(写真)ベルギー元老院
欧州各地で信心深いイスラム教徒の女性が着用するスカーフやブルカが問題視されていますが、そうした中でベルギーではこの度、公道を含む公共の場でブルカ等顔を全面的に隠すことを禁止する法律案が、議会上院(元老院)に提出されたそうです。
この法律案は、刑法典に第563条の2として新たに2項目を新設し、市町村長の定める条例又は市町村の定める規則による例外を除くほか、顔の全部又は一部を隠したまま公道を通行することを禁止し、違反者には15ユーロ~25ユーロの罰金又は1日~7日の懲役刑を課す(第1項)というもので、「公道」とは、具体的には歩道、地下道、歩道橋、公園、運動場、遊び場、公的な文化施設、その他の公的施設と指定しています(第2項)。成立すれば、顔をすっぽり覆うブルカは、その他のマスク類と並んで、ベルギー国内では公共の場所では完全に着用できなくなります。
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(写真)ブリュッセルのサブロン広場
法案を提出したのは仏語系自由党「改革者運動」(MR、Mouvement Reformateur。現在の第二次ロンピュイ内閣の連立与党5党の一つ)の元老院議員会長でもあるデフレーニュ(Christine DEFRAIGNE)元老院議員(兼ワロン地方議会議員。女性)で、法案提出理由について、リエージュ(Liege)出身のデフレーニュ議員は「警察官による人定確認を可能とするための公安上の問題」としていますが、新聞の取材には「我々の社会で女性が抑圧されていることに対応しない訳にはいかない。」(9月7日付フランス・「ル・フィガロ」紙)と答えており、提案の背景にはイスラム教徒の習俗を人権抑圧と看做す考え方が伺えます。人口約1064万人のベルギーの中で、イスラム教徒は30万~40万人、うちブルカやスカーフを着用する人は数百人とみられ、移民としてはむしろ旧植民地だったコンゴ(ザイール)出身者のほうが目立つのですが・・・。
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(写真)ブリュッセル市街
公安上の理由であれ、また基本的人権や男女同権のためであれ、個人の服装や習俗に対する規制は、個人の自由との関連で常に緊張関係にある訳ですが、果たして「人権のため」という名目でここまでの排斥的な規制が許されるのか、これが戦前のナチス・ドイツによるユダヤ人排斥と質的に異なることが保障し得るのか、極めて慎重な見極めが必要であるように思われます。
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