調理師としての悩み

店で料理を作る時はメニューが決まっているので
見た目や形に差があっても、基本的にみんなと同じ味に仕上がる。
もちろんレシピ通りの料理以外にも、まかないを作る事もあれば
家で料理することもあるし、
そういうときは人に食べてもらう。

「おいしいよ」
「よくできてる」

こう言ってもらえることは多いし、自分でもそれなりの物を作っているつもりだ。
そのために練習もしてきた。

しかし、その後にいつもこんな感想が返ってくる。

「お上品な味だな」
「ちょっと物足りないかも」

これならまだいいほうだ。

「病院食みたい」
「ジジイの健康食みたい」

こんな感想が返ってくる。
自分でも思うことがある。
つい食べ過ぎてしまう。
しかし、おなかいっぱいなのに食べた気がしない。

私の作った料理には満足感が無い。

おなかは膨れるし、味も悪くは無いのに、
ちっとも食べた気がしない。

少し話がそれるけど、
この前、料理長がまかないで焼きおにぎりを作ってくれた。
ご飯には大葉とゴマを混ぜ込み、生姜醤油を塗って味付けしたものだった。
確かに手は込んでいるけど、材料だけ聞けば誰でも作れそうなものだ。
でも、それを一口食べて、確かに満足した。
感動した。軽く涙がにじんできた。

多分私には同じものは作れない。
同じ材料をそろえたとして、
似た味にはなっても、きっとまた物足りない味になるだろう。

何が違うんだろう。