マオ猫日記
「リヨン気まま倶楽部」編集日記
 




(写真)9月3日、ブリュッセルを訪問しソラナEU共通外交・安全保障政策上級代表と会談したタディッチ・セルビア大統領 

 報道によると、セルビア議会(1院制、定数250議席)は9月9日、懸案となっていた欧州連合(EU)との安定化・連合協定(SAA)を批准する決議案を採択しました。

 SAAはEU加盟の前提となる一連の措置(自由貿易地域の設置等)を定めた協定で、全EU加盟国(27ヶ国)、欧州委員会とSAA対象国(この場合、セルビア)がこれを批准する必要があります。SAA自体は今年5月6日の総選挙前に親EUのタディッチ大統領らによって署名されていますが、協定の批准を巡っては、セルビア国内において、そのまま批准すべきとする連立与党(民主党(DS)、セルビア社会党(SPS)、G17プラス等)と、「コソボがセルビアの領土であることが明記されない限り、協定は批准すべきでない。」とするセルビア民主党(DSS)とが対立。批准問題がコソボ地位問題とリンクする形で議論されていました。

 ところが、ここへきて、コソボ独立に強硬に反対し、大統領選挙では与党・民主党への対抗候補まで出したセルビア急進党(SRS)のニコリッチ(Tomislav NIKOLIC)党首代理が、親EUの与党に対して修正案を提示。与党がこれを受け入れて、コソボはセルビアの一部との立場で政府がSAAを解釈することとなったため、なんとSAAの批准案はSRSの賛成も得て議会欧州統合委員会で可決。反対したのはコシュトゥーニツァ(Vojislav KOSTUNICA)前首相率いる「セルビア民主党」と「新セルビア」(NS)だけでした。

(写真)今年1月20日に投開票されたセルビア大統領選挙第1回投票でトップとなったトミズラヴ・ニコリッチ・セルビア急進党代表代行

 その後、ニコリッチ党首代理は、「9月4日に、SAAに賛成してはならないという命令を受け取った」と、オランダ・ハーグの旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所収監中のシェシェリ党首からの指示があったことを暗に指摘。こうした党の方針転換への不満を理由に、9月5日のSRS幹部会会合で辞表を提出。その足でSRSを離れて議員11人を擁する新たな議員団を設立し、「これまでのSRSの幕は下ろされた」「従来のSRSはもはや存在しない」と出身政党を厳しく批判。シェシェリ党首との決別を表明しました。

 結局、SAAそのものについては、9日の議会本会議において、SRS系議員が欠席・棄権する中、投票に参加した168人の議員が賛否を表明し、賛成140、反対28で批准案が採択されました。

 SRSといえば、セルビアの極右民族主義政党として知られ、コソボ地位問題やセルビア自身のEUへの加盟問題についても強硬な態度をとってきた政党。そのSRSが、かつてミロシェヴィッチ元大統領を輩出したセルビア社会党(SPS)に倣って「左旋回」し(ちなみにSPSはDSとともに連立与党に参加)、一部とはいえEUについて柔軟かつ現実的な態度をとりはじめたのは、注目に値する出来事であると思われます。

 



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