Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

JUNO

2009-04-02 | 外国映画(さ行)
★★★★☆ 2007年/アメリカ 監督/ジェイソン・ライトマン
「人間讃歌は、ハリウッド大作の反動か」

ジュノはとってもいい子。そして、周りの大人たちもとってもいい人。悪人が誰ひとり出てこない。そして、見終わった後の、ほんわか心が温まるこの感じ。昨年末に見た「ラースと、その彼女」にとてもよく似ている。本作はアカデミー脚本賞を受賞しているし、「ラースと、その彼女」も脚本賞にノミネートされている。この不思議な一致、なんだか偶然に思えないのです。

「ダークナイト」を筆頭に、昨今のハリウッド大作は、悪や虚無を描いているものが多い。本来、ハリウッド大作と言えば、夢や希望を観客に与えるものが本流だったはず。しかし、最近は見終わって何とも言えない虚脱感や寂寥感を覚える作品が多い。その反動なのか、ミニシアター系の「JUNO」や「ラースと、その彼女」はその対極に存在する作品のような気がする。徹底的に人間と人間の絆を前向きに捉えようとする姿勢です。この「前向きさ」というのが、最初から最後まで全くぶれることがない、というのが実に爽快。

妊娠してから、どんどんお腹が大きくなるに連れ、母性が目覚めてしまい…、という湿った展開にはならない。この裏切り方は見事だと思います。ジュノは最後まで自分で決めたことを貫き通す。お腹を痛めた子をさっさと他人に渡してしまう、そこに違和感を感じる人がいるのもわかるけど、私はむしろ、たかだか16歳の女の子が「予期せぬ妊娠」という一大事に対して真正面から取り組むそのタフさがすごく魅力的に思えました。

母性を尊いもの、清いものと崇めることが、逆に産みたくない女性を増やしていることだって、あるんだもの。命という重いテーマを扱いながら、そことは完全に距離を置いて、かつ感動的なストーリーに仕上げていることがすごく斬新。妊婦のくせにホラー映画なんか見たりして、こういう軽々しい感じもやっぱり母性とかそういうところを超えた逞しさなのね。だから、赤ん坊はもちろん、ジュノの存在も含めて、これもまたひとつの生命讃歌じゃないかと思わされました。