗旦が信仰したことにあります。
 伏見稲荷の門前には直径一寸ほどの素焼きの器が売られており、田宝(でんぽ)と呼ばれていました。
 田宝は初午の日に門前で子供用のお土産として売っていた小さな土鈴のような陶器のおもちゃだったという説と、お稲荷さんへのお供えの器だったという説とあるようですが、いずれにしてもその素焼きの器の形を宗旦が千家の替え紋(正規の紋以外の紋)として使用しはじめ、“つぼつぼ”と呼ぶようになったものだそうです。 
 “つぼつぼ”という名称はどこから来たのか疑問に思いますが、ネット検索していたところ、両掌の内でころがすと「つぼつぼ」と音がする、当時 口をつぼめてとがらせる事を「つぼ口」「つぼつぼ口」という言い方があり、口の形が似ているので「つぼ口の壷」から名づけられた (京都市埋蔵文化研究所 堀内寛昭氏)という説など様々あるようです。
 つぼの組み方(配置)は表、裏、武者小路の三千家で異なっているといいます。私は裏の“つぼつぼ”しか見たことがありませんが、三千家並べて組み方を拝見してみたいものです。
 今も伏見稲荷の門前では大小の“つぼつぼ”が売られているとのことなので、今度行ったら探してみようと思っています。社中の方は、お参りした際購入して、塩や米を入れて神棚へのお供え器として使用しているということでした。
 伏見稲荷では農耕の神をお祀りしていますが、“つぼつぼ”の元になった“でんぽ”は田の宝と書くことからもよくわかりますね。古くは、お稲荷さんの土を持ち帰って田畑に撒くと豊作になるという謂れもあったそうです。こちらのHPのQ&A、お稲荷さんについての疑問を解明してくれて、なかなか興味深かったのでごらん下さい。
伏見稲荷HP  http://www.inari.jp/
 また、今や和食器でも直径1寸ほどの小さな器が“つぼつぼ”という名称で売られたりもしています。つぼを2つ重ねて言うことでかわいらしい感じがしますね。

 “つぼつぼ”は千家の替え紋で、門弟の紋でもあります。茶名を頂くと、着物の紋に自分の紋でなく、“つぼつぼ”の紋を使うことが許されます。茶席で“つぼつぼ”紋の着物をお召しの方を見かけたら、それは門弟ということになりますが、私は未だお見かけしたことがありません。
 わが師匠は若かりし頃、茶名を頂いて紋を許されたことがうれしく、早速つぼつぼ紋入りの無地の着物を作り茶席に着ていったそうです。すると周囲に正客にと勧められ、つぼつぼ紋の方だからと色々言われたりして、それ以来着ていないということです。単純に嬉しかっただけだったのに、世の中難しいようです。お見かけしないのは同じような理由でしょうか。やはり許されても慎ましく遠慮すべきものなのかもしれません。茶名をお持ちの方、つぼつぼ紋入りのお着物、お持ちですか?
 千家の替え紋は“つぼつぼ”ですが、家元のご紋は“独楽(こま)”でこれまた三千家でデザインが違うとか。また、ご婦人の紋は流水紋だと聞きました。家元や千家のご婦人方と近くでお会いする機会に恵まれたら、着物の紋にも注目したいと思います。
 三千家以外の紋はどうなっているんでしょう?ご存知の方は教えて下さいね。

 初めてのお茶事や真の茶事では、懐石で、最初の折敷が運ばれる際、汁椀、飯椀、向付以外に“お壷”または“つぼつぼ”と呼ばれるものが付きます。昨年、真の引次茶事を先生が催して下さった時、私たちの折敷にも“お壷”が添えられていました。それは朱塗の盃に練り梅を中央に乗せ、お酒を少し注いだものでした。初めてお茶事に参加する時も紅白なますの“お壷”が付き、それにお汁に小豆を3粒入れると聞いています。思うに、初めてのお茶事、真の茶事では、よくお越しくださいましたというご祝儀の気持ちを通常は添えられないお壷によって表しているのではないでしょうか。懐石料理のメニューを見ていても“お壷”“つぼつぼ”を発見することがあります。注意してみてください。

 壷といえば茶壷もありますね。思えば茶道の世界では“つぼ”という言葉が結構使われているんだなと今更ながら思いました。
コメント (18)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 思い出の曲 | トップ | 緑茶の効用 »
最新の画像もっと見る

18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (clay)
2006-08-19 13:30:46
つぼつぼは愛らしいデザインですよね。

たまごさんのお家の紋はなんですか?

