★★★★☆ 2020年/日本 監督/大森立嗣
救いようのない物語はファーストカットが大事だ。息子の膝を舐め、母子で自転車で坂道を下るショットで確信。ロングショット、手持ちカメラ、クロースアップ。全てが爽快なほどに決まっている。映画の教科書のようなカメラ使いが閉じた親子の世界と愛憎を見事に映し出す。
大森立嗣監督は決して褒められることはない人間のエゴや業を描き出すのが本当にうまい。「さよなら渓谷」の真木よう子のように、誰も触れることができない女の奥底に秘めた闇を長澤まさみに見る。寂しい親子のロングショットと対照的に、彼女のクロースアップのカットはどれもすばらしすぎた。