茶の湯 徒然日記

茶の湯との出会いと軌跡、お稽古のこと

夏越祓

2007-06-29 15:42:39 | 季節マメ知識
 明日は6月30日、2007年も早くも半分が過ぎようとしています。名水点の幣の準備については後に譲りまして、今日は年の後半を元気に乗り切ろうと祈った昔の人々の風習についてご紹介したいと思います。

 元々は関西の習慣ですが、6月30日に夏越祓(なごしのはらい)という神事が行われることがあります。一年の半分がちょうど終わる時、これまでの疲れを癒し、来る暑い夏を乗り切る為に人々は祈りをささげたのでしょう。
 神社の拝殿前に茅萱を束ねて作った大きな輪が置かれ、それをくぐると夏の間病気せず、健康に過ごせるとの謂れがあります。くぐり方も何か唱えながらとか、八の字の描くようにくぐるなど、色々あるようですが、体内潜りや、露地の中門、にじり口のように何かをくぐることで厄を祓う、変化するとの考え方が日本人の中にはあるようです。

 茅の輪の由来は、牛頭天王(ごずてんのう)の伝説によるものです。多少地方によって話が異なるようですが、大体のところはこんな感じです。
 牛頭天王という疫病の神様が旅の途中日が暮れたので宿を借りようと、巨端長者の家を訪ねると、金持ちの巨端は冷たく拒絶しました。次に蘇民将来という貧しい人の家を訪ねると貧しいなりに心をこめてもてなし宿を提供しました。
 牛頭天王が巨端の家を滅ぼそうとすると、蘇民が自分の娘が巨端のところで働いているので助けてほしいと頼みました。牛頭天王は茅の輪を作って赤い絹に包み、蘇民将来の子孫と書いた札を娘につけさせるように言い、蘇民の娘は助かりました。
 ここから、茅の輪をくぐると疫を祓い健康に過ごせるという風習が始まっていったのでしょう。

 7月の風物詩ともなっている祇園祭は平安時代から祇園御霊会という疫病の神様を鎮めるお祭りとして始まりました。その中心となる八坂神社は元々は牛頭天王が祭られ、今ではその同一の神とされるスサノオノミコトが祭られています。牛頭天王は牛の頭に似た山に住んでいたインドの祇園精舎の守り神で、疫病の神であったのが元とされます。

 この蘇民将来の話を聞いて、一つのことと繋がりました。我が家では伊勢神宮におまいりに行って以来、伊勢の正月飾りがとても気に入って毎年取り寄せているのですが、その木札に書かれているのが蘇民将来子孫家って言葉なんです。どういう意味なんだろう、民が蘇り将来子孫繁栄するってことかなと勝手に考えていたのですが、多分、この逸話からきているのでは?
 調べてみたところ、松坂から伊勢にかけてのみこの木札がみられるそうです。また、二見が浦というところから鳥羽方面に2キロほど行くと、蘇民の森と呼ばれる森があり、昔蘇民がそこに住んでいたという伝説が残っているとか。
 正月飾りの木札も娘に与えられた護札を象ったもので、その家を疫病から守り健康に過ごせるようにするという意味が込められているということになるのでしょう。
 あらゆることには意味があるものですね。今回、我が家の正月飾りの謎がとけて、とっても感動しました。他のお飾りの部分は毎年時期が過ぎるとお焚き上げしてしまうのですが、木札だけはとっておいて部屋に飾っていました。母がそれと知っているかどうかはわかりませんが、思えばそのお蔭で家族一同大きな病気をすることもなく健康に過ごせているのかもしれません。
 伊勢の正月飾りについては、以下の写真をご参照下さい。笑門というお飾りも飾ったことありますが、いい味わいです。本当に笑う門には、、、で福が家に入ってきそうな気がしました。お正月飾りも地方色豊かで色々調べたら面白いかもしれません。
http://blog.funabenkei.daa.jp/?eid=267353

 ところで、6月30日のお菓子といえば、水無月という和菓子が有名です。そもそもは関西で、最近6月になると関東でもよく見かけるようになりました。三角形に切った外郎の上に小豆が乗っているのが通常です。このお菓子の形は氷室の氷を象ったもので、小豆(赤、豆)は魔よけの意味があります。
 昔宮中で氷室の氷を食べて暑気払いをするならわしが始まり、その後氷の代わりにこほりかちんという氷の形の餅を頂くようになったといいます。これが京都の町衆にも広がり、外郎の上に小豆をとり合わせて、三角形に切ったものが食されるようになりました。
 今のように便利ではない時代、人々は冬の氷を涼しい自然の冷蔵庫=氷室で保存していたのですね。そうして口にした氷は格別なお味がしたことでしょう。そして、庶民が真似て作り出し、口にした水無月、砂糖の貴重な時代、これまた特別なものだったでしょう。
 クーラーや冷蔵庫、便利な時代ではありますが、由来を感じながら頂きたいものです。そして、来週から始まる2007年後半を元気に乗り切りましょう!
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15 コメント