嫁ぎ先の紋は「竹に雀」です。これも可愛らしいです♪



つぼつぼから派生した、面白いお話しを聞かせていただきました。

つぼを押して♪もらった感じ~

たまごさんのブログは「壷中日月長」♪



返信する
つぼつぼ (ゆりかもめ)
2006-08-19 19:31:58
つぼつぼって初めて聞きました。

伏見稲荷は千家と縁があって、門前にはつぼつぼが売っているんですね。今度行ったら探してみます。



ちなみに藪内家の紋は、卍(まんじ)です。

初めて見たときは、ちょっと意外な感じがして目を引きました。
返信する
つぼつぼ (チャチャ)
2006-08-19 21:40:03
つぼを押して♪もらった感じ~

たまごさんのブログは「壷中日月長」♪



↑うまいこと、おっしゃいますね。



つぼつぼ棚って、ありましたよね。

陶芸で、遊んでいた友達は、つぼつぼを、赤楽で、たくさん作って、懐石の際に、使っていました。

かわいくって、私も古道具屋で見つけて、買ってしまいましたが、使う機会がーーーーー。



返信する
 (飛翔)
2006-08-20 17:33:27
>つぼの組み方は、・・・三千家で、異なっていると・・・

本当に、一堂に会して拝見してみたいものです。



嫁ぎ先の紋は、五花に唐花;織田信長の紋に似ています。

 

つぼつぼは、菓子入れを持っていますが、やはりなんとも愛らしく、お茶意外にも使います。



つぼつぼの言われ、興味深く、楽しく読ませて頂きました。
返信する
Unknown (酒徒善人)
2006-08-20 18:30:27
伏見さんと利休の関係知りませんでした。

伏見さんへ行くと 鶉(うずら)を食べます。
返信する
 (m-tamago)
2006-08-20 20:11:45
clayさん、つぼつぼ、本当にかわいらしいデザインですよね。丸いデザインというのは心を和ませてくれますね。

我が家の紋は確か丸にもっこうだったと思います。

「竹に雀」、いいですねえ。



>たまごさんのブログは「壷中日月長」♪

なかなか悟りの境地は遠いですけど~。日々何故何と迷っておりますが、一緒に楽しんで頂ければ幸いです。

返信する
つぼつぼ (m-tamago)
2006-08-20 20:15:01
ゆりかもめさん、こんばんは。

伏見稲荷でつぼつぼ見つけたら是非どんなものか教えて下さいー。できれば写真で見たいんですけど~。



>ちなみに藪内家の紋は、卍(まんじ)です。

まんじですか。。。。お寺?どういう由縁なんでしょうね。

薮内も茶名を頂くとまんじの紋の着物を作っていいのかしら??

返信する
つぼつぼ (m-tamago)
2006-08-20 20:19:41
チャチャさん、こんばんは。



>つぼを押して♪もらった感じ~

はは。私も先生につぼを押してもらいました。今までつぼつぼと言いながら、それがなんなのか疑問に思わなかったのが不思議ですね。。。結構色々なことを漫然と受け止めているものだと思いました。まだ色々ありそう。



>つぼつぼ棚って、ありましたよね。

つぼつぼのデザインものって色々ありますね。

チャチャさんのつぼつぼ、拝見したいものです。初めての方をたくさん茶事にお招きして、たくさん使って下さい~。

返信する
 (m-tamago)
2006-08-20 20:23:23
飛翔さん、本当に三千家のつぼつぼ、並べて見たいですよね。。。。今後の課題です。



>嫁ぎ先の紋は、五花に唐花;織田信長の紋に似ています。

紋も色々ありますね。

 

つぼつぼは愛らしいですね。謂れを知って益々身近になりました。
返信する
 (m-tamago)
2006-08-20 20:25:20
酒徒善人さん、こんばんは。

私も伏見稲荷と宗旦が関係しているとはこれまで知りませんでした。。。。

HPによると三千家での献茶式もあるようで、やはり関係は深いのでしょうね。



>伏見さんへ行くと 鶉(うずら)を食べます。

鶉料理が有名なのですか??
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

茶道マメ知識」カテゴリの最新記事