象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

鏡張りの部屋、その25〜中年女サビオレとの別れとレオニーの覚醒と〜

2019年09月14日 02時27分55秒 | 鏡張りの部屋

 7/31以来の”鏡張りの部屋”ですが。これまでの流れを大まかに紹介です。

 
 主人公ダーレムは、ある闇組織に追われるも九死に一生を得、ここホテル•カリフォルニアに救われた。しかし、ここは外界との接触が殆ど遮られた、奇怪なホテルだった。
 男には、2人の訳有り女が近づく。一人は薬の売人をしてた若い女カミーユ、もう一人はメキシコのスラム出の中年女サビオレ
 ダーレムは2人の女に身も心も翻弄され、自分を見失いそうになる。が、探偵マーロウが現れ、大人しくしてるよう諭された。老支配人マティウスも精神的支柱になり、男は少しずつ自分を取り戻していく。
 その時、ダーレムの愛人で娼婦のレオニーが瀕死の重傷を負い、運びこまれた。そして時を同じくし、サビオレが失踪する。
 
 
 前回”その24”では、中年女サビオレの義父が麻薬潜水艦の中に監禁されてた所を、アメリカの湾岸警備隊に逮捕されたが。パニックに陥ったサビオレがホテルを逃げ出します。

 最初からサビオレをつけてたマーロウは、彼女を説得し、ロスの麻薬操作局に引き渡す所まででした。


 その後、マーロウはサビオレの義父の無罪を主張し、2日間の勾留と取り調べの後、義父と共に無事釈放された。お陰で、彼女は平穏を取り戻す。
 サビオレは義父と共に、カナダへ移り住む予定だという。すっかり生気がみなぎった中年女は、マーロウに深々とお辞儀をした。

今までいろいろと有難う
最初から、全てを知られていたなんて
全く恥ずかしい限りだわ
でも、悪気はなかったのよ
私だって必死だったの
衛星電話を隠し持って、
義父の安否の情報を得るのに必死だったの

でも、悪いとは思ってるわ
義父を救うにはそうするしかなかった
支配人と揉めたのも、そのせいよ
義父の為には、命も惜しくはなかったわ
ああ、それとダーレムさんには宜しくと、
老支配人にも元気でねって、伝えて
それに、カミーユにもね


 マーロウは静かに頷いた。そして、タバコをゆっくりと蒸し始める。

誰もアンタの事を
本気で悪く思っちゃいないさ
最初から気付いてたよ
正義と友情を大切にする女だって事をね
でも、衛星電話を隠し持ってた時は
少しビビったがね 

義父との唯一の通信手段だったんだ
よく出来た代物だよ
見た目はスマホと全く同じなんだから
日本のガラケーを見事に改造したんだよな
ホントお手上げだった
でもそれがあったから、今の君があるし
義父も生き延びてこれたんだ
日本製に感謝だな


 サビオレは首を横に振る。

そうじゃないわ、
何か生きてる証拠が欲しかったの
最後の切り札を持ってるという
望みが欲しかったの
でなかったら、生きてても意味ないでしょ
今の私には、義父が全てなの
昔からずっとそう、そしてこれからも
ほんとに感謝してるわ
マーロウさんがいなかったら
今の私はなかった
最初は嫌な旦那が来たなって思ったけど(笑)


 マーロウの表情が少し緩んだ。

オレは何時も嫌な親父なんだよ
こんな仕事してて好かれるなんて
滅多にある事じゃない
でも、こうやってアンタに感謝されると
満更、悪い気持はしないもんさ
ではお元気で、おじさんにも宜しくな


 サビオレも微笑んだ。

今まで嫌な事が沢山あったけど
アナタのお陰で、全て忘れる事が出来たわ
本当に有難う、この恩は絶対に忘れない
貴方も私のこと忘れないでね

 
 サビオレはマーロウを強く抱きしめた。豊満な乳房が潰れそうな程に強く抱きしめた。
 一方、サビオレの震える背中を感じ取ったマーロウは、本気になりそうだった。その場で犯したい衝動に駆られた。サビオレの全てを奪い去りたいという狂気に駆られそうだった。

 その時、サビオレはゆっくりと身体を引き離した。彼女の瞳は涙でグシャグシャに濡れていた。義父の存在がなかったら、マーロウの女になってたかもしれない。
 
 その時、車のホーンが鳴り響く。まるでノーサイドの笛が鳴ったみたいに感じた。


ではさよなら

ああさよなら


 2人は、まるで何事もなかったかの様にその場を去っていった。

 男は仕事に戻り、女は新しい人生を始める。ただそれだけの事だ。


 シボレーのホーンが再び鳴り響く。

なにニヤケてんのよ〜?
何だか長年付き添った
夫婦のような雰囲気だったわ
目の前で見せつけられると
変な気分だわ、早速お仕事よ
今さっき、ホテルから電話があったの
レオニーさんて方の意識が回復したって


 マーロウは秘書が運転する車に飛び乗り、すぐさまホテル•カリフォルニアへと向かった。

これからがホントの仕事だ
彼女がどれだけ情報を掴んでるか?
それだけが頼りだな
結局、あの中年女も義父も
何も情報は握ってなかったのさ
いや、だからこそ生き伸びれたんだがね
衛星電話を調べたが、通話記録も何もない
彼女が一方的に電波を送り、
その電波を義父が傍受してただけさ
2人とも、生きる事が全てだったんだな
余計な事をしなかった事が命を救ったんだ
俺たちも見習う必要があるな