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やった~! (湯呑み)
2007-06-29 17:25:06
一番乗り!
去年 お伊勢さんの近くで「蘇民将来子孫家」を撮りました。
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茅の輪くぐり (しつこい湯呑み)
2007-06-29 19:08:52
近所の神社では七月に行われます。
お祓いするより規則正しい生活をするのが一番健康に良いとは思いますが、休日はついつい夜更かししてしまいます。
m-tamagoさん 元気に夏をお過ごしください。
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水無月 (蜆子)
2007-06-29 22:14:50
水無月を入力ミスで、皆好きと出してしまい、これはいい間違いだわと思ったものです。
夏越の祓いには、水無月がお約束
金沢では、幕府に献上した氷にちなんで、只今お菓子やさんには、氷室饅頭がいっぱいでています。
それぞれのお菓子をいただくと、それぞれの行事に参加させていただいている気持ちになります。

昨年、友達が「夏越の祓い」の茶会をしてくれましたが、生地の水指には、名水点のごとく幣をまき、それに八坂神社の小さな札をくくってありました。
もちろん、茅野輪も。
田舎では珍しい都ぶりでした。楽しい趣向でした。
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蘇民将来子孫家のお札 (ukiki(01改め))
2007-06-30 01:20:37
私も見ました。
何年か前に松阪の町を散歩したんですけれど、
門々に掲げられてました。
そうか、あのあたりだけなんだね。なるほど。
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夏越の祓 (ジジのママ)
2007-06-30 07:02:36
先週末、境港のお茶会で『夏越の祓』という銘のお菓子を頂きました。
これから暑くなる夏を皆様無事お過ごしください・・・というご亭主の思い入れを感じました。

また、先日はお茶の先生から『水無月』を頂き、家族皆さんが暑い夏を乗り切るように・・・という先生の優しさに触れました。

どちらも大変美味しく頂戴したのできっと今年の夏は夏バテせずに過ごせそうです♪
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蘇民将来 (haruko)
2007-06-30 09:34:50
ご無沙汰しています。祇園さんで配られる粽にも蘇民将来の文字がついていたと思います。山鉾巡幸のときのだったか、後祭りのときのものだったか、ちょっと記憶が定かでないのが我ながら情けない。水無月のお菓子が大好きで、毎年6月下旬が待ち遠しく、翌日から祇園さんで、いよいよ夏本番!とワクワクしたものです。良いお話をありがとうございました。
m-tamagoさん、日本の暑い夏をどうか乗り切られますように!
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蘇民将来子孫家 (m-tamago)
2007-07-01 20:26:48
湯呑みさん、こんばんは。
ご無沙汰しておりますのに、コメントありがとうございます。嬉しいです。
伊勢のお正月飾りと茅の輪の写真、ご紹介くださりありがとうございました。相変わらずとても味わいのある素敵な写真ですね!!
ご近所では、茅の輪くぐりが、7月末になされるとか。きっと旧暦と新暦の差なんでしょうね。
今後とも宜しくお願い致します。
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水無月 (m-tamago)
2007-07-01 20:29:57
蜆子さん、こんばんは。

>水無月を入力ミスで、皆好きと出してしまい、
確かに素敵な変換違いですね!

>金沢では、幕府に献上した氷にちなんで、只今お菓子やさんには、氷室饅頭がいっぱいでています。
金沢では氷室饅頭なんですか。そちらも頂いてみたいものです~。
本当にそれぞれの地方色豊かなお菓子を頂くと、そこの行事や人々の思いに触れた気がして幸せな気分になりますね。

昨年の「夏越の祓い」の茶会の記事読ませて頂き、いいなあ、すばらしい趣向だなあと思ったものでしたが、もうあれから1年経ったのですね。早いものです。今年も無事半分を迎えられて感謝しなくては。
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蘇民将来子孫家のお札 (m-tamago)
2007-07-01 20:31:49
ukikiちゃん、こんばんは。
松坂で見かけたのね。
私も伊勢に行った時に笑門のお飾りを初めて見て、それから我が家で取り寄せるようになったんだけど、ある年、蘇民将来子孫家の札のものがあって、面白いなあと思ったのです。
思いがけないところで知識が繋がって嬉しい限り!
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夏越祓 (m-tamago)
2007-07-01 20:36:08
ジジのママさん、こんばんは。

>境港のお茶会で『夏越の祓』という銘のお菓子を頂きました。
これはタイムリーな。本当にご亭主の思い入れを感じて嬉しいですね。ここ数年で関東でも水無月、茅の輪が浸透してきました。商業主義からなんでしょうが、関西の風習がどんどん関東に入ってきている気がします。恵方巻きもそうですしー。そうやって日本古来の風習が日本人に知れていくのは嬉しいことです。

>お茶の先生から『水無月』を頂き、
そんな心遣いもあるのですね。暑さで気分もへこたれている頃、元気をいただけますね。

ジジのママさんの辞書に”バテる”の言葉はないような。。。。たくさんの水無月パワーももらったことだし、今年の夏も更にパワフルに乗り切ってください!
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