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「地理学的に考える」ことの重要性を説く「現代人文地理学の理論と実践―世界を読み解く地理学的思考」

2018年12月02日 | 新刊書
現代人文地理学の理論と実践―世界を読み解く地理学的思考
フィル・ハバード (著), ロブ・キチン (著), ブレンダン・バートレイ (著)


どうも邦訳のタイトルがよくないかも。
目指しているところは、地理学的な思考に影響を与えてきたさまざまな思想家を手掛かりに
現代の世界において「地理学的に考える」ことの戦略的な重要性を明らかにすることにあったと思えるのだが
このタイトルでは地理学の理論書のようにみえて読者の読む気を損ねかねない。
大切な視点だと思うのだが。



単行本: 432ページ
出版社: 明石書店; 初版 (2018/12/2)
言語: 日本語
ISBN-10: 4750347418
ISBN-13: 978-4750347417
発売日: 2018/12/2

内容紹介
Thinking Geographically
「地理学的に考える」とはどういうことか――

概説書にありがちな、型にはまった概念と学史の通論を避け、
人文地理学に理論的影響を与えてきた諸学の思想、また人文地理学が最新社会科学の実践に与える刺激を、理論と実践の橋渡しに注力して丹念に解説。
人文地理学における理論の重要性、現代世界を理解するうえでの地理学的思考の必要性を説く。
人文地理学の地平の拡大に貢献した、狭義の地理学者にとどまらない諸学術分野の思想家・理論家紹介コラムも充実!

■「日本語版へのはしがき」より■
本書は地理学の初学者のために書かれたものであるが、地理学者のように考える仕方を正確に理解しようとするさまざまな読者にとって有益であったと実感している。これは、おそらく、本書が地理学の理論と哲学についての従来のアプローチを避けたからである。
すなわち、一般的な方法論や認識論、空間、場所、景観、地域などの関連する考えなどの概略を説明するのではなく、むしろ、空間的に考えることが社会科学的研究の中心となる一連の多少なりとも実在の対象あるいは領域、すなわち身体、テクスト、貨幣、ガバナンス、グローバリゼーションに生気を与える理由を考えることによって、地理学を考えることとは何か、そして地理学は何をするのかを明確にしようと努めた。
私たちが示そうとしたこれらのことは、空間的につくり出され、共同構成されているものとして理解されうるものである。したがって、その地理学と空間性を考慮しない視角からはほとんど考えられないものである。

■章立ておよび本書が取り上げる主な思想家・理論家■
――第1部 人文地理学の理論化――
第1章 理論への導入……アンリ・ルフェーブル (社会学、哲学)、ドリーン・マッシー (地理学)、ダナ・ハラウェイ (科学史、ジェンダー論)
第2章 地理学思想史の概観……ピーター・ハゲット (地理学)、レジナルド・ゴレッジ (地理学)、イーフー・トゥアン (地理学)、カール・マルクス (哲学、経済学、革命家)、女性と地理学研究グループ (地理学)
第3章 新しい思想、新しい地理学?……ピーター・ジャクソン (地理学)、ニール・スミス (地理学)、アントニオ・グラムシ (社会理論家)、マイケル・ディア (地理学)、ジュディス・バトラー (哲学、ジェンダー論)、エドワード・サイード (文学、文化批評)、ジャック・デリダ (哲学)、ジル・ドゥルーズ (哲学)
――第2部 理論地理学の実践――
第4章 身体の地理学……モーリス・メルロ=ポンティ (哲学)、ミシェル・フーコー (哲学)、ピエール・ブルデュー (社会学)、ジル・バレンタイン (地理学)、デイヴィッド・シブレー (地理学)
第5章 テクストの地理学……レイモンド・ウィリアムズ (文学、文化批評)、ロラン・バルト (哲学)、デニス・コスグローヴ (地理学)、ジャン・ボードリヤール (哲学)
第6章 貨幣の地理学……ゲオルク・ジンメル (哲学、社会学)、デイヴィッド・ハーヴェイ (地理学)、ナイジェル・スリフト (地理学)、リンダ・マクドウェル (地理学)、アンドリュー・レイスホン (地理学)
第7章 ガバナンスの地理学……クラレンス・ストーン (政治学、公共政策)、ボブ・ジェソップ (社会学、政治学)、アッシュ・アミン (地理学)、ブリュノ・ラトゥール (社会学、人類学)、デイヴィッド・M・スミス (地理学)
第8章 グローバリゼーションの地理学……ポール・ヴィリリオ (文化理論、都市計画、美学)、イマニュエル・ウォーラーステイン (社会学)、ハーバート・マーシャル・マクルーハン (メディア論、文化批評)、マニュエル・カステル (社会学)
――第3部 結論――
第9章 結び

■原著情報■
Hubbard, P., Kitchin, R., Bartley, B. and Fuller, D. (2002) Thinking Geographically: Space, Theory and Contemporary Human Geography. London, Continuum.

出版社からのコメント
本書が取り上げる主な思想家・理論家(上記)を一覧してすぐわかるが、本書の射程は人文地理学のみならず非常に広汎にわたっている。原稿を読みながら抱いた「こんな地理学の本があるのか」という感想も偽らざる思いである。もちろん焦点は人文地理学とその理論および実践にあるのだが、本書の核心は、一般に(人文)地理学理論という言葉から想い起される内容とは異なったところにある。

それは、新たに原著者から寄せていただいた「日本語版へのはしがき」をはじめ、本書の各所で繰り返し述べられているように、理論が地理学的知識の形成にどのように影響を与えるかの説明を通じて地理学的に考えること(thinking geographically)の意義を伝えることである。

「地理学の理論の価値と効用に疑いを持っている学生に説明するために書かれている」(p.2)と明記されている通り、本書の原著は人文地理学専攻の学部学生向け教科書としての使用を念頭に執筆されたものである。しかしながら、地理学的に考えるとはどういうことか、地理学は何をするのかを知りたいすべての読者にとって、概念の説明の羅列とは一線を画した本書は指針となることだろう。(編集担当者より)

著者について
■著 者■

フィル・ハバード (Phil Hubbard)
原著執筆当時、英国ラフバラー大学講師。
バーミンガム大学でPh.D.を取得。ケント大学社会科学部副学部長などを経て、現在ロンドン大学キングズ・カレッジ教授。

ロブ・キチン (Rob Kitchin)
原著執筆当時、アイルランド国立大学メイヌース校講師。
ウェールズ大学スウォンジー校でPh.D.を取得。クイーンズ大学ベルファストなどを経て、現在アイルランド国立大学メイヌース校教授。小説家としても活動する。

ブレンダン・バートレイ (Brendan Bartley)
原著執筆当時、アイルランド国立大学メイヌース校講師。

ダンカン・フラー (Duncan Fuller)
原著執筆当時、英国ノーサンブリア大学講師。
ハル大学でPh.D.を取得。2009年歿。

■訳 者■


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