秘書は、マーロウを睨みつけた。

余計なことって何よ?
まるで、私がチョッカイ出してるって?
そんな言い方じゃない
私は仕事で色目を使ってるだけなの
マーロウさんの事を思っての事よ
仕事がなくちゃ、生きてられないでしょ?
少しは感謝して欲しいくらいだわ


マーロウは大声で笑った。

全く、俺もバカにされたもんだな
ベティーちゃんのお色気で
我が探偵事務所が成り立ってる訳か?
満更、悪くはないがね
顧客にはサービス満点でも
主の私には、何も見返りはないんだな
ま、それも悪くはないか


 ホテルの近くで車を止めると、マーロウは飛び降り、一人森の中に姿を消した。
 そう、秘密守義の為に秘書にホテルの場所は知らされてはいないのだ。

 藪に覆われる様にして、その5階建てのホテルは建っていた。外から見れば全くの廃墟ビルだ。

 入り口は地下にあった。受付には老支配人が待っていた。

”大変だったらしいのう
でも2人とも無事でよかったの
何事も平和が一番じゃな
一番アカンのは争う事じゃ
マーロウさん、貴方は全てを丸く収めてくれる
でも、情報は何もなかったんじゃの?
あれだけの量の大麻を積んでながら
誰も何も知らないとはの”


 マーロウは少し苦笑する。

今では拷問が禁止されてる
全てはブッシュのせいだよ
あのバカが強引すぎたので、捜査も雁字搦めだ
捜査ってもんは、
自白させれば、いいってもんじゃない
ヒントだけで十分なんだ
全てを自白だけで解決しようとするから
後々面倒なことになる
守秘義務だって、法律上存在するんだからね
バカと無能が上に立つと、
100%ロクな事はないんだ


 老支配人も苦笑するしかなかった。

”まあ、そう言わんとの
皆が皆、マーロウさんみたいに
有能であれば、トラブルは少ないんだがの
でも、ブッシュ親子は最悪じゃったの
ニッポンのアベも同類じゃがな

あ、それと意識が戻ったレオニーさんじゃがの
言葉がハッキリせんでの
何か必死で言いたそうなんじゃが
上手く聞き取れんのじゃ
もう少し安静が必要かの?”


 マーロウは老支配人に誘われる様に、レオニーが寝てる部屋へ向かう。

今は、慌てない方がいいでしょう
何事も”急いては事をし損じる”ですから
今は頭の中が混乱して
自分の頭で整理がついてない状態です
今、無理に自白させようとすると、
パニック障害を引き起こす危険性もありますからね
念には念を


 マーロウは、カミーユとダーレムの2人を部屋の外に呼びつけた。

今は、まだ話しかけちゃダメだ
気持は判るが、今はその時期じゃない
オレは再び事務所に戻り、
レオニーの周辺を洗ってくる
とにかく、無理しちゃダメだ
最悪、全てが泡に帰す
わかったね、二人とも


 カミーユは不服そうだ。

でも、何をすればいいのよ
只々黙って、時間を潰せっていうの?
必死で何かを訴えそうな勢いなのよ
黙ってみてられないわ
ダーレムもそう思うでしょ?ねえ


 ダーレムも不安だった。

探偵サン!一度でいいから
レオニーと顔を合わせて下さい
そうすれば、彼女も落ち着くと思います
一言だけでも十分ですから


 マーロウは渋々部屋の中に入る。

レオニーさん?でいいんだね
私は探偵のマーロウです
これから長い付き合いになります
でも今はゆっくりと静養に努めてください
それこそが一番の解決方法です
では、私はこれで失礼します


 老支配人は、ほっと胸を撫で下ろした。レオニーが興奮してパニックになるのを怖れてたのだ。

”流石じゃの、すっかり落ち着いたじゃないか
一時は、どうなるかと思ったよの
カミーユ嬢は騒ぎ立てるし、
ダーレムは動揺しっ放しだし、
これでいつもの平穏に戻れるの
よかった、よかった”


ようこそ、
我がホテルカリフォルニアへ
🎵ここは素敵な場所でしょ🎵
🎵ここは素敵な人達でしょ🎵



4 コメント

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サビオレ危機一髪 (hitman)
2019-09-14 14:23:15
上手くサビオレを逃しましたね。こうなると、鍵を握るのは、ダーレムの愛人レオニーですか。それとダーレムがどこまで闇組織と繋がってるかが大きな鍵でもあります。

なかなか死者が出ないので、展開が読めませ〜ん
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hitmanさんへ (象が転んだ)
2019-09-14 15:35:32
毎度、ヘボい自作小説に付き合って頂いて、感謝感謝です。

何だか中年女のサビオレに同情してしまって、お役御免にしました。サビオレと義父と闇組織の繫がりも考えましたが。

hitmanさんが言う様に、これからはレオニーとダーレムが主役になりそうですが。バランスも大切なんで、どう展開しようか迷ってます。ひょっとして”9-11”と結びつけたりして。
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山場があったようでなかったような? (びこ)
2019-09-14 15:55:17
転象さんのお得意とする濡れ場がなかったせいかしら?
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ビコさんへ (象が転んだ)
2019-09-14 17:25:45
3ヶ月以上も離れると、どうも勝手が悪いです。
濡れ場も度が過ぎると白けますから。何でも程々がいいんですが、次の記事では少し刺激的な雰囲気にしましょうか。でもないか。
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